どれくらい時間が経ったのか、グータにはわからなかった。
戦いの興奮が冷めてきたせいか、ひどく体が重い。それに加えて、脳みそが疲れていた。
「……なんか、こう、納得できねぇんだよな。」
星の砂の上に寝転びながら、グータはぼそりと呟いた。
戦った。勝った。
でも、それで終わりじゃないのはわかっている。
「結局、俺は何者なんだ?」
力がある? 使命がある? そんなことを言われても、実感がない。そもそも、自分はただのダメ人間だったはずだ。ダラダラ生きて、何かに追われるのが嫌で、ただ適当に生きてきた。なのに、なんでこんな壮大な話に巻き込まれてるんだ?
「お前はどうするつもりだ?」
背後から声がした。幽霊兵士が、夜のような静けさを纏ってそこに立っていた。
「さぁな。決めるのは俺なんだろ?」
グータはぞんざいに答えた。
兵士は黙ったままだった。何も言わず、ただじっとグータを見ている。
グータはため息をついて、ゆっくりと上体を起こした。
「なぁ……俺に聞かせてくれよ。お前が守ろうとしたものって、なんだったんだ?」
幽霊兵士は一瞬、目を細めた。
「……この星だ。」
「そんなの、わかってるよ。でもさ、それだけじゃないだろ?」
グータは適当に砂を握りしめ、パラパラと指の間から落とした。
「この星には、何があったんだ? どんな戦いがあった? 俺がここで戦う意味があるなら、それを知らなきゃ納得できねぇんだよ。」
兵士は静かに目を閉じた。
「……昔、この星は、ただの戦場だった。」
「戦場?」
「ああ。ここには、俺たちの故郷があった。だが、戦争がすべてを焼き尽くした。俺たちは戦い続けたが、最終的には……何も守れなかった。」
グータは言葉を失った。
「じゃあ……俺が戦ったところで、何かが変わるのか?」
「わからん。」
兵士は、驚くほどあっさりとそう言った。
「は?」
「お前が戦えば、この星は守られるかもしれない。だが、それも確実ではない。俺の時もそうだった。」
「ふざけんなよ……」
グータは苛立ちを覚えた。
「そんな曖昧なもんのために、俺に戦えってのか? 何もわからないまま、何かを守るとか、そんなの……馬鹿らしいだろ。」
「そうかもしれない。」
兵士の声は静かだった。
「……だったら、俺がここにいる意味ってなんだよ?」
兵士はしばらく沈黙した後、静かに答えた。
「お前が、それを見つけるんだ。」
グータは頭をかいた。
「はぁ……クソ面倒くせぇな。」
だが、そんなことはわかっていた。答えを探さなきゃいけないのは、自分だ。誰かに押し付けられるんじゃなくて、自分で何かを見つけるしかない。
「……とりあえず、ちょっと歩いてくる。」
「どこへ行く?」
「知らねぇよ。適当に、この星を見て回る。」
グータは立ち上がり、星の砂を払った。
「この星に何が残ってるのか、知りたくなった。」
兵士は静かにうなずいた。
「……そうか。」
「じゃ、行ってくるわ。」
グータは軽く手を振り、歩き出した。
風が吹く。
夜空は広く、どこまでも静かだった。
何かが変わるかもしれない。
いや、何も変わらないかもしれない。
でも、それでも。
自分の目で見て、自分の頭で考えるしかない。