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ep.16-2 火傷の跡がついている男

ヨルは少し話し疲れたのか、大将から受け取ったお茶を一口含む。

他の5人は一つも情報を聞き逃さないようにするためか、全員真剣な表情でヨルの話を待っていた。


「今思えば、私たちみたいな部屋に尋ねてくるやつなんてまともな奴がいないのだから、

 不用心に部屋の扉を開けず、無視しておけば良かったと後悔している」


そう話すと、再び語り始めた。



◆◆◆


顔の鼻には口と並行方向に火傷の跡がついている男は戦士のような鎧を着こんでいた。

その男は背中に自身の背よりも大きな剣を携えていた。

そして何も言わずにずかずかと部屋の中に入った。



「お、おい!なに入ってやがる!!」



ラドは男に声をかける。

ただ、ラドの声が聞こえていないかのように無視し、おもむろにポケットから紙を2枚取り出す。



「……こいつらで間違いなさそうだな」



そう言うと持っていた紙を捨て、拳をヨルに突き出す。

その拳をヨルはさっと避け、距離を取って冷静な口調で尋ねる。



「おい、お前は誰だ?あと、どういう意図だ?」

「……今から死ぬ奴にそんなことを言って何になる」



そう言うと、再度ヨルに殴りかかる。

が、ヨルは同じくサッと避ける。



男は避けられたことが鬱陶しかったのか、ハァとため息をついて扉の方に歩きはじめる。

それを見たラドは声を出す。



「どうした?背負っている剣はお飾りか?」

「挑発のつもりか?こんな狭い部屋でこの剣が満足に振れるとでも?

まあいい。この部屋で死ぬ前の祈る時間をやろう」



そう言うと、男は部屋から出て行った。

ヨルとラドの顔から冷や汗なのかドッと汗が噴き出す。

そしてラドがヨルに話しかける。



「これはやばいな」

「あぁ……勝てる気が全くしない」

「おい、ヨル。提案があるんだがいいか?」

「一応聞いておこう。なんだ?」

「……」



ラドは言うのを少しためらった。

だた、口を開く。



「お前、逃げてくれ」

「……理由を聞こうじゃないか」



ヨルは冷静な口調でありつつも怒りのこもった声で話す。

ラドはそれを予期していたのか、はっきりと話す。



「俺たちではあいつには勝てないと思う」

「それはやってみないとわからないと思うが?」

「いや、俺のカンが言ってる。おそらく戦ったらどっちかが死ぬか、どっちも死ぬかだ」

「それは最悪なカンだな……で、私がお前を見捨てて逃げるとでも!?」



ヨルはさらに怒気のこもった声で話しかける。

ラドは首を横に振る。



「いいや……俺はお前を信じて待とうと思う」

「どういうことだ?」

「この紙を見てみろ」



ラドは男が捨てた紙を指さす。

一つの紙にはラドに似た顔が、

もう一つの紙にはヨルの下半分が仮面で隠れている顔が書かれていた。



「俺は顔がばれている……その上、すでにこんな紙があるってことは指名手配されている可能性も高い。

 だがお前はまだ完全にばれていない。だから助けを呼んできて欲しい」

「……誰に助けを求めるんだ?」

「それはお前の仕事だ」

「おいおいその仕事の難易度、高すぎないか?」



ヨルは顔をしかめて話す。

だが、ラドはその顔を見て笑った。



「十分低いだろ。俺なんて今からあいつと戦わないといけないんだぞ?」

「……死ぬなよ」

「大丈夫……こんな最悪を見越して色々準備したから」



ラドは腰に巻き付けた色々な玉のようなものを見せる。

ヨルは目を見開いた。



「準備ってこのことか」

「もちろん。この近くの森に隠れ家も作ってあるし、その周りはトラップまみれにしておいた。

 隠れ家の地図は、いま渡しておこう。」

「どれぐらい持ちそうだ?」



地図を渡したラドはヨルの目線からそらして呟くように答える。



「……よくて二週間だな。それまでに助けが見つからなかったら、そのまま逃げてくれ」

「わかった……絶対に死ぬなよ」

「そっちこそ。俺たちはここで絶対に死ぬわけにはいかない」

「あぁ。あの子たちのために」



ラドとヨルは手で拳を作ってお互いの拳をコツンとぶつけた。

そして扉からではなく、窓を開けて逃げるように出て行った。



◆◆◆

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