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決勝戦当日

決勝戦当日。


モニターの前で全体朝礼が行われた。


朝礼後。




「守。これを。」




キャロルはアタッシュケースを取り出し、その中からガントレットを取り出した。




「預かっていた物ですわ。準決勝で篭手が砕けてしまったので、用意してきました。安心して下さいませ。これが高価な物と分からぬように、特殊な塗装を施しておりますので」




「ありがとなキャロル」




「頼みますわよ。守」



その視線には確かな信頼が宿る。




「任しとけ!」




篭手を受け取り、早速装着する。




「さ、ミーティングを開始いたしますわよ」






決勝に向けてミーティングを終了させた一同に、2人の女性が歩み寄る。




「アリーチェ御姉様、エレナ御姉様!? なぜこのような所にいらっしゃってますの!?」




「ふふ。今回、たまたま来賓として招かれましたので・・・それよりキャロル。良く頑張りましたわね」




「ありがとうございます。アリーチェ御姉様もお変わりなく」




「あっはっは! あんな泣き虫で弱っちかったキャロルが、まさか決勝まで来るとはな」




「よ・・・余計な事を言わないでくださいまし! エレナ御姉様!」




「褒めてんだよ! で、そいつらがキャロルのチームメイトか?」




守、大地、千里、そして太さえも突然現れた軍最上層部の人間に緊張し直立している。




「そいつら呼ばわりはやめて下さいまし、エレナ御姉様」




「すまんすまん! しかしなぁ・・・うーん・・・こいつらも弱っちそうだな~・・」




「エレナ。失礼ですわよ。まだ学生なのですから」




「はいはいーっと」




適当に返事しつつ、キャロルに顔を近づけるエレナ。




「で・・・どいつだ? 最近お前が良く、家まで連れてきている守って奴は」




その言葉にキャロルの顔が真っ赤に染まる。




「ななな・・・何でそんな事知ってますのよ!?」




「メイド達に家の状況報告させてるんだよ。いいから教えてくれって」




「イヤですわ! とにかく邪魔ですので、さっさと用意された席に行ってくださいまし!」




「試合前の大事な時にごめんなさいね。では、頑張ってくださいね。エレナ。神代元帥に挨拶に参りますわよ」




「へーい。じゃ、キャロル頑張れよ!」




2人が立ち去った後。




「あなた方は何をそんなに緊張してますの?」




「だって、お前の姉ちゃんだぞ・・・ビビるに決まってんだろ」




「御姉様方は優しい方ですわよ」




「両方すげぇスタイル良かったな~超美人だし」




「大地」




「うんうん。すごく優しそうな人たちだったよね。女性として憧れちゃうなぁ。キャロルちゃんも、大人になったら、あんな素敵な人になるんじゃない?」




「御姉様がわたくし位の時にはもう、大体今のような感じでしたわ」



守と大地はキャロルの胸を見つめる。



「そうか・・・期待薄だな」



「あんた達~・・・いい加減殺しますわよ!?」




「もうっ! 守君達は、すぐそんな事言うんだから! 胸の大きさだけが女性の魅力じゃ無いんだから! ね? キャロルちゃん!?」




『あ』




「千里~! あんたが言うと嫌味に聞こえますわ!」




「ええっ! そんなぁ~・・・」






ビルステージの、一番高いビルの上に設けられている特別観覧席に、今回招待された軍上層部の面々が集まっていた。




【元帥】 神代 誠


【大将】 相良 桜  


【中将】 大久保 アリーチェ


【少将】 大久保 エレナ


【少将】 有馬 小春




この5名に加えて 元帥専属軍医 【少将】神代 咲 が誠の後ろに立っている。




「神代元帥。そして西日本防衛軍総統 相良大将。このたびはお招き頂きありがとうございます。」




丁寧に挨拶をするアリーチェとエレナ。




「ほっほっほ。ご苦労だった。座るとよい」




「では失礼して」




先に座って居た小春は立ち上がり、アリーチェに敬礼をする。アリーチェも同じく敬礼を返し、そのまま着席する。




「エレナ~! すごいじゃない! 決勝まで残ったのよ貴方の妹。やっぱ大久保家の血統は優秀ね!」




「小春、お前も来てたのか! うーん・・・正直、キャロルが勝ち残ってるのが信じられない。てのが本音だな。キャロルの奴、頭は相当に切れるんだが・・・それだけではなぁ・・・チームメイトも優秀には見えないし」




