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僕は今、異世界の無人島で生活しています。
僕は今、異世界の無人島で生活しています。
コル
異世界ファンタジースローライフ
2025年01月30日
公開日
17.1万字
完結済
 大学生の藤代 良太。
 彼は大学に行こうと家から出た瞬間、謎の光に包まれ、女神が居る場所へと転移していた。
 そして、その女神から異世界を救ってほしいと頼まれる。
 異世界物が好きな良太は二つ返事で承諾し、異世界へと転送された。
 ところが、女神に転送された場所はなんと異世界の無人島だった。
 その事実に絶望した良太だったが、異世界の無人島を生き抜く為に日ごろからネットで見ているサバイバル系の動画の内容を思い出しながら生活を開始する。
 果たして良太は、この異世界の無人島を無事に過ごし脱出する事が出来るのか!?


 ※この作品は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さん、「ノベルアップ+」さん、「アルファポリス」さん、「ノベリズム」さんとのマルチ投稿です。

1、辿り着いた先は

 山の頂上で僕は海に沈んでいく夕日を座って見ていた。

 こういった美しい絶景を見ると「沈む夕日が綺麗だなー」とか一言呟くのが普通だろう。

 だが、今の僕は途方に暮れていてそんな言葉を口に出てくるわけがなかった。


 何せここは、異世界の無人島・・・・・・・なのだから。





 事の始まりは今日の昼頃。

 最近ドハマりしているサバイバル系のネット動画を観てから、通っている大学へ行くアパートの部屋から出た。

 その瞬間、俺は強い光に包まれた。


 一瞬宙に浮くような感覚を感じた後、光が収まった。

 目を開けると僕は床、壁、天井の全てが白い謎の場所に立っていた。

 そして、目の前には虹色に輝くドレスを着た女性がほほ笑みながら僕を見ていた。

 その女性と目が合った瞬間、僕は目を逸らしてしまった。

 昔から異性に対してなんとなく恥ずかしさを感じていて、つい目を逸らしたり、会話もぎこちなくなってしまう。

 そんな情けない自分を変えたいと思っていたところに、とあるネットの動画で体を鍛えれば自分の心も鍛えられて身も心も自信もつく! というのを観て頑張って体を鍛えた。

 結局ついたのは筋肉だけで、僕の中身は全く変わらなかったけども……。


「いらっしゃ~い、藤代 良太ふじしろ りょうたくん」


「へっ? な、なんで僕の名前を、知っているんですか?」


 僕はこの女性を知らないぞ。


「知っているのは名前だけじゃないわよ、え~と……」


 女性は手に持った紙に目を落とした。


藤代 良太ふじしろ りょうた、今年で20歳、身長は179cm、体重84kg、趣味は漫画、アニメ観賞、ネット、筋トレ、現在は市内の大学に通う為にアパートで独り暮らし、彼女は無し、最近はまっている事は動画サイトでサバイバル系を観賞する事で……」


「ちょっ! ちょっと! ストップ! ストップ!」


 おいおい、その紙に僕の個人情報が書いてあるわけ?

 流石にそれは駄目でしょう!


「あ、あなたは一体誰なんですか!?」


「アタシ? アタシは全知全能の女神よ」


「…………はい?」


 全知全能の女神?

 この人は一体何を言っているのだろう。

 確かに見た目的には美人で漫画やアニメに出て来そうな人だけど……。


「あっその顔は信じていないわね!」


「い、いえっ! そんな事はないです! そうですか、女神様ですか……」


 なんだろう。

 この自称女神様からは神々しさというのををまったく感じないんだよな。


「えっと……その女神様が、僕に何の用でしょうか?」


「おっと、そうだったそうだった。貴方にはこことは違う世界を救ってほしいのよ」


 こことは違う世界を救ってほしい?

 ……え? それってあれか、漫画やアニメにある異世界転移ってやつじゃないか。

 おお! そう思うだけでなんかテンション上がって来た!


「とは言っても、突然そんな事を言ってもわけがわからないと思うから説明を――」


「その世界には魔王が居て、その魔王を僕が倒せばいいんですよね!?」


 異世界転移と言えばこれだ。


「え? ええ、そうだけど……」


 やっぱり!

 なら僕の答えはもう決まっている。


「わかりました! 僕行きます!」


 子供の時から憧れていた異世界へ行く。

 そして、その世界をこの僕が救う。

 なんて燃える展開だ。


「そ、そう? ……その即決断っていうのも、それはそれで危ない気が……まあ、いいか。わかったわ、けど転移をする前に……」


「――はうっ!」


 女神様が僕の胸に右手を置いた。

 その瞬間、異性に触れ慣れていない僕は直立不動になってしまった。


「向うに行って、言葉が通じなくて困ったってたくさんの苦情があったから言葉をわかるようにするわね」


 …………へ? たくさんの苦情?

