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第5話 迷いの中で

 どれくらい時間が経ったのか、グータにはわからなかった。

 戦いの興奮が冷めてきたせいか、ひどく体が重い。それに加えて、脳みそが疲れていた。


 「……なんか、こう、納得できねぇんだよな。」


 星の砂の上に寝転びながら、グータはぼそりと呟いた。


 戦った。勝った。

 でも、それで終わりじゃないのはわかっている。


 「結局、俺は何者なんだ?」


 力がある? 使命がある? そんなことを言われても、実感がない。そもそも、自分はただのダメ人間だったはずだ。ダラダラ生きて、何かに追われるのが嫌で、ただ適当に生きてきた。なのに、なんでこんな壮大な話に巻き込まれてるんだ?


 「お前はどうするつもりだ?」


 背後から声がした。幽霊兵士が、夜のような静けさを纏ってそこに立っていた。


 「さぁな。決めるのは俺なんだろ?」


 グータはぞんざいに答えた。


 兵士は黙ったままだった。何も言わず、ただじっとグータを見ている。


 グータはため息をついて、ゆっくりと上体を起こした。


 「なぁ……俺に聞かせてくれよ。お前が守ろうとしたものって、なんだったんだ?」


 幽霊兵士は一瞬、目を細めた。


 「……この星だ。」


 「そんなの、わかってるよ。でもさ、それだけじゃないだろ?」


 グータは適当に砂を握りしめ、パラパラと指の間から落とした。


 「この星には、何があったんだ? どんな戦いがあった? 俺がここで戦う意味があるなら、それを知らなきゃ納得できねぇんだよ。」


 兵士は静かに目を閉じた。


 「……昔、この星は、ただの戦場だった。」


 「戦場?」


 「ああ。ここには、俺たちの故郷があった。だが、戦争がすべてを焼き尽くした。俺たちは戦い続けたが、最終的には……何も守れなかった。」


 グータは言葉を失った。


 「じゃあ……俺が戦ったところで、何かが変わるのか?」


 「わからん。」


 兵士は、驚くほどあっさりとそう言った。


 「は?」


 「お前が戦えば、この星は守られるかもしれない。だが、それも確実ではない。俺の時もそうだった。」


 「ふざけんなよ……」


 グータは苛立ちを覚えた。


 「そんな曖昧なもんのために、俺に戦えってのか? 何もわからないまま、何かを守るとか、そんなの……馬鹿らしいだろ。」


 「そうかもしれない。」


 兵士の声は静かだった。


 「……だったら、俺がここにいる意味ってなんだよ?」


 兵士はしばらく沈黙した後、静かに答えた。


 「お前が、それを見つけるんだ。」


 グータは頭をかいた。


 「はぁ……クソ面倒くせぇな。」


 だが、そんなことはわかっていた。答えを探さなきゃいけないのは、自分だ。誰かに押し付けられるんじゃなくて、自分で何かを見つけるしかない。


 「……とりあえず、ちょっと歩いてくる。」


 「どこへ行く?」


 「知らねぇよ。適当に、この星を見て回る。」


 グータは立ち上がり、星の砂を払った。


 「この星に何が残ってるのか、知りたくなった。」


 兵士は静かにうなずいた。


 「……そうか。」


 「じゃ、行ってくるわ。」


 グータは軽く手を振り、歩き出した。


 風が吹く。

 夜空は広く、どこまでも静かだった。


 何かが変わるかもしれない。

 いや、何も変わらないかもしれない。


 でも、それでも。


 自分の目で見て、自分の頭で考えるしかない。

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