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スケープゴート殺人事件
スケープゴート殺人事件
馬場悠光
ミステリー推理・本格
2025年01月29日
公開日
8.8万字
完結済
この手記は日本の長野県にあるペンション『スケープゴート』で発生した事件をぼくの視点で書き記した記録であり、そこでぼくが犯した罪の告白であり、それに対する謝罪文であり、ぼくの遺書である――

大学生、弓嶋魁が自死を図った。彼がその間際に書き起こした手記には、長野県のペンション『スケープゴート』で発生した殺人事件の経過とその顛末、そして彼がそこで犯したとある罪についてが書き綴られていた……
あらゆる責任の所在を抉り出す、古き良き、本格推理小説!

【始めに】

 この手記は日本の長野県にあるペンション『スケープゴート』で発生した事件をぼくの視点で書き記した記録であり、そこでぼくが犯した罪の告白であり、それに対する謝罪文であり、ぼくの遺書である。


 本題へと入る前に。


 ぼくは生まれた時より、一度でも読んだ文章や見聞きした場面を忘れることはない。この手記に記させたできごとは、一切の誤りや嘘偽り等ない物であると断じる。そもそも、ぼくは嘘が苦手なのだ。


 また、一応この手記はぼくの親友、小森真介へ向けて書かれたものであるが、ぼくや彼、そして彼の妹のことをよく知らない他人が読んでも話に置いて行かれぬよう、最初にぼく自身の自己紹介と、彼等との出会いと、事件が起こる前のあらましについて記していくこととする。


 ――このような小説という形では、謝罪として誠意を欠いていると思われる方が多数だろう。しかし、ぼくは物心着いた時より古今東西の名作小説に触れ、物書きになることを夢見ていた。そんなぼくの最後の我儘を、どうか許してほしい。

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