「よっと…!」
目の前には幻想生物がいる。
どう見ても現実世界に存在しないその生物は、全身毛むくじゃらで2mほどの巨体を持つ。名を【プラート】といい、肉がとてもおいしいと評判である。
「討伐完了~」
この世界にはギルドという機関があり、クエストという名の依頼を受けることができる。俺は今回、異常に大量発生して畑を食い荒らすプラートの討伐依頼を受けていた。
この世界ではたびたび幻想生物が大量発生することがある。それを【厄災】というのだが、それに備えるべく原生生物を討伐できる力を認められた【狩人】の組織がギルドだ。
「これで必要討伐数は越えたかな?」
必要討伐数100と書かれた紙を指ではじくと俺はふと振り返る。
そこには大量のプラートが転がっていた。
「ちょっとぐらい食べてもバレないよな…?」
プラート。2mを超える巨体からは想像できないスピードで突進をしてくる幻想生物。それだけ聞くと一見筋肉質で堅そうだと思うが、焼いてみれば程よい硬さまでほぐれ、部位によっては料理屋が高値で買い取ることからも、狩人の中では有名な幻想生物だ。
たしか誰かが「おいしいものをたくさん食べたい」と願ったから生まれたと聞いている。
「誰が願ったのかは知らないし関係ない…か」
この世界の掟。
それは、幻想生物は人の願いによって生まれる生物であるため、”誰”が願ったかを詮索してはならないというものだ。
そんな掟を順守しなければこの世界にはいられない。
それがこの幻想世界だった。
「おっと…食べてる暇なさそうだな…」
俺は空を見上げながらそんなことをつぶやくと急いでその場を後にした。すると数分後、跡形もなくプラートの死骸は消え去った。
正確に言えばプラートの死骸ごと、地面が消え去ったのだった。