縄文式燻製の準備は出来た。
燻製させる為の小魚はどうなっているかな。
僕は立ち上がり、アリサが干した小魚の確認をした。
「ん~……やっぱりまだ乾いてないか」
干している時間が短すぎるから仕方ないか。
保存食で持たせるなら、できるだけ先に水分を飛ばして置いた方が良いんだけど……燻製が出来るどうかを見たいから、もうやってみるか。
「採って、来たよ~」
アリサも丁度戻って来た。
燻製チャレンジ開始だ。
バムムで作った網の上に小魚を乗せる。
そして、穴の上に採って来てもらった葉っぱのついた枝を大量に被せて蓋をする。
燻製だから出来る限り煙が漏れないようにしてっと……。
「……よし、後は待つだけ」
焚き火の火が弱くならない様に気を付けないとな。
火が弱まって煙も弱くなってしまったら意味が無い。
「これで、良いんだ……で、どの位、待つの?」
「え、えーと……2時間くらい……かな。とにかく、結構時間がかかるよ」
「そう、なんだ。その間、どうするの? 流石に、やだ見ている、だけっていうのも……」
「そ、そうだね」
アリサの言う通りだな。
焚き火の火は気を付けないといけないけど、常に張り付いていないといけないわけでもない。
けど、まだ探索していない場所に行くのは時間的に無理だ。
魚を捕るのも無理だし……。
「……うーん」
僕は何かないかと辺りを見わたした。
あるのは植物と木……木……?
ああ、やる事があるじゃないか。
「バ、バムムと細目の木を伐ろうか」
バムムは何本あってもいいし、木を伐って薪にするのもいい。
必要な物だし、これなら無駄な時間を過ごさずに済むぞ。
「それは、いいけど、後の島の探索、邪魔にならない?」
「あー……」
薪を背負っての探索は確かに邪魔過ぎる。
だとすると、これも……いや、待てよ。
別に持ち歩く必要なんてないじゃないか。
「あ、雨に濡れないように木の下辺りに置いておいて、後から取りに来ればいいよ。どの道、木を乾燥させないといけないし」
ここは来る頻度も高いしな。
これで問題は完全に解決だ。
「あ、そっか。確かに、そうね」
「じゃ、じゃあ鱗斧はアリサ……さんが使って」
僕は鱗斧をアリサに手渡した。
「リョーは、どうやって、伐るの?」
「ぼ、僕は普通の鱗を使うよ」
ただ、普通の鱗だとバムムを伐るのが大変だから、そこはアリサに任せよう。
「……あのさ、鱗斧1本だけじゃ、足りないから、せめてもう1本、作った方が良くない?」
「……」
それはそうだ。
今みたいに2人で必要な時や、壊れた場合でももう1本を使えばいい。
何でこの1本のみで考えてたんだ。
「そ、そうだね……えと、鱗斧を作るのと木を伐る作業、どっちがいい?」
「ん~……うちは木を伐る方が、良いかな。鱗斧、うまく作れる自信、無いし……」
「わ、わかったよ。それじゃあ、僕は鱗斧を作るね」
僕は斧を作る作業、アリサは木を伐る作業に取り掛かった。
1回目は試行錯誤しながらで大変だったけど、2回目となるとわかっている分楽だな。
まぁ、鱗で木を彫るのは相変わらず大変だけど。
「ふん! ふん! ふん! ふん!」
アリサも頑張って鱗斧をふっているな。
にしても、ハーピーがクワを持って木を叩いているこの絵面。
なんか、ものすごくシュールだな。
「ふん! ふぅ~……ちょっと、一休み……あ、そうだ。ねぇねぇ、聞きたい事、あるんだけどいい?」
「な、何かな?」
変な事を聞いてこなければいいけど。
「無人島の生活で、やらなきゃいけない事、他に何があるの? うちも、把握しておきたいの」
把握しておきたいか。
確かに、そういった事も大事だよな。
んー……やらなきゃいけない事か。
言い出したらきりがないけど、どうしようかな。
とりあえず、今頭に浮かんでいるのを話しておくか。
「い、今思っているのは今やってる木を伐って薪や炭を増やす、保存食の種類を増やす、シェルターの壁の強化……ああ、あと畑作りもしておきたいかな」
畑を作ろうとミースルの貝殻を集めたのに、完全に放置状態だった。
島の探索が終わったら、砕いて灰と混ぜるくらいはやっておこう。
忘れない様に気を付けないとな。
「ふむふむ、なるほど……やる事、多くて大変だな~……じゃあ、この作業も頑張らないとね! ふん!」
アリサが木を伐る作業に戻った。
僕もさっさと2本目の鱗斧を作って木を伐る作業に入らないとな。
※
1時間ほどで鱗斧を完成させて、木を伐り倒す作業に移った。
2人でやると、結構な数の木とバムムが手に入ったな。
「ふぃ~……疲れた~」
僕もだ。
鉄の斧、贅沢を言えばチェーンソーが欲しいよ。
「きゅ、休憩もかねて燻製の確認をしようか」
僕達は縄文式燻製の所へとむかい、蓋にしてあった葉っぱを上から順番にどけて行った。
一番下になっていた葉っぱは一部火をあぶったように色が変わっている状態になっていた。
熱が溜まっていた証拠だな。
その葉っぱをどけると、いい感じに乾燥して燻製された小魚が出てきた。
「おお~! いい感じに、出来てるね!」
見た目はね。
味がどうなっているかな。
「は、はい。どうぞ」
燻製された小魚を2匹取り出し、1匹をアリサに渡した。
「ありがとう! いただきま~す……あ~んっ……もぐもぐ」
それじゃあ僕も食べてみよう。
「はむ……もぐもぐ……」
うん、香ばしい風味がしていい味を出しているぞ。
しっかり燻製されているし成功だな。
「ん~……おいしい、けれど……うちは干物の方が、良いかな」
おっと、いつもおいしいと言っているアリサが意外な反応したぞ。
アリサからしたら燻製はいまいちだったか。
でも、保存食だから我慢してもらうしかない。
わがままを言える場所じゃないんだからな。
「の、残りは夕ご飯にしようか」
「あ、うん。そう、だね」
僕は燻製された小魚を葉っぱでくるんだ。
アリサに後処理を任せて、僕は乾いて綺麗になった服に着替えた。
おお……やっぱり、下半身がスースーしない方が良いな。
実に落ち着く。
「リョー、終わったよ~」
「い、今行くよ」
ざっと辺りを見回して最終確認。
火もちゃんと消えている、忘れ物も無し。
「じゃ、じゃあ、出発しますか」
「お~!」
この島で、まだ行っていない場所へといざ行かん。
新しい発見がありますように!