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特Aの実力

授業中ドラゴンの出現を告げるサイレンが響き渡る。




『東京第3ゲートにて、クラス2戦龍型ドラゴンの出現が確認されました。軍曹級以上少尉階級以下の者に加え、待機中の中佐3名は戦闘準備を整え、現地へ急行して下さい。』




「おー又現れたのか・・・最近多いな」




「確かに。近年出現が多い傾向にありますわね」




廊下を大きなアタッシュケースを担いで、沙耶が走って行く。




「おー! 頑張れよ沙耶ー!」




教室から廊下に向かって手を振る守


沙耶はチラッと守を見て、そのまま走り去って行った。




「ほんっと馬鹿ですわね、遊びに行くんじゃないんですわよ」




「いいだろ応援するくらい」




正面に映し出された映像では、遠めに見ても鍛えているのが分かる筋骨隆々の2人組が、戦龍型と互角以上に渡り合っていた。




「あれは同じ一年の籠手田聖 山田三四郎ですわね。個々の戦闘力では狗神ペアをも凌ぎますわ」




「あれも一年か。という事は、あの2人とも定期昇給試験で戦う事になるのかよ!? 2人だけでドラゴンを倒してしまいそうだぞ!」




「おそらく、あの2人は同じチームを組んでくると思いますわ。ライバルでありながら仲が良いですもの」




「マジかよ・・・戦いたくねぇなあんな奴ら」




「何言ってますの!? うちのチームは今の所、前衛が貴方しかいませんのよ! 下手したら守1人で2人を相手する可能性がありましてよ!」




「聞かなきゃ良かったぜ・・・」




「ま・・・こちらにも、沙耶が居ますので、他のチームからすればあの2人同様に、嫌がられるはずですわ。ほら、よく見て下さいまし。ドラゴンが攻撃する際、的確に沙耶の弾丸が飛んで来てますでしょう? 沙耶のアシストが無ければ、あの2人もあのように自由に戦闘は行えませんわ」




「へー・・・やっぱ凄いんだな沙耶」




「しかし・・・やはり皆さんかなり修練を積んでますわね・・・。入学してしばらく経ちましたし、何より武活動での経験が生かされてると思いますわ。それに比べてわたくし達の武活ときら・・・」




キャロルは守をチラッと見てため息をつく。




「な・・・なんだよ。何か言いたいことあんのか」




「別に」




戦闘が終わり優香が教壇の前で言う。




「みなさん、戦闘の解説をしたい所ですが、今日は事前に通達していた通りグラウンドにて、対知龍型の対策訓練を行いますので、移動をお願い致します」






グラウンドに集合した1年生の前にドラゴンが、空よりゆっくり降下する。ドラゴンを初めて近くで見る生徒達はざわついていた。その頭部には小春が乗っており。地響きを鳴らし降り立つと、軽い身のこなしで生徒の前に降り立つ。




「はい。では本日、対知龍型の講師をして頂きます、ドラゴントレーナーの 有馬 小春 少将です。では有馬さん、後はよろしくお願い致します」




「みなさん始めまして有馬 小春です。本日は対知龍型の訓練を行います。他のドラゴンとは違い知龍型はちゃんと対策をしておかないと、隊の全滅を招きかねないので、この機会にしっかりと対策を会得してください」




「小春さんなんかキリッとしてるな。病院の時と大違いだな」




「当たり前ですわ。今回は対龍軍少将としてこの学校に来てますのよ」




「では、私が連れてきた花子ちゃんに、脳に影響を与える洗脳波を少しずつ出力を上げながら放出してもらいます。基礎対策は学校であらかじめ訓練済みでしょうから、可能な限り周囲に防波シールドを展開し耐えて下さい。周りの生徒が異変や奇行を行い始めたら、近くの生徒が何らかの方法で止めて、グラウンドに書いてある円の外側に出して下さい。そこには影響を与えないように調節してますので。では開始します」




ドラゴンは鋭い牙をを備えた大きな口を開き声を上げる。


今まで見てきた、どのドラゴンとも違う、唸りとも咆哮とも違う声を放つ。




(あれ・・・この声・・・?)




