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「誰か居ませんかー!」




守はドラゴンの足元近くで、隠れながら救出作業を行っていた。


ズゥウウンと近くにドラゴンの足が降り、地響きが鳴る。




「うおっ危ねぇ! ・・・この足思いっきり殴ったらダメージ与えられるんじゃ・・・イテッ!」




離れたビルの上から威力の調整された銃撃が守の頭に命中した。

その屋上からキャロルが睨みを利かせている。




「あいつ心読んでんじゃねぇだろうな・・・へいへいわーったよ。つーか大体避難して・・・一目散に逃げて残ってる奴なんか・・・」




「おかーさん!おとーさーん・・・うわぁあああああん」




車の近くに少女が車に座り込んで泣いている。




「おい! どうした!? ここは危ないから早くこっちへ!」




腕を引っ張るが動こうとしない。良く見ると車の中に両親であろう、2人が足を挟まれて気絶している。




「お兄さん! お父さんとお母さんを助けて下さい! お願いします!」




守の服にしがみついて少女は懇願する。




(車を動かして救出して3人を抱えて・・・いや・・・無理だまずはこの少女だけでも・・・)




「後で必ず助けるから、まずは君だけでも!」




「嫌! 絶対嫌!」




少女は車の中の両親にしがみ付いて頑なに動こうとしない。




「こうなったら無理やりにでもーーー」




そう思った矢先ドラゴンの足が車に向かって降りてくる。




(このままじゃみんな死んじまう・・・!)




守は咄嗟に力を解放し足を受け止める。




「うおおおぉおお!」




「しまった! 守まで気が回りませんでしたわ・・・! 守と・・・少女はーーー」




少女は閉じていた目を開き上を見上げる。そこには半人半龍と化した守が足を受け止めていた。




「早く・・・逃げろって!」




守は細くなった瞳で少女を見る。




「嫌だ! 絶対に離れない!」




少女は足元にしがみつく。




(ちくしょう・・・どうしたら・・・)




「・・・お父さんとお母さん。それに兄さんを・・・・いじめないで・・・」




下を向いていた少女が小さく呟いたその瞬間、周りに止まってた車や瓦礫が少しずつ浮き始め空中に静止する。




「いじめないでーーーー!」




その声と同時に浮遊していた物体がドラゴンめがけてものすごいスピードで次々と衝突する。




「あの子・・・! もしかして守のコアに共鳴してますの!?・・・念動力・・・いや、超念動クラス!?」




「おいコロ! 今のあの少女か!?」




「みたいね・・・今は目の前に集中しなさいよね! 仁!」




「あんな少女がねぇ・・・おじさん羨ましいなぁ! はっはっは」




ドラゴンは次々に飛来する瓦礫などに押され後ろに倒れ込む



「い・・・今の・・・君がやったのか?」




少女は守の問いかけに答えずドラゴンを睨みつけ息を荒げていた。




(そんな事より車の2人をーーー)




守は車のドアを破壊し、中の2人を引きずり出し、その場に座り少女に背中を差し出す。



「早く背中に乗って!!」




ドラゴンが立ち上がり守に火球を放つが、キャロルが即座にそれを打ち起動をずらす巻きあがる砂埃の中、キャロルは無事に立ち去る守達を確認し胸を撫で下ろす。しかし、ドラゴンは即座に油断したキャロルに火球を放つ。






「しまっーーーーー!」




放たれた火球はキャロルの横を通り過ぎ、後ろのビルに命中する。




「火球が逸れた!?」




火球を放ったドラゴンが唸りを上げている。その目からは血が流れ落ちている。




『大地! でかしましたわ! 褒めて差し上げますわ』




『俺にも肉食わせてくれよな!』




『その弾丸1発1万円ですわよ! 肉代と差し引きでよろしくて?』




『ごめんなさい! ごめんなさい!』




よほど腹が立ったのか、火球を連続して大地のいるビルへと放つ。


1・2発はキャロルが打ち落としたが、残りがすべて大地のいるビル屋上に命中しビルの上半分が吹き飛んでしまった。




『大地!? ちょっと大地返事して!』



キャロルが慌てて心伝術で呼びかけるが応答が無い。




「大地君!? キャロルちゃん! 大地君は無事なの!?」




「あのスーツを着ていれば無事ですわ。それより集中して下さいまし」




『守! 大地がやられましたわ! そこらへんに落ちてるはずですから至急救助をお願い致しますわ!』




(遅い・・・遅いですわ・・・もう20分は経っているはずですわ一体どうなってますの・・・!)




