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第四章 人を思いやる心ってさ。大切じゃない?①

 エミリアとの一件があって数日が経った。


 よくこういう表現見るけど、本当に便利だよね。だって、俺らからしたらその省略された日が存在するわけだけど、特別面白くないからって理由で数日を一文でカットできるんだよ。これってすごくない? まあ、された側からすればですよねーって気持ち半分、なんでカットしやがったって怒り四分の一。すげーまるでテレビとかの収録みたい感が残り四分の一ってとこかな。個人差があるだろうけど。


 さて、とりあえず数日が経ってしまったのは紛れもない事実な訳で。

 その間何があったのかーって言うと先ほども言った通り、大してこれといったことはなかった。

 しいて挙げるならエミリアがいつの間にかクラスの中心的人物になっていたってこととか、肇が買ったばかりのゲームを姉貴に壊されたぐらいだろうか。それに、何故かあれ以来エミリアが俺たちに関わってくることもない。そう言う意味では平和すぎるぐらい平和だと言っていいだろう。


 タレイアはいつも通りめんどくさいし、俺はいつも通りの日常をだらだらと過ごしていた。すごい、全然主人公っぽくない。これなら主人公がクビになるのも時間の問題ではないだろうか。


 あぁ、そうだ。でも、一つだけ。どうしても目をそらせない話題がある。

 最近日を追うごとに和泉の元気がなくなっている。

 元気がないなんて人間だから誰にでもあり得ることだし、逆に常に元気いっぱい! みたいな人の方が俺は心配になる。エミリアだって普段元気いっぱいといった様子だが、っつーかそんな姿しか見てないが、俺たちの見てないところではどうか分からないわけで。

 だから、それは彼女がヒロインだからとかではなく、ただ、一人の幼馴染みとして心配なだけだ。


「とか言ってからに~」

「人の心を勝手に読んでんじゃねえよ」


 がちゃがちゃと食器を洗いながらはあとため息を吐き出す。和泉は一緒に食事をした後、気分が優れないからと先に帰ってしまった。作ってくれたのは和泉だから、後片付けは俺が。そんな毎日を過ごすようになってもう何日だろうか。そろそろ優雅に煙草吸いながら、テレビを見てげらげらと笑っているこの駄女神に、皿を洗うということを叩き込むべきなのかもしれん。


「そう言えばエミリアの件、本当にお前は関係してねえのかよ」

「エミリア? あぁ、例のイタリア娘だっけか? だから知らねえって。あたしが選んだ主人公はてめえだけって何回も説明してるだろうがよぉ」

「お前が忘れてるだけでとかって可能性は?」

「だからそれもねえつってんだろうがよぉ。いいか? あたしはなあ、同じことを何回も説明すんのが大嫌いなんだよ。覚えとけ」

「へーへー」


 こいつ嫌いなもんありすぎだろ。それにしても、やっぱりこいつが関係ないとなると、偶然ってことか。それか、世界が都合のいいように変わったか。どちらも可能性としては十分あり得る。

 ただ、タレイアはエミリアのことを知らないと言っているし、彼女は俺に関係する人物ではないと考えるのが、とりあえずの結論で問題ないだろう。ということは、良い言い方(俺目線)をすれば無関係。悪言い方をすればモブ。あんなに強烈なモブはヤだなあ……。

 だからと言ってメインに来られてもしんどいけど。

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