親方のトウカが衛兵の方に近づいて話しかける。
「何って……図面を引いてるだけだが?」
「お前に話しかけてない。おい、そこの料理を作っている奴!!」
「……はぁ」
大きなため息とつき、火をかけているものをすべて一旦切る。
そして衛兵の前まで大将が歩いていく。
「俺に言ってるのかい?」
「そうだ。こいつらはなんだ?」
すずねとルトを指さす。
「俺の大切な人と友達だが?」
「魔族が……なんだって?よく聞こえなかったのだが」
カツカツ……
衛兵の後ろから黒いスーツを来た男がゆっくりと歩きつつ、大将に話した。
ルトの顔が少し引きつり、呟く。
「まずい、ヴィゼルだ……」
それに気づいていないのか、大将はヴィゼルと呼ばれた男に近づきながら話しかけようとする。
「耳が悪いのか?俺の……」
ヴィゼルは大将の話を聞かずに黙って右手をあげてフルフルと振った。
ダン!!!!
急に衛兵3人が動き、大将は押さえつけられ床に這いつくばる。
押さえつけられた時、床に頭をぶつけたのか少し頭から血がにじみ出ている。
その様子をヴィゼルは哀れな人を見る目で大将を見ながら話す。
「誰が話して良いと言った、おい?」
大将の頭を黒い靴でぐりぐりと踏みつけながら話す。
衛兵に抑え込まれている大将は話すことも動くこともできない。
それを見たトウカが止めに行く。
「お、おい。やめろよ!何もやっていないだろ」
ヴィゼルはトウカの声を無視して、靴で踏みつけるのをやめない。
「おまえ、どうして店で魔族を雇っているんだ。魔族対処法に違反しているぞ?」
「そんな法律聞いたことないぞ!」
ルトもヴィゼルに怒鳴るが、それも無視する。
「さて、この店をどうするか。
鉄球とかでぶち壊してもいいし……面倒だから燃やすか」
ヴィゼルはニタッと笑う。
するとすずねが踏みつけている足に向かって飛びついた。
「やめて!かわいそう!!」
そして大きな口を開けてその足にかみついた。
痛かったのか、ヴィゼルは噛まれた方の足を思いっきり振りほどき、すずねを蹴飛ばす。
「きゃあ!!!!」
蹴飛ばされたすずねは、机にたたきつけられる。
痛みで顔を歪ませたヴィゼルが怒鳴る。
「いってぇ、このクソ魔族!今すぐ死刑にしてやる!!おい衛兵!!!」
「「「ハッ!!!」」」
大将を押さえつけていた衛兵は立ち上がり、すずねの方に向かおうとする。
「ひっ……」
「お、おい、やめろ!!!」
すずねは小さな声で助けを呼び、大将は口の中も切っているのか、
血を吐きながら叫ぶ。
カラン
ふいに店の扉が開いた。
そこには、自分の体長より大きな剣を持つ男が立っていた。