ブラック企業の社畜として劣悪な環境で搾取され続ける人生だった。
体も精神も摩耗し、未来への希望もなく、俺は残業で灯りの落ちたオフィス内で過労死という形で孤独な人生の終わりを迎えることになる。
そんな俺が地球ではない違う世界に転生するなんて思ってもみなかった。
創作の世界では磨り潰されるほど使い古されたありきたりな設定だが、自分がそうなりたいとは思っても、まさか本当にそうなるとは思わないじゃないか。
しかも普通の世界じゃない。前世で夢中になったゲームとそっくりの世界にだ。
何故? どうして? どうやって?
全部分からん。
ありきたりな神様との邂逅も、不思議な声が聞こえたりもしなかった。
気が付いたらそうなっていた。
そしてその結果、俺は――
「ご主人様♡」
「今日も可愛がってください♡」
「いいぞ、おいで」
右手に女。左手に女。
背中に柔らかな感触を押し付けながら甘い吐息で耳をくすぐる美少女達。
美女達を見下ろし、衣服の下に隠された美しい裸体を惜しげもなく晒して密着してくる感触を楽しむ。
俺は悦楽と優越の境地を味わっていた。
『ハーレム』
まさしくそれを体現した現実に他ならず、両手に抱きしめる女の子の感触が夢のような状況のリアリティを強調してくれた。
濃厚なエロスの香りが凝縮された密室の中で、俺はいまこの世の天国を味わっている。
教会の象徴たる聖女、一騎当千の女龍騎士、公爵令嬢の幼馴染み、そしてこの国のプリンセス。
更には魔王を倒した女勇者、魔導の全てを極めた女魔導師、果ては魔王の娘まで。
高みの境地にいるような地位を持った極上の美女達が、一糸まとわぬ裸体を晒しながら俺の前に
『我が
彼女達は前世の俺が恋い焦がれてやまなかったゲームのヒロイン達だ。
画面の向こうでは絶対に見ることができなかった衣服の下も、彼女達は惜しげもなく俺に見せてくれる。
むしろ喜んで服を脱ぎ、自ら密着し、全身で奉仕をしながら可愛がってとおねだりしてくる。
本来なら有り得ない光景だ。なぜなら彼女達は全年齢向け恋愛シミュレーションRPGの登場キャラクター。
卑猥な行為などとは無縁の存在であり、薄い本や妄想でしかこの光景は有り得なかった。
それらを可能にした俺のチートなスキルが、それを実現させている。
(それにしても、本当にネーミングセンスないよな、これを与えてくれた何者かは……)
転生した記憶を取り戻す前から、俺には生まれついての固有スキルがあった。
【スキル『エロ同人』】
本来ならR18の行為とは無縁の彼女達に、薄い本の如きシチュエーションを可能とするぶっ飛びスキルなのだ。
極上だ。極上の人生を手に入れた。
これはゲームの中に転生してしまった主人公ですらないモブキャラ以下の俺が、全てのヒロインを手に入れてハーレム人生を謳歌する成り上がりの話である。