最初は何も起こらなかったが、次第にあちこちで生徒同士の小競り合いが始まった。


「どうなってんだよこれ・・・・」




「脳波を乱されて錯乱し始めているのですわ」




「お・・・向こうから大地と千里が走ってくるぞ」




「守君助けて~! 大地君が・・・おかしいの!」




「ウヒャヒャ! 千里~」




「うわっ! 大地どうした、気持ち悪いぞ!」




「やっぱり・・・最初の被害者は大地ですわね・・・まぁ当然ですわ」




キャロルはおかしくなった大地の襟首を掴み、そのまま線の外まで投げ飛ばす。




「あてて・・・あれ? 俺今まで何やって・・・」




「大地。洗脳波にあてられてた。」




いつの間にか横に座っていた沙耶が説明する。




「ちょっと沙耶! 何で貴方もう円の外に出てますの!? これは訓練ですのよ!」




「興味ない」




「まったく・・・自分勝手ですわね!」




そうしている間にもどんどん出力が上がっていく。




「知龍型の洗脳波は脳波に影響を与えるもので、その人の欲求を増幅させる効果がありますの。基本的な3大欲求に加えその人の持つ破壊衝動や自己承認など様々ですわ」




「はーっはっは! 俺より強い奴はおらんのか! 勝負じゃあ!」




「俺が相手になってやるぜ! かかって来やがれ!」




2人が激しくぶつかり合い、そのまま線の外までもみ合いながら転がり出て行った。




「籠手田聖 山田三四郎。あのお2人実力はありますが、洗脳波対策はからっきしですわね」




そう説明しているうちに千里の瞳が虚ろになり始め・・・そして、突然守に飛びつきそのまま馬乗りに押し倒してしまった。




「ななな・・・何やってんだよ千里!」




「えへへ~・・・守君・・・私ね・・・何かおかしくなっちゃってるみたい・・・いいでしょ・・・?」




そう言って守の腕を自分の豊かな胸に無理やり当てる。




「おい! 羨ましいぞ守! 待ってろ! 俺が代わってやる!」




沙耶が大地の服を引っ張り行かせようとしない。




「放せ沙耶! 俺は・・・俺は行かなくちゃならねぇんだ!」




「行っても貴方が狂うだけ」




「バカ! 大地てめぇ、絶対来るなよ!」




「そして一番出やすいのが性的欲求です・・・のっ!」




キャロルは千里の両脇を抱え線の外に投げ出す。




「助かったぜキャロル・・・」




立ち上がる守。




「ふんっ・・・これで・・・邪魔者は居なくなりましたわね」




「は?」




キャロルは守の手のひらをそっと自分の胸に押し付ける。




「あんな胸無駄に大きいだけですわ、わたくし・・・形には自信がありましてよ」




「何やってんだバカ! お前もやられてんじゃねーか!」




「何の事ですの? 私はただ・・・あなたの事が・・・」




顔を近づけるキャロル。


守には嗅ぎ覚えのある、いい香りが漂ってくる。




(こいつ・・・やっぱり近くでみると可愛い・・・)




『あーーー! あーーー!』




線の外で千里と大地が指を指しながら大声を出す。




「ってそんなわけあるかー!」




守はキャロルを脇に抱込み、線の外にそっと置いた。




「おい守! お前さっき本当にキスしようと思ったろ!」




「守君のエッチ!」




千里は冷たい視線を守をに睨みつける。




「さぁ? 何の事だ?」




「・・・わたくし・・・もしかして・・・」




キャロルが正気に戻る。




「いや・・・かすかに覚えていますわ・・・」




キャロルは思い出し顔が真っ赤になる。




「守! 貴方よくもわたくしの、むむむ胸を触りましたわね!?」




「俺のせいじゃ無ぇだろ!」




「これで2度目ですわよ! 許しませんわ!」




「え? 2度目?」




大地と千里はきょとんとする。




「違いますわ! あれは事故で・・・」




「続きは向こうでお聞かせ願いましょうか。キャロルさん」




「ですね」




ずるずると大地と千里に引きずられるキャロル。




「誤解ですわー!!!」




ピィィイイイイイ!


大きな笛の音が鳴る。




「はいっ。そこまで。ひぃ、ふぅ、みぃ・・・5人ですか。初めてにしては思ったより残りましたね。今年の1年生は優秀ね。残った5人は前へ」




「あれ? 終わったのか? 俺なんとも無かったぞ」




高校生には見えないほど小柄な男女2人と。


白髪の美しい女性。それに頭から猫のような耳の生えた長身の女性が、前へと集まってきた。




「あれ・・・君はあの時の。この学校の生徒だったの」




「お久しぶりです」




「君に効果が薄いのは当然ね・・・。さて皆さんよく頑張りました。皆様を集めた理由は忠告をするためです。」




「忠告ですか?」




「はい。知龍型の洗脳波に耐性がある者の多くは、脳の活性が高い傾向があります。レプリカコアでクラス2の洗脳波に耐えれる人はそうはいませんもの。しかし、それと同時に他人の脳波に影響を与え、自由に洗脳を行える可能性があるという事です。洗脳は全世界で大罪に指定されていますので、くれぐれも力の使い方を誤らないようお願い致します」




