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7月中

いつもの放課後。大地はグラウンドに正座で座っている。


その下には魔方陣のような物が描かれていた。




「試験前ぎりぎりになってしまいましたが、ようやく魔術の解析が予定まで進みましたので、本日は大地の解術を行います」




「俺もついにコアが使えるようになるのか~、わくわくするぜ」




「今回は20%程度までしか、魔術の通り道を開く事は出来ないと思いますので、あまり期待はしないで下さいまし」




「キャロルさんすごいわね。先生、話を聞いて大地君の体見せてもらったけど、複雑すぎて解読できなかったわ」




「先生はしっかりして下さいまし」




「・・・ごめんなさい・・・」




シュンとする優香。




「大丈夫かキャロル。大地、爆発とかしないだろうな・・・」




「その時は、その時ですわ」




「えっ!? そんな可能性あんの!?」



大地は驚く。




「大地君が爆発したら嫌だよ・・・」




「千里~・・・お前だけが俺の見方だよ~!」




「大丈夫。爆発しそうになったら・・・私がこれで止める」




銃を向ける沙耶。




「止めるって息の根!?」




「とにかく始めますわよ。千里は魔力供給を、黒田先生はもしもに備えて、対応出来る準備をお願い致しますわ。相良さんがわざわざこのような、手の込んだ事をするのには理由があるはずですので。大地、昨日渡したカプセルはちゃんと飲みましたわよね?」




「言われた通り寝る前に飲んだぞ。なんだあれ、もしかして危ない薬とかじゃないだろうな」




「わたくしの血液ですわ」




『血液!?』




一同は驚く。




「危ない薬の方がよかったぜ・・・」




「どういう意味ですの!? 解いてあげませんわよ!」




「すみません! 美味しかったです! お代わり下さい! いてっ」




キャロルに頭を殴られる大地。




「とにかく始めます。貴方の飲んだ私の血液を使って、回路をこじ開けますわ。言い忘れてました死ぬほど痛いので」




「えっ。ちょ、ま」




「行きます」




キャロルはナイフで少し自分の親指を切り、大地の背中に親指をつける。




その瞬間大地は胸を押さえ、悲鳴を上げながら前のめりになる。




「我慢して下さいまし。 わたくしにも我慢できたのですから貴方にも出来るはずですわ! ・・・よしっ!小さいですが穴明けには成功いたしました! 体内を一周させ再び心臓へ戻しますわ!」




大地は冷や汗をボタボタと落としながら、苦痛の表情を浮かべている。




「体が・・・本当に爆発しそうだ・・・!」




沙耶が銃を構える。




「しませんわよ! では繋ぎますわよ! ちなみに繋ぐほうが・・・痛いですわ」




「嘘だろ・・・!?」




バチンっと大きな音を立てたと同時に糸が切れたように大地は地面に力なく倒れこむ。




「終わりましたわ」




キャロルは汗を拭く。




「キャロルちゃん! 大地君は大丈夫なの!?」




「あまりの痛みに気絶しているだけですわ。 少し待てば起きるはずですわ」




5分ほど経った後、大地が目を覚ます。




「大地。わたくしがわかりますか?」




「・・・鬼」




「いてっ」




キャロルは再び大地の頭を殴る。




「で・・・何か変化は感じます? 魔力は一部ですが流れているはずですわ」




「うーん・・・分からねぇけど少しは違う・・・かな?」




「貴方の魔力は並程度ですから20%程度力が流れた所で、分からないのかもしれないですわね」




「あれ? でも待てよ・・・見える! 見えるぞ! 懐かしいなおい!」




「何言ってんだ大地。お前頭おかしくなったのか?」




「お前らには見えないのか!? ほらここ! ここに居るだろ・・・え? 何だって? 見えないようにしている? んじゃ見えるようにしてくれよ」




大地が指差していた先に突然小さな着物を着た女の子が姿を現した。




「お初お目に掛かります。余は大地様の憑き神で、神木である千年桜の化身。櫻姫おうきと申します」




『シャベッタァアアア!?』




「何驚いてるんだよ。こいつは俺が小さい頃、大きな桜の下で埋まってた所を捕まえたんだ。でもおかしいな・・・昔は大人位の大きさだったような気が・・・」




「大地様。余を虫のように言わないで下さい。それは大地様の力があの、小娘の術によって抑制されているからにございます」




「ちょっと待って・・・。櫻姫さん貴方は、自分の事を憑き神とおっしゃいましたね?・・・わたくしは相良さんより、大地は精霊憑きと聞いておりましたが・・・神と精霊どちらですの?」




