この手記は日本の長野県にあるペンション『スケープゴート』で発生した事件をぼくの視点で書き記した記録であり、そこでぼくが犯した罪の告白であり、それに対する謝罪文であり、ぼくの遺書である。
本題へと入る前に。
ぼくは生まれた時より、一度でも読んだ文章や見聞きした場面を忘れることはない。この手記に記させたできごとは、一切の誤りや嘘偽り等ない物であると断じる。そもそも、ぼくは嘘が苦手なのだ。
また、一応この手記はぼくの親友、小森真介へ向けて書かれたものであるが、ぼくや彼、そして彼の妹のことをよく知らない他人が読んでも話に置いて行かれぬよう、最初にぼく自身の自己紹介と、彼等との出会いと、事件が起こる前のあらましについて記していくこととする。
――このような小説という形では、謝罪として誠意を欠いていると思われる方が多数だろう。しかし、ぼくは物心着いた時より古今東西の名作小説に触れ、物書きになることを夢見ていた。そんなぼくの最後の我儘を、どうか許してほしい。