5人の中の1人が挙手をする。その男性は高校生とは思えないほど小柄だった




「僕は1年3組の大国おおくに つかさと申します。失礼を承知で闘頭戦とうとうせんをして頂けないでしょうか」




「ふ~ん。君、この私に洗脳勝負を挑もうってわけ?」




「はい。自分の実力を試したいのです」




「ちょっと司さん!? 何言ってるの? 失礼でしょ!? すみませんうちの司さんが・・・ほら謝って!」




隣に立っていた白髪の女性が、司の頭を下げさせようとするが、頑なに抵抗している。




「いいわ。いつでも入って来なさい」




「ちょっと・・・先生も乗らないで下さいよ!」




「では失礼して」




小春と見詰め合う司。


十秒ほどの沈黙のが流れる。


と・・・突然小春がパチーン! とウインクをした。




「オエェエエ」




同時に司がその場に嘔吐してしまった。


慌てて白髪の女性が駆け寄る。




「ちょっと!? 先生のウインクで吐くなんて! 年齢的にきつかったけど、失礼よ!」




「そっちの方が失礼ですけど!?」




司に駆け寄る銀髪の女性。




「心配要らないよたえ。少し揺らされただけさ」



「少しかかりましたわ! まったく・・・汚いですね貴方!」




近くに立っていた、これまた小柄な女性が激怒する。




「こうなるって分かってて、挑んでんだもんな~バカだよねぇ~」




「この駄猫! 無駄口叩いて無いで、さっさと拭きなさいよ!」




「にゃ!? 畏まりました~」 




ひとしきり吐いた後、口を開く。




「流石です。ありがとうございました」




「ちょっとびっくりしたわ。正直、貴方の力は私のより上。この差はコアの性能の差よ。その力、正しく使って下さいね」




「安心してください! 司が悪い事しようとしたら、私がちゃ~んと止めますから! なんたって私は【はく】の一族なんですから!」




ドンっと自信満々に胸を叩く妙。




「分かっているとは思いますが、決してこいつの頭の中に、入ろうとしないで下さいね。記憶が消えてしましますよ」




勢い良く首を左右に振る小春。




「うわっ・・・白かよ・・・ヤッベー奴もいたもんだ」




「貴方より使えますわ。この駄猫」




「ご主人~・・・」




「さ・・・この授業はこれでおしまいよ! みなさん精進して下さいね」




ピィイイイィ!と笛を鳴らし生徒を集める小春。




「ではこれにて解散します!みなさんお疲れ様でした!」




続々と教室に戻る学生達。


その中で守は1人花子の所に歩いていった。


それを見つけて追いかけるキャロル。




「まーもーるー! あんたねぇ・・・って何してますの?」




「ちょっと気になる事があってな・・・クウゥルルル・・・違うな・・・キュロロロ・・・これも違う・・・」




「ちょっと守君? 一体何やって・・・」




「キュルルルル・・・! これだ!」




その様子を見て小春が近づいて来る。




「まさか貴方・・・話せるの!?」




その音を聞いた花子は、顔を守に近づけて頬ずりをしてきた。




「いや・・・話せはしませんが・・・何となく・・・ほんとうに何となく、分かるような気がします」




「じゃ・・・じゃあ・・・この子が何言ってるかわかる?」




「キュルルルル」




「えっと・・・イ・・・ケ・・・メン? イケメン!? こいつ俺の事イケメンって言ってます!」




「そんな・・・あり得ませんわーーー」




「正解よ!」




「なんですってー!?」




「と・・・言っても、私も長い事一緒に居て、なんとなく分かる程度で、言葉には変換出来ないけど大体合ってるわ」




「守が・・・イケメン・・・ありえません・・・」




「そっちに驚いてたのかよキャロル・・・」




「おーいどうしたー?」




大地と千里が走って来る。




「ちょっと小春さん・・・俺の正体は学生ではこいつしか知らないんです」




「なるほどね・・・わかったわ」




「っておおい! 守ドラゴンに懐かれてるじゃねぇか! すげぇな!」




「ひっ・・・やっぱ近くで見ると・・・怖い・・・」




「心配すんな・・・花子は優しい奴だよ。俺の事イケメンって言ってたし」




「花子お前見る目無ぇな! あっはっは!」




花子をバシバシと叩く大地。


花子はその大きな瞳で大地を睨みつける。




「ヒッ」




「はいはいそこまでよ。次の授業始まっちゃうから教室に戻りなさい!」




「はーい。又な~花子~!」




「キュルルルル!」




「守君。ちょっと来て」




小春に呼び止められる。




「何ですか?」



そして耳元で囁いた。




「ねぇ守君・・・やっぱり・・・お姉さんに貴方を調教させてくれないかしら・・・?」




小春は舌なめずりしながら守を見る。




「遠慮しておきます!」




「そんなぁ~!」




守は慌ててその場から逃げ出した。

















































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