「余は、人々の信仰によって生まれた神であると同時に、桜の木の化身で精霊でもある。つまるところ、神であり精霊であるという事だ」




「つまり、大地は神憑きで精霊憑きという事・・・ありえないですわ・・・。なぜそんな方が大地に憑いていますの?」



櫻姫は大地の方に向き直る。




「大地様は時と共に忘れ去られ、山奥で只枯れ行くだけの余を救って下さいました。雨の日も風の日も余に肥料となる物を運んで下さり、冬には寒いからと藁を巻いて下さり、夏は暑いからと水を撒いて下さいました。大地様のご好意で、余は再び満開の桜を咲かせるまでに復活致しました。その恩を返すため、この命尽きるまで、大地様に付き従う所存です」




「俺はただ、山に遊びに行ったら、枯れた大きな桜の木の枝に1つだけ咲いた桜があったから、もしかしたら枯れてないんじゃないかと思って、遊ぶついでに世話しただけだぜ」




「お陰で命を救われました。改めて感謝申し上げます」




櫻姫は膝を付き胸に手を当て、大地に頭を下げる。




「やめろって! 皆見てるだろ」




「失礼致しました」




「大地お前・・・すげぇ奴だったんだな!」




「いや、でも櫻姫が居るからっていって、俺何も出来る事増えて無いぞ? おい、櫻姫。お前何か出来るのか?」




「余が出来る事は、大地様の力の手助けだけにございます。大地様、適当な土を一握りして下さい」




大地は足元の土を握る。


その瞬間握った手から大量の巨大な草が生えてきた。




「草・・・だな」


「草・・・ですわね」


「草」




「これは・・・草を生やす力!? ・・・これだけ!?」




「大地様は触れた植物を眷族とし、自在に成長させる事も使役する事が可能でございます。今は小さな力ですが。力が完全に戻れば何十メートルをもの植物をも使役する事が出来ます。貴方様の力はあの小娘・・・確か名を桜といいましたか・・・彼女を遥かに越える力となる事でしょう」






「なんですって!? 相良さんを!?」




「大地様。桜はここにはいないのですか?」




「ばっちゃは九州に帰ったよ」



その言葉を聞いた櫻姫は眉間に皺を寄せ怒りを露わにする。




「あの小娘・・・土地守でありながら余の存在を忘れ、飛梅とびうめの精霊と契約なんぞ交しおって・・・その上、大地様に余が付いたと知るや否や、大地様の力を封じるなど・・・好き勝手しおって」




「まぁ・・・いいじゃねぇか。それより櫻姫。お前もしかしてこれからずっと一緒にいるのか?」




「勿論にございます。片時たりとも離れたり致しません」




「風呂も便所も?」




「寝るときも一緒にございます。心配はございません。大地様も殿方にございますので、生理的欲求やその発散も大丈夫でございます。必要とあらばお手伝い致します」




「手伝いなんか要るか! 1人でやれるわ!」




「大地・・・みんな引いてるぞ」




女性陣は大地をまるで、ケダモノを見るような冷めた瞳で見つめていた。




「汚らわしいですわ」




「大地君・・・そんな人だったなんて・・・」




「不潔」




「大丈夫よ大地さん! 思春期だもの、仕方ないもの・・・ね?守」




「お・・・俺に振るなよ優香姉!」




「守・・・見損ないましたわ・・・!」




「嘘よ! 守君はそんな事しないはず!」




「不潔」




「俺はしてねぇよ!」




「ねぇねぇ・・・みんなさっきからなにの話をしてるの・・・楓わかんないよ・・・」




(しまったーーー!)




一同は楓の存在を思い出す。




「えっと・・・そう! 整理整頓をお手伝いするという話をしてたのですわ!」




「それだよキャロル! いやー、俺も整理してないから片付けないとな~あはは・・・」




「・・・みんな楓に何か隠し事してない・・・?」



楓は疑いの目を皆に向ける。




『してない!』




この後皆で何とか誤魔化した。







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