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第3話 隣人も変人

朝御飯でも食べるかと思い、冷蔵庫を開けて色々と物色していたら、猪の肉が目に入ったが朝から食べるのはキツイと思いスルーした。

適当に冷蔵庫にあったスライスチーズとウィンナーを口にほりこみ、蛇口から出ている水をコップに注ぎ流し込んだ。僕には味覚は無いのかもしれない、お腹が膨れたらそれでいい様な気がする。最近、噂になっている昆虫食とやらでも、充分食っていけるかもしれない。コオロギを粉末にした物を使ってるらしい。コオロギでも飼ってみようかなぁ、繁殖がめんどくさいんだよなぁ。湿度管理とかもしないとだし。暑くても死ぬし、寒すぎると弱るし。でも、どうせコオロギの死骸を食べるなら、死骸を集めてクッキーでも作ればいいのか。コオロギの餌代だけあれば、無限にコオロギ食えるって事は、コスパ良いかも、さらに、繁殖力も考えたらタイパも良い。これはこれで有りなのかも知れない。どうでも良いような事を考えるのを止め行動に移す。

さてと、朝のシャワーを浴びて。いつも通りの黒シャツにジーパンに着替え、黒い革靴を履き玄関の扉を開けた。

「今日は、晴れるけど、何か変な気配するなぁ、スイカンって奴かねぇ」

隣の部屋の前に移動し、玄関を軽くノックした。

なんとなく、気が乗ったので次は強くノックしてみた。

扉が慌てて開いた。目が虚ろな信介が顔を出した。

「おはようございます。弥辻󠄀さんが訪ねるなんて珍しいですね。何か、ありましたか?」

うーん、信介さん、手首から血の後あるんすけどー。後なんか、酒臭いです。

「おはよう。用事があるんです。上がっていいかな。」

明らかに嫌そうな顔をしたが、見なかった事にしよう。

「上がっていいかな?」

圧を掛ける、これが僕のやり方だ。気が弱い人間は圧にも弱いから、高圧的に事を進めれば、思い通りに動いてくれる。

「良いですけど、色々、気にしないで下さいね。どうぞ。」

部屋に入ると、最初に目が入ったのは、血の後がまだらにある白いはずのタオル血痕で赤い柄が浮き上がっていた。さらに、お酒の缶が5本、酒の銘柄は全部違う物だった。

その酒を混ぜて酔いやすくして、手首切ってハイになって寝てたって感じかな。

風邪薬の瓶も数本転がっていたから、酒と合わせて飲んだのかな、いつか孤独死しそうな部屋のゴミを眺める。

だが、それ以外は片付いていた。筋トレグッズは部屋の角に集まって綺麗に並べられていた。それと、弥辻󠄀の部屋には無い机が有り、その上にはリモコンが綺麗に並んでいる。彼はきっちりした性格なのかな、だけど、酒のゴミやらを見ると二面性があるのかもしれない。

信介の方へと目をやると、半袖の腕に変わった傷が数か所あった。リストカットの傷では無く、腕にグルグルと巻き付いてミミズ腫れのようになっている。

「腕、怪我したの?どうしたん、いや手首じゃないほうよ。」

「昨日、夕方から外でお酒を飲んでたら気分がよくなりまして、近くにある池で足付けてバタバタしてたら、急に何か衝撃を感じたんです。お酒飲んでて痛いとか分からなくて、家に帰って、起きてみたら、この傷ですよ。」

昨日は、大雨だったので雷かな。でも雷に打たれる確率ってかなり低かった気もするしなぁ。ていうか大雨の中、外に出てお酒飲むなよ、普通に危険な不審者じゃねぇか。

この出来事がスイカンと関係してるのだろうか、時系列的にそうなるよな、他に何か行動したか少し探ってみよう。

「昨日、筋トレはしたの?」

「何か質問攻めですね。嫌な気持ちになります。昨日、弥辻さんと玄関で別れてから少しやるつもりで始めたら、気分が乗ったので3時間くらいしてましたよ。いい感じに筋肉痛になってて、ほら、腕のここ触ると軽く痛むんですよ。筋肉の成長を感じます。」

3時間だと、すごい精神力だな。ていうか、この信介とやらは3時間も筋トレに費やすほど日中、暇なのか。筋肉痛で喜ぶ人って居るんだな、なんだよ、筋肉の成長って。

そういえば、信介の出掛けたりしている所を、あまり見た事が無い。この酒のゴミ達の資金源はどこから来ているのだろうか。信介は24歳の若者だ。親の仕送りなどで生活しているのだろうか、株運用か、株を触れるほど頭は良いと思えない、この部屋にPCすら無いしね、宝くじで当てたとかならワンチャンあるかもしれないけど、やはり、謎のままだ。

同じ20代前半の弥辻󠄀は少し卑屈になった。


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