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第8話 抜ける商店街

商店街の中間過ぎまで走ってきた所で弥辻󠄀が後ろを見る。砂の小山が、いくつもできているし、魚屋の魚。八百屋の野菜は砂になっているのを確認した。

どうやらスイカンは水分に対して等しく乾燥を行うらしい。只、ここからどうするべきか、信介を守るという形はスイカンを消滅させるという事では無いだろうか。

スイカンのスピードは理解してきた、だが、まだ足止めにするには水分が足りない。商店街を抜け繁華街に出るという作戦もある、なんせ、そこには人が溢れかえってているからだ、スイカンが水分を乾燥させるのにかなりの時間を使うだろう、だが欠点がある。

 人間が恐怖すれば逃げてしまうということだ。目の前で急に人が砂になったのを見て平然としてられず、その場から離れようとするのが人間。これは困る、貴重な水分でありスイカンの足止めでもある水分が走りさって逃げてしまうのでは役に立たない。なので、繁華街は難しい。

 人の多い場所を考えるが、後は駅などもあるがこれは足止めできたとしても、この土地はそこまで駅に人が集まるほどの立地でもないし、あまり期待できない様な気がする。

 人間ではダメだ動かない水分が必要で、かつ信介を守り抜く手段を考えなくてはならない。水分の多い場所なら海にでも行けばいいという安易な考えもあるが、それはスイカンを足止めしとく分には使えるかもしれないが、信介を守るという事には適していない。なんせ信介には海上生活でもしてもらわないといけないし、陸上で暮らすより不便も多い。海上生活はリスクが高すぎる。

 スイカンが、どこまで乾燥させれるかにもよって変わってくる。海まで逃げてスイカンを足止めしたはいいがそれによって、海が蒸発して世界中で大雨が降るみたいな天変地異を起こされたら、信介を守るどころか人間が絶滅してしまうではないか。

 だから、海に行くのは否だ。常に弥辻󠄀達が移動しながら距離を保ちつつ追いかけてもらう。それでいて、スイカンの能力を無にするか、スイカン本体を倒してしまう。そう確実に信介が守られた。という条件達成を果たさないと意味がない。

 僕が頼まれたのは守ってくれという事。それは信介が今まで通りの生活に戻る事と弥辻は思う、海上に投げ出されて、はい守られました。とは納得できない。

 スイカンを倒す道筋が、まだ立てられない。どうすればいいのか、そう考えてる内に商店街を抜け少し高級な住宅街へと出てきた。

とりあえずアレを実行しようか、スイカンとの距離もだいぶ離れてるはず。信介に確認をした。

「スイカンとどれくらいの距離の差ができとる?」

信介が後ろを向くと、安堵した表情で答えた。

「姿が見えなくなりましたよ。諦めたんですかね。」

諦めては無い、スイカンの狙いは信介だ。ゆっくりと数多の水分を奪いながら、こちらへと向かって来ているはず。

 さて、僕は手に持ってるに大きなスパナのような物に目をやった。これで、もう少しスイカンの足止めできるはず。

 流石にずっと走ってきたので体力が尽きてきた。ひと休みしたい。この作業が終わったら休めるはず。

「さっきから思ってたんですが、弥辻󠄀さん何持ってるんですか?重そうですけど、それ持って走るのは邪魔ですよ。」

弥辻󠄀の手元を指差し信介は言った。

「こいつが、良いんだ。さっき商店街で見つけてなぁ、火消しのために使う道具だ。火の気の多そうな揚げ物屋の所にあった。たまたまだったが、こいつは使える。スイカンには非常に効果的なもんだ。」

弥辻󠄀は目的の物を見つけて、近寄った。

赤いポールのような物をが立っている。信介は見たことがあるが、何なのか分からない。弥辻󠄀がしゃがみ込んで何やら、さっきの大きなスパナのような物を利用して鎖を外し。赤いポールの上の部分にスパナを引っ掛けた。

「信介、見てないで、力貸してくんね。これ重いし硬いんだわ。」

と言うと弥辻󠄀はスパナの棒を指差し、そこに信介が手を置き弥辻󠄀が押す方向に合わせて信介も渾身の力を込めた。

すると、赤いポールの横にある穴から盛大に水が噴き出した。凄い勢いで出ている、手でも入れたら持ってかれそうなくらいだ。

 あたり一面、水浸しになってきたが、まだ水は噴き出している。

「よし、水分は充分や。これで少しスイカンから逃げるぞ。距離をとって休みたいよってに。」

なるほど、そのために赤いポールを弄り回していたのか、よく見るとポールには消火栓と書かれていた。火事の時のために準備されてるんだろうけど、初めて知った。信介は感心していた。消火栓に対してもだが、先ほどからスイカンに対して器用に対応する弥辻󠄀もだ。



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