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第6話 スイカン

「そろそろ、目的地かな?何か水の気配が感じるんだけど合ってる?」

「目的地ですけど、気配って何ですか。」

信介は不思議そうに問う。

「気配ってか、事実かな。水の蒸発した匂いがするし、少しの風で波のような音が聞こえる。あと、焦げた様な匂いもするなぁ。」

経験値と強感覚が高いらしい。そりゃ天気だって当てれますよね。

弥辻󠄀は、どこか敏感だ。生きてきた経験値もあるかもしれないが、かなり感覚が発達している。目で見たのは、すぐに記憶し、鼻で感じる臭い、耳に聴こえる微かな音さえも捉える事ができる。だから、今まで苦労した。全て感じたく無くても、その情報らは、半場強制的に押し寄せてくるからだ、見たくない、嗅ぎたくない、聞きたくない、と思う事もあったが。ある時、これはこれで、僕にとってのアイデンティティと考え、受け入れる事にした。

だが、味覚。舌だけはポンコツだった。味とか食感とかには全く興味が無いし、感覚も鈍い、とりあえず生きれる分には摂取できれば良いと、ろくな食べ方をしない。飲み物は、基本、水道水。食べ物は、冷蔵庫にある主食では無く、軽いおかず的な物で、米やパンなどの主食は全くといっていい程食べない。

そして、彼らは目的地に着いた。

そこには、澄んだ綺麗な水面が一面に広がり水中も底まで見えるほどの綺麗な風景だ。

水中では、魚達が泳いでいるのまで見える。

 ここに、スイカンと呼ばれる者がいるのか?ふと、目を池の傍にやると、地面が真っ黒になっている部分がある。何かの跡だろうかと思った時、僕の観察眼というのか五感というものなのか、何かを感じ取った。

 焦げた臭いがするのだ。だが周りを見渡しても煙や何も火の気は感じられない。この黒い地面に何かあるのか。

「信介、前にここに来た時、どこらへんに座って酔いを醒ましていたんだい。」

信介は顎に手をやり少し考えてから答えた。

「そこかな。そこの何か地面が黒くなってるとこ、うん。この場所で間違いない。」

そう聞くと弥辻󠄀は、理解した。信介がここに居た日には、大雨が降っていて、さらに雷も少なからず鳴っていたはず、ということは、信介に雷が落ちたんじゃあないか?

 だとすると、信介の腕の傷は落雷の時にできた傷で、さらに池に足をバタバタさせてたと言っていた。雷の電気が池に流れて、何かが起こった。それによりスイカンの怒りに触れたという理由か。

 ふと、池の水面を眺め、池にある大きな石を見ると、石の上の部分に湿った痕跡が見える、石は8️割程、水面から頭を出している。これは、水面が下がっているではないか?すこし、長考してみるとしよう。

 信介が雷に打たれ、その電流が池に流れる池には何らかの影響が出た。そこでスイカンが怒りで、信介に怒っている。

スイカンを呼び寄せたのは、信介なのではないだろうか?池を綺麗に守ってきた、スイカンが水を汚されたという理由で、だいたいの感じは、こんなもんだろう。

まぁ、過程など、どうでもいい。結果が見たいのだ。

んで、次に考えるのがこの水面が下がっているという事だ。

これがスイカンの怒りなのか?池を蒸発させる事がそれの目的とは思いにくい。

 だって恨んで怒りを向けているのは信介なのだから。

ふと、池の上に覆いかぶさるように垂れてきている大きな木の葉に目をやると、葉が死んでいる。いや、この表現は間違っているかもしれないが、葉は緑というのが正常だと思うのが一般の人だろう。それが茶色く乾いていれば、それは枯葉。水分の無い葉っぱである。

 では、何故この緑の葉は死んでいるかと言うと、葉が薄くなり普通なら横を向いて生えているはずなのに、その葉は下を向いている。

これが一枚だけなら、まだ良かったのだが、池に覆いかぶさっている、全ての葉が下を向いているのだ。

 では、これらの現象から結論に結びつけよう。

下がる水面、下を向く葉、乾燥だ。水分が無くなってきている。この割と大きな池の水面が干上がってきているのが分かるほど乾燥が進んでいる。

 スイカンは乾燥をさせる事ができる。

それも急激なスピードを持って。

焦りを感じた弥辻󠄀に対して。信介が開口した。

「何か池の中心にいませんか?鹿のような、でも体は人間のように二足で立っている、獣のようなものです。」

弥辻󠄀は、信介が見ている、目の先に自分の視線も移すが、そんなものは見えない。

 ただ、水面に不自然な波紋が見えている。何を中心に波紋が出ているかわからないが、確かに何か目に見えない者がそこに居て波紋を出しているという観察的には合致のいく内容だ。

「信介、僕には見えんよ、何かそれ強そうとか、そいつの周りで異常だなと思う事とかないかい?」

 信介は嫌そうな顔で答える。

「死んでますね、、、最初は、枯れ葉か何かかと思いましたが、魚が何か干物の鯵のようにカピカピに乾いて水中に漂っています、一匹ってレベルじゃありません。何十匹といます。」

 僕の観察は当たっていた、このスイカンって者は乾燥させる事、それが能力だ。


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