私はその少年をカプセルから出した。
その少年はカプセルから出てしばらくすると息をした。
「大丈夫?」
私は優しく告げる。
「ああ…」
少年は困惑した表情を浮かべていた。
私が、機械族だとわかっているのだろうか。
私より幼い男の子。その子は私をじっと見つめ目をそらす。
私はそんな少年に疑問だったことを聞いた。
「心って何?」
「はぁ!?知るかよ!」
少年は一瞬考えて顔をしかめると大声でそんなことを言った。
「あんまり大声を出すとほかの機械族にバレて殺されるよ」
私が行ったその事実に少年はみるみる青ざめていった。
いくら強い男の子でも死ぬのは怖いらしい。
私はそんな少年を抱え移動する。
雨宿りする必要のないこの中国という国では、代わりに他の機械族にバレてはいけないという制約があった。
私はひとまず隠れられそうな場所に少年を連れていって、持っていた本を渡す。
「この本。見てどう思う?」
「?」
不思議そうに少年は本を受け取るとページを開く。しばらくして少年は本を閉じ一言吐き捨てた。
「感情がこもってない」
予想通りの評価が返ってきた。
機械族なのだから感情が通るはずもない。
そんな詩を見て感謝の言葉を残した女の子のことを思い出す。
ますますわからなかった。
「でも…」
そう言って少年は私に本を返しながら言う。
「いい詩だな」
そんなことを言う少年の頬には、涙がつたっていった。
その涙の意味は、やはり私にはわからなかった。