「着いて早々に、ぺちゃくちゃ喋ってんじゃ無ぇよお前ら」




「あら咲。居たの?」




「ジジィの後ろに居たろうが! 無視しやがって!」




「はっはっは!・・・でも、こうやって特戦校の同級生が集まるなんてなぁ。懐かしいぜ。私達、同じチーム組んで、この大会に優勝したんだよな」




「懐かしいよねぇ! これで巫女みこちゃんがいたらチーム【かしまし乙女】勢ぞろいだったーーー」




「おい! 馬鹿小春! やめろ!}




咲、小春、エレナの3人は固まり、恐る恐る誠の顔を見る。


正面を向いている、アリーチェの頬にも冷や汗が伝う。




「ばっかもーん!」




3人へ桜の、植物でできた拳での制裁拳骨が下る。




『痛ったーい!』




「馬鹿者共が! 戦闘は成長したが、思考は学生と変わっておらんみたいだの! お主らはもう学生では無い! 人の上に立ち、命を預かるという重みが欠けておるから、余計な事を口走る!・・・まったく・・・。勘弁してくれんか?誠」




「うむ」




緊張していたアリーチェも、ほっと胸を撫で下ろす。


そして、この雰囲気を変えようと、話を切り出す。




「所で・・・このメンバーを見ると、何だか授業参観みたいですね。皆、何らかの形で少なからず、関わりがある子ばっかりで」




そうこう話している内に【参神】と【Eチーム+α】が戦闘準備を始める。


その様子は、特別観覧席の少し上に設けられたモニターで確認できた。




「まぁ・・・因果とはそういうものじゃよ」




「そういえば桜さん・・・ちょっと聞きたい事あるんですけど・・・守ってどの子です?」




「なんじゃエレナ・・・お主、守を知らんのか・・・?そうか、お主はまだ少将だったの。詳しい事は階級制限中将以上の国秘だが・・・ほれ、あのキャロルの少し前に立っている小僧だよ」




「え!? あの相撲の!? キャロル・・・まぁ、確かに少し変わったセンスを持ってるとは、思っていたけどよ・・・」




「違うわい。その横の奴だ」




「あの何の変哲も無さそうな小僧がですか!? あのチームの中で使えそうな男は、あの相撲の奴位で、後の男は似たり寄ったりの雑魚だったぞ!? 弱い奴はあいつの一番嫌いなタイプだろ!?」




再び桜に殴られるエレナ。




「痛って! 何すんですか!?」




「もう1人の雑魚はワシの可愛い可愛い孫だ。それも国秘じゃからお主は知るまいて」




「えっ。・・・しゅみません・・・」




「さて・・・みなさん、始まるようですよ。見せて貰いましょう。私達の次を担う後輩達の実力を」




ー最終戦ビルステージー




戦闘準備を済ました一同は開始の合図を待つ。




『みなさん』




『どうしたキャロル』




『正直、ここまで勝ち残るとは思いませんでしたわ。本当にチームになりましたわ』




『何言ってんだ! お前のお陰だよキャロル! ありがとな!』




『本当だよ。 ありがとうキャロルちゃん!』




『ケツ蹴られたのは、痛かったけど今じゃ感謝してるぜ!』




『ドスコイ!』




『及第点』




キャロルはコホンと小さく咳払いをして




『・・・みなさん。では、私もおまけのαではなく、正式にEチームに入れて頂けますか?』




『当たり前だろ! ほんと・・・お前は、変なところ不器用だよな!』




『う・・・うるさいですわね! では・・・Eチーム・・・出陣ですわ!』




『了解!』




戦闘開始の合図と共に、一丸となった新生Eチームは、一斉に行動を開始する。





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