「では殿自ら後発すると?」
「うむ。なるべく早くにな。先遣隊は袁紹への偽装も兼ねてあるゆえの人選よ」
「なるほど。袁紹ににらみをきかせつつ、まだ臣民を掌握できていない劉備を速攻撃破するのですな」
程昱は納得し下がった。荀彧、荀攸も異論あるでもなく頷いていた。
「荊州の劉表はどうなさるか?」
続いて
賈詡は
その知謀は切れ味鋭く、過去に曹操も罠にかかり、
「劉表、奴も袁紹と変わらん……いや、よりひどいな。ともかく袁紹ほど気にする存在ではあるまい、捨て置け」
曹操はばっさりと切り捨てた。
賈詡も同調したのか冷たい笑みを浮かべた。
「劉備討伐先発隊は劉岱、王忠に信長殿。後発隊は楽進、張遼。他は荀彧の指揮により許都で待機とす。以上」
やや場が静まった時を見計らって曹操が最終的な指示をした。
(これが曹操軍の軍議か。活気があり、理解しやすい)
信長は黙って聞いていただけだが、それだけでも充分理解できるやりとりであった。
「信長殿、ご存知かはわからぬが劉備には一騎当千の
「劉備、関羽、張飛、望むところよ……といいたいところだが貴殿の戦ゆえ、しゃしゃらぬことと致そう」
信長は曹操の言葉に苦笑して返答した。
「では、信長殿。御武運を祈る」
信長は半兵衛たちと合流し城門を出た。そしてすぐさま配下の武将を呼び寄せた。
「曹操との軍議により、これより徐州の劉備討伐軍に同行することにした」
諸将は真剣な顔で聞き、次の言葉を待った。
「蘭。一足先に徐州へ向かい、情報を集めよ。貞勝は女衆と共に汝南へ入り執務及び情報収集を任ずる。汝南統治にはどのような手段が必要か探って参れ」
任を受けた両名が動く。信長はかまわず話を進めた。
「先陣は可成五百、後陣は信忠五百。本隊は儂が率いる。準備が整い次第出立する」
指示を受けた諸将が慌ただしく動き始める。
「濃、そなたは如何致す?出来れば汝南へ行って欲しいのだが」
「殿について参ります。何やら胸騒ぎがするのです」
胸騒ぎとは出陣前と言うのに、と思いつつも、濃姫の顔には不安など一切なく晴れやかな笑顔であった。