荒ぶる戦龍型に徐々に押され始める。善戦していた鉄延も爪に捕らえられ、ビルに激突し通信が途絶えた。犬神ペアも満身創痍の状態で粘ってはいたが、摑まりそうになったコロを庇って仁が負傷し、続けてコロも戦闘不能になってしまった。




(もう25分以上・・・こっちの戦力はもう・・・)




「キャロルちゃん・・・私が・・・」




「バカな事言わないで下さいまし! 来ますわよ!」




ドラゴンは最後に残ったキャロル達に連続して火球を放ってきた。


キャロルは連続で打ち落とす。しかし、力及ばず火球がキャロル達を襲う。




「間に合いません! シールドを張りますわ! 衝撃に備えてーーー!」




何とか張ったシールドに直撃し、キャロルと千里は吹き飛ぶ。




「キャロル! 千里!」




守は運んでいた少女達を少し離れた安全な場所に降ろし、すぐさまキャロルの飛んだ方向へと走り出す。




(みんな・・・避難は完了したようですわね・・・我々の出来る限りは致しましたわ・・・これは・・・私の意地ですわ!)




後方に吹き飛びながら銃を構え、温存していた自分の魔力を注ぎ込み狙いを定め放った。


その一撃は見事残った片目に命中し両目を潰す事に成功する。




(最後に・・・千里だけは・・・)




キャロルが指を鳴らすと、千里はクッションのようなものに包まれゆっくりと地面に降りた。


キャロルはそのまま地面に向かって猛スピードで激突しそうになる・・・が、やわらかい白い雪がキャロルを包み込んだ。




キャロルの所にたどり着いた守。


そこには雪に埋もれたキャロルと、少し離れた場所に千里が倒れ込んでいた。




「おい! 大丈夫かよキャロル!」




近くに立っていた女性が守に声を掛ける。




「2人共ただの気絶だ。外傷は大した事は無い」




「貴方は・・・氷雪生徒会長・・・!?」




「たったこれだけの戦力でよく持ちこたな。あとは私に任せて。貴方はその2人をなるべく遠くに運んでくれ。巻き込まれるよ」




守は言われた通りに2人を運ぶ。




旋風の周りに冷気が立ち込め始める。


次第に辺りに風が起き始めドラゴンを包み込んだ。




旋風が右腕を勢い良く上に掲げると同時に冷気が爆発的に発生し一瞬の内にドラゴンは氷像と化した。


遠くから見ていた守はその力に驚愕する。




「マジかよ・・・何だよあの力」




一仕事終えた旋風は、くしゅん!っと小さいくしゃみをしたあと鼻水をたらし肩をさすりながら寒そうにしている。




「・・・しゃむい」




守は近寄り旋風に自分の制服を差し出す。




「ありがとうございました。寒いんでしょう?使って下さい」




少し驚いたあと制服を受け取る。




「ありがとう・・・所で君のその顔・・・神付きか何かの能力?」




「あ・・・ああ・・・そうなんですよ~。あはは~・・・」




守は集中し人間の顔に整えた。



旋風は不思議に思いながらも守に言う。




「さ・・・負傷者の救出する。手伝ってくれ」




この後、続々と救援が到着し、このイレギュラークラス3戦龍型出現の事態は収束を向かえた。


戦闘に参加し負傷した者達は、軍衛生部の管轄する軍病院に運ばれ検査入院をする事となった。





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