乾いた大地の匂いが鼻をくすぐる。鳥達のさえずりが耳に優しい。温かな陽の光が目に眩しい。
「ん……ここは……?」
「信長様!」
「その声は……
信長が目を開く。眩しさにしばらくはっきりとは見えなかったが、その優しげな声は姿を見ずともわかった。
濃姫の声と香の匂いに安心するも、すぐさま信長は疑問を感じた。
(待てよ。儂は……本能寺で……)
「いかにも。あなたは本能寺で光秀に襲われ死んだようですね」
涼やかな声が聞こえた。はるか昔に聞き覚えのある声。
「お主は……まさか?なぜ生きておる?」
「あなたが死んだということです」
「しかし、儂はこうして生きている」
「はい。私もこうして生きています」
まるで禅問答、あまりに理解できず信長は首を捻るばかりである。
「あなたは何を望まれましたか?」
しばしの沈黙のあと涼やかな声が問いかけた。
「大陸と日ノ本の統一……」
「なるほど。あなたらしい」
あくまでも冷静に涼やかな声が話す。
「私は……大軍師との邂逅を願いました。」
「大軍師……お主が言うのであれば
「如何にも」
信長は理解した。いやそう思わざるを得なかったのだ。
「では……儂は死んだが、古代の大陸で生きているということか?」
「ふふ、さすがは信長殿」
「不思議なこともあるものよのう?
「ええ。まことに」
竹中半兵衛と呼ばれる男。信長が生きた時代に屈指の軍師として名を馳せた男だ。
信長は起き上がり半兵衛を見た。
すらりとした細身の長身で、切れ長の目と白粉を塗ったかのような白い顔。まさしくあの頃の竹中半兵衛であった。
信長は帰蝶を振り向く。
「濃……そなたも本能寺で?」
「はい。私だけではなく、信忠殿も貞勝殿も蘭丸殿も弥助も……」
「ということは……皆、居るのか?」
半兵衛が代わって答えた。
「皆おります。他に
信長はしばし思案した。
「ふむ、しかし突如軍勢が現れたとあってはこの辺りを支配する者は不審視するであろう?」
「はい。そう思い、皆に指示を出せさていただきました。陣を組み、蘭丸殿と貞勝殿に周囲の状況を偵察してもらっております」
「さすがは半兵衛よ」
信長は感心し、さらに半兵衛に話し続けた。
「のう半兵衛、儂は一度死に再び生を得た。神か魔王か知らぬが大陸で暴れよとの啓示と思う。そしてそれは主も同じ。どうだ?お主の主であった