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ep.16-3 助けに行くのか、行かないのか

「そのあと私はとんぼ返りでこの街に戻り、ラドはその男と戦ってるハズ。

 あいつは私を逃がすために派手にサンドラの町で暴れてくれた……

 それを横目に私は逃げてきたんだ」



ヨルは下を向く。

そのそばでアイルは目をつぶり、怒りを抑えきれない様子で呟く。



「戦士の野郎、そんなところで何してやがる。俺との約束は……」



アイルは右手に握りこぶしを作って、血管が浮き上がるほど握りしめていた。

それを横目にルヴィアがヨルに話しかける。



「戦士が捨てた紙ってこれのこと?」



以前アイルが大将に見せた紙をルヴィアがポケットから取り出して2枚渡す。

ヨルはその紙を受け取ると、縦に頷いてから紙を返す。



「あぁ、これに間違いない。ラドは顔が全部描かれていて、私は顔が下半分隠れていたから」

「そう……これは色々厄介かもしれないわね」

「ルヴィアさん、どういうこと?」



ルヴィアのコメントに大将が尋ねる。

ルヴィアは二枚の紙をペラペラと、揺らしながら話す。



「この二枚と同じものを戦士が持っていたってことが、かなり厄介なのよ」

「どういうことですか?別に、ルヴィアさんも持っているし、アイルもさっき見せてくれたし……」

「大将、勇者が昼に言ってたけど......これはまだ町中にばら撒いていないのよ」

「でも、別に勇者一行ならみんな持っていても普通じゃ?」



大将はルヴィアの話に首をかしげながら声をかける。

それに対して、アイルが大きく首を横に振って話す。



「昼も言ったが、俺は戦士と最近全く会ってない。会ってない奴にどうやって紙を渡すんだ?」

「……ということは、戦士にこの紙を渡した奴がいるってこと?」

「恐らく、それだけじゃないだろうな」



大将の質問にアイルは奥歯をギリギリとさせながら話す。



「この紙にはどんな理由で指名手配になるかなどは一切書かなかったんだ」

「つまり、戦士に俺たちが経験した内容を話した奴がいる……?」

「いや……それも可能性としては低いだろう。戦士は自分に関係しないことのために動く奴じゃない。

 特に大将やすずねちゃんが経験した内容に怒ってということはあり得ない。

 たぶん……いや、何でもない」



アイルは何かを話そうとして、首を横に振って話を終えた。

じっと静かに横で話を聞いていたルトは誰に向かってではなく、全体に話しかける。



「でだ……どうするんだ。俺たちは助けに行くのか?助けに行かないのか??」

「私は反対よ。助ける義理がない」

「だな、俺も反対だ。そもそもこいつを俺は信用していないし許していない」



ルトとルヴィアが反対の意見を素早くこたえた。

それを聞いたヨルは目をつぶり、黙って下を向く。


だがアイル、すずね、大将はそれに続かず悩んでいた。

少しの間、沈黙の時間が流れる。

すると、アイルが呟くように話す。



「俺は……こんな奴らを助けたいとは一ミリも思わない。

 だが、復讐と憎しみに身を焦がしている戦士を助けるために行きたい」



その言葉を聞いたすずねも口を開く。



「わたしは……たすけてあげたい。

 ほんとうにわるいひとだとおもえないし、さいごにわらえればそれでいいから」

「なるほど」



アイルとすずねの話を聞いたルトは頷きながら大将の方を見る。



「賛成が二人、反対が二人か……つまり、大将の意見で決まるってことだ。

 大将はどうしたいんだ?こいつらを助けるのか......それとも助けないのか」



大将はルトの言葉に目をつぶって考える。

少し経った後、大将はヨルの方に向かって口を開いた。



「ヨル……どうしても一つ答えて欲しいことがある」

「私に答えられることなら。この魂に誓って嘘、偽りなく答える」



ヨルは目を開いて顔を上げ、大将の目をじっと見て答える。

その目を大将もじっと見ながら口を開いた。

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