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壊れた祠を戻すとき、妖狐の尾は幾重にも
壊れた祠を戻すとき、妖狐の尾は幾重にも
美堂 蓮
異世界ファンタジースローライフ
2025年02月01日
公開日
12.5万字
連載中
最近人気店になりつつある小料理屋『ゆうなぎ』
その店の異世界転移で来た大将は料理屋の横にある祠を大切にしていた。
とある日、ライバル屋に祠を壊されてしまう。

大将は祠を直すため、一時的に祠の中にあった青い玉を店に持ち帰った。
すると、一本のもふもふのしっぽを持った見知らぬ『すずね』と名乗る妖狐が店の中で倒れていた。

大将とすずねは共に暮らすことなるが、なぜかすずねの尻尾が少しずつ増えていくことに気づく。

人間と魔族の仲が良いこの世界において、
ライバル店や他の邪魔する者たちと戦いながらも、
祠の謎や過去を少しずつ解き明かしつつ、
大将と妖狐のすずねを中心に祠を直していく物語。

※他サイトでも発表しております。
他サイト名前:祠が壊されて小料理屋に帰ると見知らぬ『もふもふ』妖狐が!?~一緒に住んで壊れた祠を直していたら、なぜか妖狐の尻尾が増えていきました~

ep.1-1 小料理屋ゆうなぎの日常

「いつもありがとうございます。

今日も良い一日でありますように」



白の割烹着を来た男が祠の前で目を閉じ、手を合わせている。

太陽が照り付けつつも、肌寒い風が男の頬をなでる。


祠はほとんどが木でできており、扉は開かれていた。

かなり古いのか木があちこち腐っていて、ちょっとしたことで壊れそうに見える。

祠の中は石で作られたであろう小さな台座があり、

若干くすんでいる青い玉がちょこんとおかれていた。

お供えをする場所もあり油揚げ2枚、お供えされていた。



手を合わせていた男は静かに目を開けて立ち上がる。



「さて、今日も一日頑張りますか!!」



そう呟くと、その祠のすぐ横に建っている、

屋根に瓦がついているような和風、二階建ての建物の中に入っていた。




◆◆◆


ここは、巨大都市『リアナ』

町の中は数多くの人間や魔族が商いをしている。

人間も魔族もお互いにいるのが当たり前なのか、

お互いに変な目で見たりはしていない。



男はその都市で最近人気の小料理屋店『ゆうなぎ』に入った。

ただ、店の前には【準備中・夜のみ開店】の札がかけられている。

ゆうなぎの中はいたって普通の小料理屋のように見える。

大将が目の前で料理をするカウンター席。

4人が話しながら食べれるテーブル席。

店の中には、30人ぐらいしか入れないように見える。



店に帰った男は、慣れた様子で手を入念に洗いながら、呟く。



「うーん……今日は油揚げが多めにあるから、サービスメニューはいなり寿司にしよう」



男は鍋を手に取り水を計量していれ、その中に昆布など色々なものを放り込む。

油揚げに味を付けるための出汁を作っているようだ。

そして火をつけ、他の料理の準備を始めた。


すると、引き戸がガラガラと言いながら開く。

男は料理で忙しいのか、開いた扉を見ずに話しかける。



「すみませんお客さん、まだ店はやっていなくて……」

「客じゃない」



ぶっきらぼうに返事が返って来た。

大将と呼ばれた男は料理の手を止め、話しかけてきた方を向く。

すると、一人の男が立っていた。

大将とは異なり、紺の割烹着に似た服を着ている。

それを見た大将は、何か思うことがあるのか大きくため息をつく。

そして料理の手を止めて話しかける。



「……小料理屋『あさぎり』店長のオルクさん。今日はどうかしましたか?」

「どうもこうもない」



オルクと呼ばれた男はずかずかと店の中に入り、

大将の目の前に立ち、指をさして怒鳴る。



「前に忠告したはずだ。

 どうしてお前のところは魔族にも料理を提供するんだ?

 俺は前にやめろと言ったはずだが?」



オルクの言葉に大将は首を振って答える。



「……前もお話しましたが、私の店では人間も魔族も同じ扱いです。

 別に昔のように戦争していたわけでもありませんから。

 あと、うちの店にご飯を食べに来てくれる魔族の方は

 とっても良い人ばかりですから」

「魔族が良い人?何を馬鹿なことを言っている。

 あいつらは平気で裏切るし、人間を常に見下してやがる」

「そんなことはありません。それはあなたの偏見です」



大将はオルクに向かって諭すように、それでいてはっきりと答える。

その反論に少したじろぎつつもオルクは顔を真っ赤にしてさらに怒鳴る。



「だまれ!まぁいい。まだこっちの店の方が繁盛しているし、

 魔族なんて入れているお前の店はさっさと潰れてしまえばいいさ」

「……はぁ」



大将は大きくため息をつく。

その様子に満足したのか、男は店から出て行くために扉の方にむかう。



「このまま魔族に飯を出してみろ、ただでは済まないからな」

「……ご勝手にどうぞ」



オルクの言葉に大将は呆れたのか、適当に答える。

そしてオルクは背を向けて店から出ていった。

大将はもう一度大きくため息をついたが、顔を横に振って料理を再開した。


肉じゃが、コロッケなど様々な料理の下準備がそろう。

いなり寿司は完成したものがそろっていた。

大将は時計を見ると、針は2時を指していた。



「まだこんな時間か。今日は準備も早くできたし、休憩するか」



そう言うと、来ていた割烹着を外して、店の二階に向かう。

昼の言い合いに疲れたのか、布団の上に横になった。

すると、数分後寝息が聞こえてくる。


その後、少し時間が経った頃......





メキメキ......ガシャン!!!





外から何かが壊れ、崩れる大きな音が聞こえた。

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