 それって、僕以外にもその世界に行った人が居るっていう事だよな。


「ちょ、ちょっと待って下さい! 僕って選ばれたん――じゃはっ!?」


 女神様の右手が光った瞬間、僕は今まで経験した事がないものすごい頭痛に襲われてその場に倒れ込んでしまった。


「あがあああああああああああああああ!! あっ頭が!! 割れる!!」


 痛い! 痛い! 痛い! 痛い!

 な、何が起きているだ!?


「ありゃ? あ~……無理やり向うの言語を頭に入れ込んだからキャパオーバーしちゃったかな。まっこれで死ぬ事は無いだろうし、このまま転移させても問題は無いでしょ。……じゃあ藤代 良太くん、頑張ってね!」


 女神様の笑顔がどんどんぼやけ、声も遠くに聞こえる。

 そして、回線が切れた様にブツリと僕の意識が無くなった。



 徐々に意識が戻って来た。

 と同時に波の音が聞こえてくる。


「うっ……うう……まっ眩しい……」


 目をうっすらと開けると、青空と太陽の陽が目に飛び込んで来た。

 砂の感触に波の音。

 僕は浜辺で仰向けで倒れていたようだ。


「こ、ここは……? つー……まだ頭が痛い……」


 身体の上半身を起こすと、目の前には海が広がっていた。


「…………本当に異世界なのか? ここは?」


 ぱっと見、地球のどこかにある浜辺にしか見えなかった。

 だが、後ろを振り返ってすぐにここは別の世界だと確信を持った。


 背後には森林が広がっていて、その奥には大きな山が1つ見えた。

 だがその森林がおかしい。

 目の前に生えている木には僕くらいの大きさがある葉っぱが何枚も付いていて、おまけに虹色に光っている。

 他にもブロッコリーを縦に細長く伸ばしたような植物が何本も生えていたり、その下には雄蕊が眼の様に見える花が咲いている。

 どう見ても僕の知っている植物……いや、僕の世界にある植物じゃない。


「……本当に……本当に異世界に来たんだ!」


 僕は起き上がり、さっそくお約束のチート能力を確認しようとした。


「……ん? そういえばチート能力ってなんだ?」


 あの女神様から何も聞いていなかったな。

 今の姿は、今日出かけた時に着ていたTシャツにジーンズのまま。

 僕の周りに聖剣や魔剣、鎧といった物はない。


「となると、武器防具関係じゃないな……身体強化かな?」


 なら、あの木を試しに殴ってみるか。

 身体強化なら1発でへし折れるはずだ。


「せいっ! ――いだだだだだ!!」


 木は折れるどころか、拳の跡も付かない。

 ただただ殴った拳が痛いだけ。

 これはどう考えても身体強化なんてされていない。


「んー……そうだ! 魔法!」


 ファンタジーの定番を忘れていたよ。

 魔力が強くて森林が火事になったらまずいよな。

 僕は海の方を向いて、両手を前に突き出した。


「ファイヤー! …………あれ?」


 両手から何も出ない。

 おかしいな、何か違うのかな。


「ファイヤー! フレイム! アグニ! 火球! 火炎! 火よ出ろ! 出て! 出て下さい!」


 言葉を変えたり、ポーズをとったり、色々試してみるが何もでない。


「うーん……魔法も違うのか……じゃあなんだろう?」


 あと考えられるとすれば……あっ! あの山か!

 あの頂上、もしくは洞窟の中とか麓にある村に伝わる伝承とかで神器を手に入れるタイプに違いない。

 こんな異世界の森の中へは入りたくないけど……行くしかないか。


「うしっ頑張って行くぞ!」



 と、気合を入れて山登りを開始したけど。


「ぜぇーぜぇ―……」


 予想以上に山登りがきつい。

 日もだいぶ傾いてきたし、早く登らないと。


「……あー……喉が渇いた……」


 そういえば、サバイバル動画で人が生きるのに3の法則の話があったな。

 ・呼吸に必要な酸素が絶たれると3分。

 ・水が飲めなければ3日。

 ・食べ物を食べなければ3週間。

 後、適していない気温だと3時間が入ったりもするんだっけ。

 別にサバイバルを今からするわけでもないんだが、知らない場所で山登りをしていたらふいに思い出しちゃったよ。


「はぁー……はぁー……お、拓けた場所が見える」


 あの拓けた感じは山の頂上かもしれない。

 僕はその場所まで一気に駆け上がった。

 そして――。


「………………え?」


 目の前の光景に僕は絶望へと叩き落された。

 山の頂上から見えたのは360度海、海、海。

 ここは陸地じゃなく島だ。

 しかも普通の島じゃない。

 この島には切り拓かれた場所が何処にもない。

 日が落ちようとしているのに明かりが見えない、煙も上がっていない。

 人が住んでいる様には到底見えない。

 つまり、考えられるのは……。


「……無人島……? ……嘘……だろ……」


 全身の力が抜け、僕はその場に膝から崩れ落ちるのだった。

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