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第15話

 北海城内への隠し通路発見と松永の伏兵隊撃退の報は、爆死した紀霊に代わり派遣された雷薄によって信忠軍にも伝えられた。


 爆心地の整備も完全ではないが終わっており、敵襲らしい出来事があったため、物見の報告待ちでゆるりと進軍していたところであった。


「趙雲殿、侵入隊の牽制も兼ねて、ここは一気に行くべきではなかろうか?」


 信忠を中央に、左に趙雲、右に雷薄と並び、軍議をしていた。


「そうですね。伏兵の心配もなさそうですし、この進軍速度では突入した部隊が全滅の恐れもあります。雷薄殿はどう思われますか?」


「行くべきでしょうな。紀霊殿の仇もとらねば」


 三人とも同意見であった。


「先に行ってよろしいか?」


趙雲が先鋒を望む。


「うむ、趙雲殿頼み申す。雷薄殿、陳蘭殿も北海近辺にいるのですな?」


「はっ。他の隠し通路がないか探索しているはず」


「他の隠し通路があっても危うい。あの久秀のこと、すでに対策されていることであろう。陳蘭殿を探し、貴軍に加え、城攻めにあたってもらえぬか?」


 信忠は趙雲、信忠軍に雷薄、陳蘭軍を加え北海城を攻める提案をした。


「良い案かと」


「では儂は陳蘭と合流し、北海城へ向かいましょう」


 両者とも信忠の案に同意した。


「では趙雲殿、騎兵を率いて北海城南門を。雷薄殿は陳蘭殿を加えて趙雲殿に合流。全隊合流後、南門から東門か西門へ転戦する」


 信忠は両将に指示を与えたあと、兵を一人呼び伝言を頼んだ。


「本隊に伝令だ。信忠はこれより北海城攻めへ向かう。本隊到着を見計らい主戦場を南門から東西どちらの門へとずらす、と」


 その指令を合図に趙雲、雷薄、早馬と一斉に動き出した。



 一方信長本隊には別の使者が到着していた。


「利政殿より伝言、曹操麾下臧覇殿とともに河を上り臨湽りんしを急襲する。また徐州にも曹操軍援兵派遣済み、とのことです」


「臨湽か。北海の西側であるな。承知した。北海勢が袁紹本隊に合流するならば逃路にあたるな」


 信長は広げてある地図を辿り、独り言とも思えるように話した。


「よし。利政に伝えよ。臨湽城東門を開け包囲し、北海城方面へ逃がせと。ここ北海で松永らを一網打尽にしてくれよう」


 道三の使者が伝言を携えて去ると、間を置かず信忠の早馬が到着した。


「軍路整備完了しました。これより信忠軍は急ぎ北海城南門に進軍。信長様本隊が接近し次第、東か西の門の攻撃に切り替えるとのこと」


「ならば東門を攻めよ。臨湽の敵軍を北海へ追い込む。それから城攻めを急がせよ。弥助らの援護をせねば」


「はっ。援護に関しては趙雲殿が一隊を率い、急行しております」


 信長は満足げに頷きながら報告を聞き終えると、別の早馬の兵に指示を与えた。


「彭の半兵衛に伝えよ。これより北海城を包囲、攻撃する。即刻兵をまとめ急ぎ参陣せよと」


 本隊進軍の報は兵卒に至るまで素早く伝わり、陣内では皆がが慌ただしく行動を開始していた。





 北海城内。


 思わぬ信長軍の援軍に久通隊は挟撃され押され始めていた。ただでさえそれほど広くない城内の一画に、敵味方入り乱れての大乱戦である。


 兵数に勝る松永勢は混戦から同士討ちする者も出て、収拾がつかない。だが、逆にそのせいで弥助らは未だに脱出できずにいた。


 切り倒しても、なぎ倒しても、その屍を踏みつけて襲ってくる。そうこうしてる間に弥助ら救助隊も疲労から動きが鈍り、一人また一人と倒れていった。

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