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ep.15-3 台座の修理に向けて

コロッケを食べたアイルとルヴィアの二人はご機嫌なまま店を出た。

そしてちょうど店も閉店時間になったようだ。



「「ありがとうございました」」



最後のお客を見送ったあと、大将とすずねは店の片づけを始める。

だが、この後に何かあるのかいつもと異なり二人は大急ぎで片づけをおこなっていた。

ちょうど店がきれいになったタイミングで引き戸がガラガラと音を立てて開く。


そこには少し濡れた人が立っていた。

大将は閉店時間後に来たにも関わらずにこやかに話しかける。



「いらっしゃい、ルトさん。待ってたよ」

「ガハハ!すまんな。こんな時間になっちまって」

「無理いってきてもらってるから……ってあれ、雨でも降って来たの?」

「あぁ、急に降ってきやがった。風も出てきて最悪な天気だ」

「とりあえずテーブル席にでも座って。温かいお茶を持ってくるから」

「頼んだ」



ルトは大将に言われた通り、テーブル席に座った。

すずねも何かを期待しているのか、少しわくわくしながらルトの座った席の斜め前に座る。

そこに大将は温かいお茶を三つ持って現れる。



「はい、どうぞ」

「ありがとう!助かる!!」

「ありがと!」



大将のお茶をルトとすずねが受け取り、一口飲んだ。

大将は自身のお茶をルトの対面におき、再度カウンター奥に戻る。

そして両手にギリギリおさまらないぐらいの石と、その石にあるくぼみの上に乗った青い玉を持って再び現れた。

それをルトの前にドン、とおいて自身も席に座ってからゆっくりと口を開く。



「ルトさん……今日来てもらったのは、これを直せないかの相談で」

「これは……台座か」

「そう。これは元々あの祠の中に合ったもので、この青い玉を乗せるための台座なんだ。ただ……」



大将は言い淀む。

ルトは慎重に青い玉ごと台座を持ち上げてぐるっと回りと見回す。



「なるほど……ヒビががっつり入っていて、すでに割れる寸前ってところか」

「そう。前回青い玉は断られたけど台座ならいけるかなぁと思って」

「ねぇると、どうにかならない?」



大将とすずねがルトに尋ねる。ルトは顔をしかめながら言葉を紡ぐ。



「こっちは不可能じゃないと思うが……結構厳しい」

「厳しいって言うのは、かなり高くて高価とか?」

「いや、そうじゃない。この石は恐らく人間と魔族のちょうど間にあるサンドラの町の近くにあるエルフの森にあるものだとおもうが……」

「ならそこに行けばいいんじゃ?」



大将はどうしてルトが険しい顔をしているのか理解できないように見える。

ルトは険しい顔をしつつ話を続ける。



「あそこの物は管轄しているのがエルフだから入ることすら難しい。

 昔に同じようなものが欲しくてお願いしに行ったことがあったが、変なことを言われた」

「へんなことってなに?」



すずねがルトに尋ね、それにルトが答える。



「『手に入れたい人物を連れてこい。適した者か我々が判断する』……と」

「ちなみに、昔行ったときはどうだったんだ?」

「依頼人を連れて行ったが……門前払いだった」

「……」



少し重苦しい空気が流れた。

するとすずねが口を開く。



「ならいこう!」

「そうだな。とりあえず行くか!!」

「おいおい、店はどうするんだ!?」



すずねと大将の発言にルトがストップをかける。

大将は首をかしげながらルトに答える。



「えっ……そんなにも遠いの?」

「魔界だから、最低でも往復で1~2週間ぐらいはかかるぞ!!」

「うーん......次から来るお客には順次連絡していこうかな」

「おいおい……せっかく再開したってのに......」

「仕方ないって。俺たちの店と同じぐらい祠は大切なものだったんだから」



大将はニコニコしながら発言しているものの、ルトは頭を抱えた。

そん時ルトの目線はふと青い玉に目が行き、じっと見て話す。



「大将……この青い玉、何かしたか?」

「ずっと神棚に飾ってたけど、それが?」

「前に見たときは傷がここにあったハズ……いや、何でもない。たぶん見間違いだろう」



ルトは台座ごと机の上に置いた。



その瞬間、急に店の引き戸がガラガラと開く音がした。

引き戸の方を見ると頭から黒いフードのようなものを被り、ずぶ濡れになっている人が立っていた。

それに気づいた大将がその人に声をかける。



「お客さんすみません。もう閉店時間を過ぎてまして……」

「……頼む!!助けてくれ!!!」

「いや、助けてくれって言われても......どうかしたんですか?」



大将の言葉に頭のフードを脱ぐ。






そこにいたのは、すずねを襲った女の猫又だった。

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