だが、確認したい事がある。弥辻は足を止めて、目を開きスイカンを睨みつける様に観察する。
その間に信介は走りだした。ここで足止めできれば、かなりのアドバンテージになる。まず、スイカンの大好きな水分をぶつけてやる事にしよう。
僕は、近くに水分が有るのを見つけていた。他人の敷地にある蛇口に繋がったホースに向かい全力で走りだした。ホースを手に取り蛇口をひねる。ホースの先から水を出るの待たずに、スイカンに向かって走っていく。2メートル以内には近づけないので、スイカンに水が届く様に誘導しないといけない。先程まで、ここに居た信介が走り出した場所にホースの先端を置いて後退りしていく。安全な場所まで行くと、立ち止まりスイカンを鋭く観察する。
スイカンがホースの先端から放水された水たまりの近くまで行くと、水はどんどん蒸発していく。その間もスイカンは前に足を進める。ホースまで近づいた所で動きが、鈍くなった。乾燥させるのに時間を使っているのか、、、
僕は、スイカンを長く見続ける事ができている。長いといっても、3分程しかたってないのだが、僕にとっては充分な時間になった。そして、観察した結果。予測では無く、結果を見たのだった。スイカンが乾燥させた事による起こる現象に。
スイカンは水を乾燥させていると思っていた。水は蒸発させるし、人間をミイラにしてしまう所を見ると、強烈な乾燥で水分を無くしたものだと錯覚してしまう。水分を極限まで無くすのは蒸発だけでは無い。スイカンは別の方法で、水分を奪っていったのである。スポンジが水を吸う様に。
吸収、吸って収める、スイカンは水分を吸って体に収める事をおこなっていた。乾燥では無く吸収、では吸収である事が乾燥とどういう違いがあるのか。水分を乾燥させると水蒸気になり空気に収まってしまう。では、吸収しているスイカンの水分は何になっているのか?おおよその予測、この予測なんてのはどうでもいい。結果がもう見えているのだから。そう、スイカンは少しづつ大きくなっているのだ。本当に少しづつ、誰も気づかない様な速度で成長している。弥辻の目で記憶した吸収する前と吸収した後では、確かに、ほんの数ミリ程度、大きくなっていた。今まで吸ってきた水分により、猫程の大きさだったスイカンが人間ほどになるまで吸収し、現在の大きさになった。これが結果だ。
大きくなるだけ?と思うかもしれないが、実際は恐ろしい事が起こっている。
まず、1つ体大きくなると言う事は、吸収範囲も体の大きさから約2メートルになっている。攻撃が強くなっているのだ。2つ目、体が大きくなれば歩幅は大きくなる、スイカンは2足で歩いて来るので、スピードも大きさに比例して早くなる。
この能力が揃っているのが厄介だ。水分を吸収している間は、動きが鈍くなるというデメリットがあるのだが、吸収した後、体が大きくなり、吸収、スピードが上がるというメリットがある。今のスピードならいいが、これより早くなると逃げ切れないのだが、逃げてしまうとスイカンは水分を吸収してしまいスピードが上がる。
1つ考えていたことがある。信介を海外に逃がすという手だ。先程の愚策の考えの1つ、日本という島国には、海外へ行くのに海を渡らないと行けない。そう、スイカンも海を越えなくては追って来れない、さらにスイカンは能力発動中は動きが遅くなるのは既に分かっていた。だけど、新たな情報により、この方法は使えなくなってしまった。そう、乾燥ではなく吸収という能力が分かってしまったから、スイカンを海に放つとどうなるのだろうか、海を吸収して塩だけが残った大地が出来上がるのか。そして、どんどん体が大きくなってしまうのだろうか、あのペースで大きくなるのに、海の水なんて吸収してしまったら、とんでもないサイズになってしまう、地球が支えれるかも怪しい所だ。また、大きくなった事によりスピードも上がるので、スイカンの一歩で海外に居る信介に追いついてしまうだろう。吸収の能力なんて体のサイズの周り約2メートルなので、ほぼ地球に全体攻撃してくるという恐ろしい状態になってしまう。
だが、スイカンはどこまで大きくなるのだろうか、上限が無く青天井で大きくなるのなら早く対処しなくては信介を守る事はできない。