店から飛び出してきた人は泣きそうな顔で周りをキョロキョロと見回している。
そして祠の横に大将がいるのを見つけて、泣きながら走り始めた。
「た、たいしょう!!!!!!」
すずねはわんわん泣きながら大将の方に駆けだし......
そして大将を抱きしめた。
「わああぁぁ!たいしょう!!!
さっきまでたいしょうが、めをさまさなくて。
とっても、しんぱいで.......」
涙を拭くこともせず、泣き続けながら叫ぶ。
支離滅裂ではあるものの、溜まった思いを大将に伝えているようだ。
「わたしをかばってくれたのに。
わたしはまたなにもできなくて。
ありがとうもごめんなさいもいえなくて……
いまめがさめたら、たいしょうがいなかったから」
「……ごめんよ。心配かけちゃったかな」
「うわああぁぁん!!!」
2本の尻尾はいつもみたいに揺れておらず、
頭の耳もペタンとしたまま泣き続けていた。
そんなすずねを大将は黙って抱きしめ、
すずねが落ち着くまで、ゆっくりと頭を撫で続けていた。
少し時間が経ったのち、落ち着いたすずねと大将は一緒に店に戻った。
大将は一人で大丈夫。と言ったものの、すずねが頑なに嫌だと駄々をこねたため、
久々に一緒の布団で寝ることになった。
「すずねちゃん、狭くない?」
「うん。だいじょうぶ」
「そうか.......初めてこの店に来た日以来だね」
「.......うん」
すずねは大将と寝るのが嬉しいのか、尻尾を布団の中でぶんぶんしながら答える。
一つの布団で二人寝るのは少し狭そうに見えるが、二人とも笑顔だ。
「ごめんね、心配かけちゃって」
「いいよ。わたしも......たすけてくれてありがとう」
「今回は助けたわけでもないけどね。戦士さんが助けてくれただけだから」
「ちがうよ」
大将の言葉に、すずねは首を大きく横に振りながら答える。
「たいしょうは、ひっしにわたしをまもってくれたよ」
「……何もできなかったけどね」
「そんなことない!!」
これまでに聞いたことが無いほどの強い否定だった。
その言葉に大将は少し驚く。
すずねは、自分が強く言った事にも驚いて、少ししゅんとしながらも言葉を紡ぐ。
「ほんとうに……うれしかったの」
「……」
大将はすずねの話に言葉が詰まる。
何かを考えたのち、呟くように答える。
「すずねちゃんは......いや、気にしないで」
「たいしょう、いまなにかいった?」
「何も言ってない!」
なぜか顔を真っ赤にした大将はすずねとは反対方向に体を向けて
震える声で言った。
「お、おやすみ!」
「?……おやすみなさい!」
大将とは対象的に一緒に寝れるのが嬉しいのか、
ニコニコしながらすずねは大将に言葉を返した。
そして二人は目を閉じた。