太陽がまだ出て来てないぐらいの頃。
大将は布団の上でふと目が覚めた。
目をこすりつつ、まだ眠たいのか大きな欠伸をする。
よく見ると、少し目の下にクマが出来ている。
そして、ふと横を見た。
すずねが無造作にすやすやと同じ布団の中で寝ていた。
「まさか、寂しいからって私の布団に入ろうとするとは。
昨日の夜は色々大変だった……
明日からはちゃんと自分の部屋で寝るように言わないと」
そう呟くと、すずねを起こさないように布団からでた。
ご飯とお味噌汁を器に盛り、魚を焼く。
いつもの日課なのか、テキパキと作っている。
そして、すべての準備ができてから、すずねを起こしに行った。
「すずねちゃん。朝だよ」
「……むにゃむにゃ」
すずねはまだ眠たいのか、目をこすりながら起きる。
そして大将を見て満面の笑顔になってから一言。
「たいしょう。おはよう」
「あぁ、おはよう」
大将もすずねの笑顔を見て笑顔で答えた。
二人は用意していたご飯の前に座る。
「いただきます」
「いただき……ます」
大将が手を合わせて言っているのを見て、すずねも真似をする。
二人はご飯を食べ始めた。
大将はすずねが食べやすいよう、魚の身をほぐしつつゆっくり食べる。
すずねは、大将が用意したであろうスプーンを握ってご飯を必死に食べている。
「あちっ!.......うぅ」
すずねはお味噌汁を飲もうとして勢いよく飲んだためか、
小さな悲鳴を上げる。
その様子を苦笑いしながら大将は氷の入った水を渡す。
「はい、水。ご飯は逃げないんだから、ゆっくりたべな」
「うん」
すずねは水を受け取り飲んで舌を冷やしているようだ。
そのまま二人はわいわいしながらご飯を食べきり、手を合わせる。
「「ごちそうさまでした」」
今度は大将とすずねの声がそろう。
大将は少し驚きつつもすずねを見ると、
すずねは『すごいでしょ!』と言わんばかりの笑顔で大将を見返していた。
大将も笑顔ですずねに返す。
そして大将は食器を片づけ、すずねに話す。
「すずねちゃん。いつもの日課をしに行くけど、来る?」
「にっか?」
すずねは首をかしげる。
「俺は、いつもこの店の横にある祠に手を合わせにいっているんだ。
祠は壊れちゃったけど、少しでも片づけたくて」
「うん。いく」
「そうか。じゃあいこう」
そう言うと、二人で店を出た。
大将とすずねは店を出てすぐ近くの祠の前につく。
昨日から手付かずなのか、いたるところに木の破片が飛び散ってる上、
祠自体も完全にぺしゃんこになっていた。
「やっぱり酷いありさまだな……」
大将は呟く。
すずねもよく見ると、寂しそうな顔をしてつぶやく。
「どうしてこわれてるの?」
「わからないんだ。でも、頑張ってなおすから」
大将はすずねにそう言うと祠の周りに飛び散った、
祠の一部であっただろう木などを集める。
それを見たすずねも自然と同じように片づけをしていた。
祠はボロボロではあるものの、祠の前だけだが少し綺麗になった。
大将は綺麗にした場所にしゃがむ。
すずねも慌てて近くでしゃがんだ。
そして大将は目を閉じて手を合わせる。
「いつもありがとうございます。
今日も良い一日でありますように」
すずねは意味が分かっていない様子だが、
大将と同じく目を閉じて手を合わせた。
暖かな風が大将とすずねの頬をなでる。
大将は目を開き、立ち上がる。
それに気づいたすずねも同じく立ち上がる。
「さて、行きますか」
「うん!」
大将とすずねはすぐ横の店に帰る。
ちょうどお昼前になっていた。
二人は夜の開店に備えて準備を始める。
大将は色々な仕込みを始め、すずねは大将の指示に従って、床の掃除を始めた。
すると、開き戸がガラガラと音がした。