私が理解したいと思うのは心だった。
そんな心を知るためには、人間に聞くのが一番早い。
そう考えたのに…もうこの世界には、人間が誰もいないようだった。
機械族が人間を殺しつくしてしまったのだろうか。
保護カプセルの中に入っているのは、欠損した機械族ばかり。
人間が入っている保護カプセルを探して、数十年が経過した。
私の体は少しだけ変化した。ほんの少し、胸が大きくなったのだ。
人間はこれほど時間がたつと、どのような変化をするのだろうか。
10年ならわかるがそれ以上は知らなかった。
それから私は、一つの仮説を立てた。
この世界にもう人間はいないのではないかという仮説だった。
この異世界のどこをめぐっても生きた人間という生物には会えなかった。
上手く隠れているのかもしれない。なら、ほんの少し我慢しようと決めた。
ほんの少しの間、私は人間らしく生きてみることにした。
人間を理解するのではなく、人間のように生きるのだ。
私は自らの寿命を残り20年と決めた。
その20年は、人間の私の寿命だ。
まず私は、探索をした。
体力という上限値を定めて、探索範囲をわざと狭くした。
それからご飯を食べた。
野菜のスープを口に流し込みゆっくりと飲み込む。
それから本を読んだ。
昔私が書いた詩だった。
その、最後のページ。
【ありがとう】
その一言にどんな意味が込められているのか必死で考えた。
そんなことをして10年が経過した。
そんな時だった。
私の目の前にあるのは保護カプセル。
中には、人間の少年が入っていた。