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ゴッドルームを煙で燻す居住者は諏訪弥辻。
ゴッドルームを煙で燻す居住者は諏訪弥辻。
蛇口ヒネル
現代ファンタジー異能バトル
2025年01月28日
公開日
3.6万字
完結済
主人公は、あるアパートの部屋を借りる。そこから始まる。
ある時、人ならざる者に頼まれ事され、それに好奇心で応じてしまうが、危険な依頼だった。
満身創痍しながら依頼をこなす、主人公に神は何を思い、何を成すのか。
今、危険なデッドレースが始まる。観客はゴッドルームの神のみ。
さぁ、逃げよう、命ある限り逃げ続けよう。

第1話 ゴッドルームへようこそ。


何が善で悪かも知らないが、自分の事は良く分かっている事がある。

15歳を越えたあたりだったか。人が人とは認識できるのだが、それの名前や顔を全く覚える事が出来なくなった僕からすると、動物の中の一種が人間なのであって人という個体を見分ける事は、ひどく厄介な事だった。きっかけは無かった、何か急に人間という生物に興味が無くなったのだ。

 只、着ている服や声での認識はできる。ある程度のコミュニケーションはとれていた。だが、声を発さない人や、服装が変わらない学生服や多人数が着用しているもの、スーツ姿などの人とはコミュニケーションをとるのが難しい。制服が採用されている学生時代は非常に苦労した。友達なんて出来ないし、話しかけられても誰が誰だか分からない。唯一、学校で認識出来たのは、理科の先生だけだった、白衣を着ていたのが特徴的だったためである。学校の人間関係はどうでもよかったが、学問には、しっかり取り組んだ。将来、役に立つのかと思う事があったが、学問や知識で将来の選択肢は広がるだろうと考えたからだ。

 人に興味の無い者が、どういう風に人間を見ているかと聞かれると、簡単に説明できる、ダンゴムシを意識した事があるだろうか、石影などに居る触ると丸まる虫である。そのダンゴムシ一匹づつに名前があったとしよう。虫太郎、虫子、虫三郎など別々の名前をもった十匹のダンゴムシを集めて、シャッフルして、そこから一匹選んだら、あなたは名前を答えれるだろうか?

おそらく、大半の人が無理だと思う。

 そういう目線で、彼には人間が見えているのだ。人間というのは人間という生き物であり、個体の名前も人間で人間という特徴しかもたない。地球を支配している生き物。この生物の中でも頂点に達している、人間という生き物、僕はそいつらがどうなろうか、どう消えようが、どうでもいい。僕の心に人間が介入される事は無いと思っている。なにしろ僕が人間の心に介入する事が無いからだ。

 まさか、人間では無く幽霊や神に介入され、介入してしまうとは、人知を越えた存在には僕も関心をしてしまうのだろう。この経験は僕を成長させたと思う、だから、これからも出会うであろう人間で無い者には、全力で向き合おうと思ったのだ。

そんな事を、ふと考えつつ、顔を下に向けて自身の体に目をやる、無くなった左足を見つめ、再度思う。

「観察すること、それが僕の唯一できる事だ。」

僕は、アルバイトで生計を立てている。

バイトの内容はというと、道路を走る車を選別し、只、それらをカウントしていくだけの仕事。

はたから見れば、簡単に見えるが同じ作業の繰り返し、座りながら出来るとはいえ移動はできない。また、目をずっと車線上に送っていないといけないのだ。

僕は、この仕事に嫌気がさしたり、サボったりした事は無い。なんせ、彼はこの作業が好きだった。

車中に、どんな人が乗っていて、乗車している車種を見て、さらには、通行人まで見て。彼はその人間達を観察するのが好きだった。

生き物を観察するのは面白い。そういう考えが彼の生き様にある。だが、自分自身には興味が無い。

何かをしようとか、人生に必要な資格を手に入れたりなどは、興味どころか意識した事も無い、特に、生活では、その面が良く出ている。それでも知識と学力だけは豊富にあった。

見たものを瞬時に覚え記憶すること、聞いた音を瞬時に記憶すること、僕には記憶という物に長けていた。そのおかげか観察するのにも、かなり有効に役立っていた。

僕が人を観察する事で留まっていること、、、その生物や物質の観察対象に手をかけて中身まで観察をしていたらどうなるだろうか。その手にかけている状態や目の当たりにする光景も観察し生き甲斐になってしまうかもしれない。

このような、サイコパス的な事を行動に移した時、悲惨な事が起きるだろう。


僕の名前は諏訪弥辻󠄀(すわみつじ)、自分に興味がなくて、自分以外の物に興味をそそられ観察行う変わった人間である。

弥辻󠄀のアパートは一人暮らし向けに作られた築2年の新しい物件で、駅にも近く、かなり良い立地なのだが、毎月家賃は3万円しか払っていない。滞納してるとか満額払っていないとか、そういう訳では無い。

これだけ、立地が良く綺麗なアパートなら、家賃10万円以上は軽くするだろう、この部屋はたったの3万円なのだ。何があってそうなったのか、家賃がこれほど安くなっているこの部屋は、お金を持たない日銭暮らしの様な弥辻にとっては、うってつけの賃貸だった。

弥辻󠄀は、1年前にこのアパートへ引っ越してきた。前に暮らしていた場所は人通りも無く、近場に人が集まる様な場所も皆無の過疎地だったので、観察対象が無く暇でしかた無かったから、新天地を探して、ここに辿り着いた。

不動産屋さんで、この物件を見つけてスタッフに話を聞いてみると、面白い事が聞けたからだ。

「お客様、ここはお勧めできません。こういう仕事ですから、本当はお勧めしたり無理にでも入居させるのが仕事なんですが、ここだけはダメです。というより私が嫌です。」

と若いスタッフの女の子がそう言うと、続けて奇妙な話をしだした。

「このアパートの202号室には何かが居るそうです。以前入居されてた方は、大きさが人と同じ程で腕が8本あるイモリが首を絞めて襲ってきた。という訳の分からないクレームが入りました。それで、その方が退去された後、以前この当社で働いていた男が確認のため何日かこの202号室で生活したんです。すると、その男も妙な事を言うんです。『頭が半分だけで口の無い人間に、足の裏にある穴から大量の血液を浴びせられて、踏みつけられた。』と、確かに男の服には血の跡もありましたし、踏まれたであろう顔に痣もできていました。

この部屋には人間ならざる者が最低2体いると私は思います。1体は悪意を持って襲ってきている事もあり、お客様にお勧めしたくありません。他にもサングラスをした小さい子を見たという話もあります。私事ですが、お客様に嫌な思いをさせたく無いのです。」

弥辻󠄀は、この話を聞いて偉く気になった。見たことも聞いたこともない物体に興味が沸いてきた。是非、見てみたい。観察したい。恐怖より勝るこの気持ちを尊重しようと考え、スタッフの反対を押し切り、ここの物件に決め、敷金、礼金も、その場で払い内見もせずに決めてしまったのだった。


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