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第9話 弥辻の考え

 何故、あんなに冷静で要られるのだろう。弥辻󠄀にはスイカンの姿が見えていないと言っていたが、見えない物に対しての対応力がすごい。やはり何か普通の人と違うのだろうか。などと考えてると弥辻󠄀が指差し言った。

「あそこの公園で休もう、んで話てないスイカンの情報教えるから、信介来い来い。」

2人は公園に入り、そこにあったベンチに座った。

 弥辻󠄀が口を開ける。

「簡潔に整理しよう。スイカンは信介の命を狙って追いかけている。スイカンの能力は乾燥。僕は、ある者から信介を守れと言われた。んで、只今スイカンに追われ中って訳。ここまでで、何か質問ある?」

信介は良くわからない顔をして聞いていたが、とりあえず疑問を投げかけていく。

「なぜ、自分の命を狙っているんですか?」

「憶測だが、信介が昨日居た池にスイカンも居たんだ、そこで信介が池を汚したとか。信介が、

池に居たという事に腹を立てたと思ってる。もしかしたら信介のその腕の傷は、感電による物の傷に似ているから、雷にでも打たれて池に電気を流したせいかもしれんね。それで、その池のスイカンの癪に触ったと。」

自分が、そこまで悪い事をしたとは思わないし、命まで狙われる筋合いは無いと思いながら、次の疑問を投げかける。

「乾燥って何です?」

「水分が無くなる事だよん。」

とふざけた回答が返ってきたので、再度たずねる。

「乾燥って何ですか?」

「スイカンの半径約2メートル以内は乾燥する、乾燥のスピードは普段、日光に当たるとか、乾燥機に洗濯ぶち込むよりは早い。あと生物は乾燥して砂になるみたいよ。」

まさに、乾燥だ。と信介は思い、商店街での出来事を思い出す。砂の小山が無数にあった事だ。弥辻󠄀と信介の2人で走っていた。商店街の何人かを抜かし走り抜けた。だが後ろを確認した時、人影は無かった。砂の小山以外は。

人を殺したのか?自分が?スイカンが?

スイカンが乾燥させて、自分はその能力に気づいていないにしても間接的に商店街の人達を巻き込んでしまった。

 嫌な気持ちになる。すごい嫌な気分だ。酒でも呑んで理性を捨て去りたいくらいに。薬を大量に飲んでハイッになってしまいたいくらいに。

 ふと、思う。弥辻󠄀は乾燥に気づいていた、その上で商店街に向かい、「泥棒」と叫ぶ事で人を集めた。わざとスイカンに人を乾燥させるために。

「弥辻󠄀さん、商店街で何故、人を集めた?」

弥辻󠄀は水筒の水を飲んで、水筒置き答える。

「スイカンは乾燥させてる間、動き遅くなる。で、水って呼んでも来ないじゃん?だからさ、水分を含んだ人間を呼んで、動きを遅くしてもらったんだ。」

信介は、目を丸くして言った。

「商店街の人達を餌にしたのか?人殺しじゃないか!」

弥辻󠄀は答える。

「僕は殺してない。スイカンのやった事だ。人を餌にしたのは、スイカンを足止めしたかったからだ。ただ、それだけ足止め出来るなら何でも良かったけど、あれが最適解だったと思うわけよ。」

狂ってる、考えがクズなのか、でも悪意が有るような言い方じゃない。弥辻󠄀にとって人間は駒なのかもしれない。まだ確信はできない。だが、何故、人間を駒だと思う奴が自分を守ろうとしてくれるんだ。最後の疑問に関わりが有るようだ。

さらなる疑問が出来たが問おう、弥辻󠄀に。

「弥辻󠄀は人の事を、どう思ってるんだ?家族、友人、他人問わずにだ。」

弥辻󠄀は少し困った顔をして、言った。

「何も思わない。」

僕は、水をまた飲み、さらに続けた。

「多分、僕は人間に興味が無いんだ。家族も友人も居ない、他人は判別できないし、人間の生死なんてどうでもいい。そこらへんで、ひっくり返って死んでる虫と変わらなからね。なんせ覚える気も無いんだから、そこに同情とか心情は入ってこないんよ。

んで、何で虫って、ひっくり返って死ぬか分かるかな、あれは死んだら虫の物を掴む力とか無くなるじゃん、んで、虫は全てに抵抗できなくなる訳よ。すると重心が背中にある虫は、背中の重みでひっくり返るって訳。

こういう無駄な知識は大好きだ、役に立たないとか役に立つとかはどっちでも良い、それ知ってて何の得にもならない知識でも、僕は欲しがる。人間に興味ない分、人間が興味無い事に意識が注がれる。でも一つだけ人間を見てて面白いのが観察する事だな、あれは面白いんよ。皆、無意識に動いているけどさ、何かしら人間同士で共通点があるんだよ。人間ってさ個人の人権や個性やら謳うくせにさ、行動自体は、ほぼ一緒なんだよ。そこらへんってさ、他の生き物も同じな訳、だからさ、自分を主張してくる奴ほど声が、でかかったり要望がでかかったりするけどさ、それってさ個人を見出したいだけであって、他人とは違うぞってのを主張したい様にみえるけど、そういう主張にもやっぱり同調する奴が居る訳であってさ、そこに人間としての差は無いわけで、人権も皆平等と捉えるなら、無いのと同じなんよね。そういう滑稽な動物の人間を観察するのは、すごく面白いし興味深いよ。他の動物は喋ったりしないからね。まぁ、そういう動物達も観察するのは面白いよ。喋れなくても身振り手振り鳴き声ってので上手く仲間とコミュニケーションとれるんだからね。

 だから僕にとって、人間も動物も一緒なんだよ。同じ種類の動物が無数に居ると判別できんし、感情まで読み取る事もできない。確認できる行動だけが、僕にとっての情報源になるのさ。で、信介の問いの解答になってるかな。」


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