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ep.3-2 勇者アイルと魔王ルヴィア

「大将、店まだやってる?なんか色々あったって聞いたから来ちゃった」



男は大将の方を見ると、かなりラフな言葉でお願いをする。

大将は男とその横にいる角の生えた女性を見た瞬間、笑顔で答える。



「あぁ、勇者アイルと魔王ルヴィアさんですが。いいですよ。好きな席に入ってください」

「あざ~す!」



アイルとルヴィアと呼ばれた二人は店に入ると、

そのまま誰もいないカウンター席に横並びに座る。

二人は勇者と魔王という威厳は全くなく、服装もおとなしい。

とはいえ、魔王は胸元がはだけているが。


何も言われなければ、ただの人間と魔族という感じに見える。

実際、店の中にいる客は二人をジロジロと見てはいなかった。



大将は二人に水とおしぼりを渡しつつ、申し訳なさそうに二人に話しかける。



「すみません。ほとんど料理が残っておらず……

 肉じゃがで良ければお出ししますが、いかがですか?」

「もちろん、それでいいわよ。ありがと」



ルヴィアはニコッとして返事を返す。

それを聞いた大将は料理を出すための準備を始める。

準備中の大将にアイルとルヴィアは話しかける。



「大将、店の方は大丈夫だったか?」

「えぇ。ちょっとしたボヤだったから」

「ホント、勇者からその話を聞いた時はびっくりして……

 今日の仕事を全部、側近ちゃんに投げてきたわ」

「俺だって戦士と魔法使いに仕事投げてきたもんね」



アイルとルヴィアは胸を張って話す。

料理を作っている大将はこめかみに指をあてながら、二人に話す。



「この後、二人とも怒られないですか?」

「私のところは大丈夫そうだったわよ。

 側近ちゃんも話を聞いてて結構心配してて。

 この店が大好きだから、是非行ってきて欲しいって」

「俺のところもいつも通り。

 戦士は顔がやばいことになっていたし、

 魔法使いなんて攻撃魔法を撃って来たから、さっさと逃げてきた!」

「……まぁいいです。今度お店に来られた時に俺から何か一品出しておきます」



大将は大きくため息をつきつつ、肉じゃがに火を通す。

それをアイルはニコニコした顔で見つつ、大将に話しかける。



「それにしても、どうしてこの店にボヤなんだろなぁ。

 この店のおかげでようやく人間と魔族が仲良くなってるのに」

「まぁルトさん曰く、衛兵さんが色々調査しているらしいので」



大将は苦笑いしつつ、答える。

その言葉に何かを察したのか、勇者は誰に話すわけでもなく呟く。



「ホント。誰なんだろうなぁ。人間と魔族が仲良くするのが気に食わないからって

 人の店に火をつける愚か者なんているわけないんだけどなぁ」

「えっ、勇者は知ってるの!?私で良ければ始末しに行くから教えて!!」



ルヴィアは初耳なのか、アイルを詰める。

アイルは口笛を吹きながら答える。



「さてねぇ……俺も詳しくは知らないが、この町の店らしいってよ。

10年も前に俺と魔王で戦争を終えたってのに……」

「そうね。ここ数年とこの店のおかげで、だいぶ仲が良くなったと思っていたのだけれど」

「まぁ、きっちり落とし前はつけて貰わないと……な」

「アイル、お願いだからおおごとにしないでね」



アイルの目が笑っていないことに気づいた大将が止めに入る。

それに対してアイルは満面の笑みで答える。



「まぁ、俺が勝手にすることだから。抹殺しに行こうとした魔王よりは優しいはずだから」

「何よ!私だって別に抹殺はしないわよ……

 ただ、二度と同じことさせないように痛い目にあってもらうだけだから」

「ハハハ……」



アイルとルヴィアの目が全く笑っていないことに気づいた大将はから笑いが出る。

すると、急にアイルが真面目な顔になって大将に話しかける。



「大将。少し真面目な話聞いていいか?」

「……別にいいけど、なんだ?」



急なトーンの変化に、大将も身構える。

アイルは一息ついて、大将の耳元まで行き小声で尋ねる。



「……大将ってロリコンだったの?」



勇者は机を拭いているすずねを指さす。

大将は大きくため息をついて、アイルの耳元まで行って小声で話す。



「次に同じこと言ったら……この店一生出禁な......」

「……すみませんでした」



アイルは顔を青くしながら謝る。

ルヴィアはクスクスと笑いながら、大将に尋ねる。



「ふふふ……で、大将、あの子は?」

「まぁ、色々あってな」



ルトに話した内容と同じことを話す。



「……なるほどねぇ。親もわからず、家もわからずか」

「ルヴィアさん、魔王ですし、この子の親って調べれないですか?

 親御さんも心配していると思いますし」

「うーん......それは少し難しいかも」



さっきまで笑顔だったルヴィアは、少し真面目な顔をして答えた。

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