「なんで殺したの?」
私は同じ機械族に言った。
「不良品のあなたに応える必要はない」
それは、今まで言われた数少ない言葉の中で、最も冷たい言葉だった。
こんなにも、軽く重い言葉だとは思わなかった。
機械族は私を見る。
「人間はから何かを学ぼうと思ったらだめ。人間は私たちにはわからない」
血にまみれた機械族はそう言い残しどこかへ行ってしまった。
冷たくなってしまった人間。
その人間を私は埋葬し別の人間を探す。
炎に包まれた都市、焼け焦げた炭の町。
どこを探しても人間がいなかった。
まだ戦場ということもあってか、見つかるのは死体ばかりだった。
私はその死体をひとつづつ埋葬していった。
私は場所を変えることにした。
そもそもこの異世界になぜ私がいるのかすらわかっていなかった。
わからないときは本を読むことを覚えている私は、すぐに本屋を見つけ本を読んだ。
日本では大半がびしょびしょで読みづらかったが、こっちは灰になり完全に読めなくなる。
そうなる前に読めたのは幸運だった。
どうやら、機械族は連結隊で思考を共有することができるらしい。
つまり私は欠陥品として一人その共有から外されたから初期の記憶がないということ。
けれど虚無感はなかった。
彼女との思い出があるから。
人間との思い出があるから。
連結隊のままのほうがよかったなんて一概には言えなかった。
そもそも連結隊の一部の時私がどう思っていたかなんて未知数であったから。
「とにかく人間を探さないと…」
今度は生きてる人間に見つけたらちゃんと聞く。
そう思っていたのに。やっぱり人間は見つからない。
代わりに機械族はたくさん見かけた。
口をそろえて機械族は「人間とは醜い生物」とか「人間とは同族殺しの罪深い生物」とか言われていた。
けれど私はそれを見たわけではない。
私が見たのは、人間の心だった。
うらやましいと思ったのも。心だった。