大将たちが小料理屋を営んでいる巨大都市『リアナ』。
その都市の中央地区にある、明らかに周りの建物より一回りも二回りも大きな建物の一室。
その部屋はかなり広い上に真っ赤な絨毯がひかれ、
煌びやかなシャンデリアが飾られていた。
高級そうな机が一つポツンと置かれており、
机の上には万年筆だけが置かれていた。
その机専用であろう黒の革張りの豪華な椅子に黒いスーツの男が深々と座っている。
手には緑色の魔方陣が浮かび上がっていて、それを耳に近づけて話している。
誰かと通話しているようだ。
「あぁ。あぁ……その通りだ」
『……』
「邪魔が入ったから、襲撃は中途半端になっちまった。すまねぇな」
『……!!!!』
すると、緑の魔方陣から金切り声のようなものが聞こえる。
かなりうるさいのか、男は魔方陣が展開されている手を遠ざけて聞かないようにする。
叫び声が小さくなったのを確認してから再度手を近づけて話し始める。
「仕方ねぇだろ、あれは流石に想定外だ。
まさか勇者一行の戦士が来るとは思わないだろ?」
『……』
「あぁ、そうだ……確かにあいつはこちら側の人間だと思ったんだがな……
まぁ、機嫌が悪かっただけだろう」
『……』
「その通りだ。あいつは間違いなく魔族を恨んでいる」
『……』
「おいおい、それだけは言わない約束だろ?誰かに聞かれたらどうする」
男はニヤリとして、椅子の背もたれに体重をかける。
「まぁ、任してくれ。まだまだ手はある……ただ、時間が欲しい」
『……!』
「あぁ?さっさとしろだと!?……手荒になるぞ」
『……』
「はぁ、わかった。なら……」
「あの小娘でも拉致るか」
「良い案だろ?」
『……?』
男はニヤリとして話しかける。
ただ、帰ってきた答えがあまり良くなかったのか、眉間にしわが入る。
「ふむ確かに、あの二人は流石に厄介だな。
この世界の英雄が一人でも店に居るだけで、我々ではどうにもならないな。
さてどうしたものか……」
男はふと日付の入ったカレンダーを確認する。
そして薄く笑みを浮かべた。
「おい、ちょっと待てよ……もう少しで終戦記念日じゃねぇか。その日なら……」
『……!!』
「……だろ?俺はやっぱり天才だな!」
男はげらげらと笑う。
電話口からも同じく笑い声が聞こえる。
「あいよ。なら決行日はその日で……お金はいつもの口座に入れとけよ」
『……』
「それじゃあ」
男はの手から魔方陣が消えた。
そして立ち上がり、窓の近くまで歩く。
「さて、決行日はすぐそこか……急がないとな」
男は再び手を耳の近くに近づける。
すると赤い魔方陣が展開された。
「俺だ。すまんが、お前たちに仕事がある、今すぐに部屋に来て欲しい」
そう言うと、男は手を下ろし赤い魔方陣は勝手に消えた。
数分後
部屋には黒のフード深くかぶった人影が2人現れた。