バッテリー残量が少なくなっています。
バッテリー残量はあと20%です。
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「坂田さんは今日なにしてたの?」
そうやって私が投げかけると、彼はいつもどおりのしわがれた声で、微笑んで云った。
「勉強だよ勉強。試験近いし、来年受験だよ?」
「だよね~。でも今度、どこかに遊びに行かない?」
「え~勉強がな~」
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バッテリー残量が少なくなっています。
バッテリー残量はあと15%です。
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「れいじ、あんたどうするの」
そうやって私は、息子に聞きました。息子は照明がついていない自室のベッドから顔だけだし、しおれた顔で云います。
「面接は明日だから、それまで寝かせてよ」
「寝かせてって。あんた、そんなんだとバイトでくたびれちゃうよ?」
「仕方ないだろ、しんどいんだから」
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バッテリー残量が少なくなっています。
バッテリー残量はあと10%です。
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「よー坂田、お前さいきんどうよ」
そういう感じで、俺は三年ぶりのあいつの肩を組んだ。れいじは元気がなさそうで、うつろな顔をしていた。
「最近? 悪くないよ。この前ね、バイトをクビになっちゃったんだけど、辞めたから」
「え。辞めたから悪くない? お前、大丈夫かよ」
「うん、大丈夫大丈夫。元気だから」
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バッテリー残量が少なくなっています。
バッテリー残量はあと5%です。
低電力モード。
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蝉の音がする。人体が引き裂かれそうだ。どれだけ明るい発光を眼球にあてても、暗闇にいるような不安感が脳を犯している。服を着替えていない。髪の毛を切っていない。スマホから目を離せない。誰とも連絡を取っていない。太陽が眩しい。眩しいのに、一向に自分は照らされない。前はもっと違ったはずなのに。今はもうずっとこんなありさまだ。誰とも話したくない。食事も面倒だ(お腹を壊す)。たまに胸の当たりがずきんと痛む。何かの病気だったりするのだろうか。分からないが。きっと健康体だ。言い訳は許されない。酷い気分だ。気を紛らわせることもできるが、現実は紛れない。あるのは槍をもった自分の投影。そいつは、たびたび自分を刺してわらっている。あの日から、自分の胸に穴があいたような感覚が、あった。何もしたくない。誰にも会いたくない。誰にも話したくない。誰も自分を知らない方が、ずっとよかった。視線が怖い。顔が怖い。仕草が怖い。でも彼らは悪くない。悪いのは、自分だ。自分がこうも出不精になったから。自分が失敗して諦めたから。自分が欠点ばかりの人間だから。自分がどうしようもない臆病者だから。何も持ってない。持ってるフリをしてた。持ってるように見せかけてた。誰かに認められたかった。誰かと仲良くしたかった。楽しみたかった。愛したかった。行きたかった。歩きたい。でも、歩けない。異臭がする。自分の不衛生な身体から発せられる、嫌悪感が芽生え激情がともる嫌なにおいだ。これは自分である。これが自分である。憩いの場はない。自分は許されちゃいけない。頭が痛い。体がだるい。ずっとずっと考えてる。思考がとまらない。誰かの声がする。誰かの言葉が聞こえる。自分のことを仕方ないような目でみているだれかの声がきこえる。でも彼らは悪くない。ずっと悪いのはいzブンダ。蝉の音がする。人体が引き裂かれてる。どれだけ明るい発光を目に突っ込んでも、暗闇にいるような鬱が全身を覆っている。服の種類がない。髪の毛が伸びて来た。スマホをずっと触ってしまう。友達がいない。太陽がいない。前はもっと違ったはずだ。誰とも話したくない。自分の話をするのがこわい。ありのままのじぶんは、害悪だと。知った。
*
「坂田さんは今日なにしてたの?」
「勉強だよ勉強。試験近いし、来年受験だよ?」
「だよね~。でも今度、どこかに遊びに行かない?」
「え、ほんと? 行くよ。どこに行くの」
「花火大会とかさ……二人っきりで」
「え? 僕と?」
「うん…………」
「…………」
「…………」
「その」
「…………」
「すき、です」
頭を叩く頭を叩く頭を叩く頭を叩く頭を多々羽頭を叩く頭をたあtく。
頭を叩く。
かおがうごかない。わらわなきゃいけないのに、かおがうごかない。 どうして生きてるんだろう。どうして生まれたんだろう。なんでだ ろう。わからない。こんな、こんなにんげんがあんで いるんだろう。
あっ…………。
lala
でんちきれた