公園を出て、スイカンが居ないか確認するために、二人は左右一面に目をやった。
さて、どうしたものか。奴が居る。まだ、距離は充分に取れているが、油断はできない状況だ。
「弥辻󠄀さん、距離はありますがスイカンが見えます。」
何か良い考えが無いかと僕は、あたりを見渡すが、これといって何も見当たらない。人を生贄にするのは信介が嫌がるのは、先ほどの会話で感じとれたので、良い策なんだが余り良い策では無い。自分にとって最適な策や考えであっても、他に人間が近くに居る事で、愚策であり愚行になってしまうのだ。だから、人と関わるのは嫌いなんだ。外から見てる分には良いが。いざ、喋ったり行動を共にすると、自分にとって足枷になってしまう。100%出せる能力が60%になってしまう様な気がして、、、いや、事実。今現在、進行形で足枷になっている。これを打開する策を今思い付いてる最善策より、さらに最善策を出さなければいけない。
僕は、行動に移す事にした。信介に、作戦を伝える。信介は行動を移す前に、弥辻の目を見て本当にそれでいけるのかと思ったが、今までの行動でスイカンからのダメージは信介には受けていない。やはり守る事に重点を置いてくれてるのだろう。このまま弥辻󠄀を信じて行動に移す事にする。
そう、逃げるという行動だけに。
7
弥辻󠄀達は、スイカンとは別方向に足を向け走りだした。何か違和感を感じた、何かが違う。スイカンに何か変化があった様に感じる。
「信介、小走りでいい。よくよく考えるとスイカンのスピードじゃ自分達に追いつけない。無駄に体力を使うのは良くないと思うんよ。」
「確かにそうですね、ゆっくりしか進んでませんもんね。もう少しペースを落としましょう。」
とペース落とし走りだした。
これが、致命、ミスと繋がる事になる。
小走りで進みだして30分程経つ、弥辻は、やはり違和感を感じた。振り返ってみる。
僕は、ここで初めてスイカンを目視した、見える様になった。何故だが分からないが、その物体が、こちらに向かってきている。
恐怖した。予想していない事がおこっていた。今まで観察してきた中で、ほとんどの物は観察した経験で、おおよその行動や結果に予測がついた。何通りから予測を立てる事で、数多の結果にも対応してきたが、今回のスイカンの行動は予測できなかった。なんせ、こんな物を相手にするのは、初めてだったから仕方ない。などと言い訳を頭の中でするが、自分の経験値が少なかったと自負する。だが、僕は頭の中では混乱しているが、心の中は歓喜していた。そう、胸が熱くなっていた、こんな気持ちになるのは久しぶりだ。心が高ぶる、荒げる。
新しい観察対象が、予想だにもしない行動を起こしている。今までの観察対象は何度も観察してきた同じ生物達で、ほぼほぼ予想できる。だが、こいつは予想できない。スイカンというこの生物なのかも分からない。こいつに。
新たに振り返り気付いた事は、スイカンは先程より明らかにスピードが上がっている。これだけ走ったなら、もうスイカンとは、かなり距離の差があり。軽く休憩でもとろうかと思ったが。スイカンは確認できる距離に居た。スピードが上がっていたのだった。スイカンの欠点、スピードが遅いという事、範囲的な攻撃をしている事からしても、スピードが遅いのは致命的だ。
僕は考える、何故スピードが上がったのか。
「信介よ、何かおかしい。スイカンとの距離がほとんど離れていない。ちょい、やばいよ。信介は、そのまま走っていってくれ。自分は、ちょっと息を整えてから追いつくよってに。」
「まだ、近くに居るのか。あんなに走ったのに。ていうか、弥辻󠄀さん、なんでスイカンが見えるんだ?」
そう、僕には見えてなかったはずの、スイカンが僕にも見えるようになっていたのだ。信介に言われて、気付いた。なぜ、見える様になったのか。敵対したから?攻撃したから?攻撃受けたから?
チャンスがきた。僕は視覚で観察が可能になったのだ。さて何から観察するかな。
「いや、なんでだろ?見えるよ。人間くらいのサイズで青い化物みたいな面した奴だよね?」
信介は驚きながら答えた。
「そうです。青い化物です。怖いですよね。でも1つ間違ってます人間ほど大きくありませんよ。猫くらいの大きさのやつです。」
そう言って、振り返りスイカンを見た、信介の目が点になっている。いや点にはならないが、目を大きく見開いたため、黒目が小さく見えただけだ。スイカンを見る信介の顔に、焦りの様な物を感じた。
「弥辻󠄀さん、スイカンは出会った時より、大きくなっています。確かに人間サイズになっています。先に行っても大丈夫なんですか、死んでしまったりしませんよね。僕一人にしないで下さいよ。」
縁起でも無い事いいよる。