数日、事件をひとりで密かに調べている内に、
この【怪異】が起こっているのは西区のみ。
なにか理由があるのか。
ずっと出していなかった休暇届を出した時、その理由を
今日もずっと西区を探索していた。日も暮れ始め、また夜がやって来る。そんな頃に。偶然にも目にした人物。
(あれは····
中年の、なんの特徴もないどこにでもいそうな男。皆が彼のことを知っているが、誰も彼のことを知らない。いるのにいない。いたかもしれないしいなかったかもしれない。そんな、陽炎のような男。
しかし
(
裏路地に入っていく
よく視れば、彼女の肩には
(····あれは、精霊? あの子はいったいどこの道士なんだ?)
精霊を連れている道士など今まで会ったことがない。神仙ならともかく、普通の道士が精霊を使役するなど聞いたこともなかったし、周りにもそんな道士はいない。
「俺は色んな機関を渡り歩く役目を担っているが、今回はなかなかに奇妙。お嬢ちゃんひとりで解決するには荷が重いんじゃないか?」
「十年前····部分的に欠損した遺体····そして、どちらも生前に血が抜かれていたこと····王宮の道士たちは、なぜこの件をうやむやにして手を引こうとしているのか、」
少女が呟いた言葉に、
今回の件に関しては確かにこのような状況になっているが、この国で起こる【怪異】が起こす事件の大半を解決しているのは、天師府の道士たちだった。中には厄介なものもあり、解決できずに終わる事もあったが····。
ほとんどの道士たちは、復讐のために属している自分とは違い、己の命も顧みずに【怪異】を滅するために戦っている。
「この辺り一帯に結界を張ります。今夜はなにがあってもけして外に出ないよう、皆さんに伝えてください。それが守れなければ、命の保証はないと」
そんなことを考えていた
(彼女について行ってみるか····)
どうやら少女も大通りの方へと向かうようだ。
少女は淡々と歩を進める。道中、少女が投げる符をあの
距離を取りながら様子を窺う。薄暗闇になってきた頃、事は動き出す。
上空に黒い靄が渦巻き、なにかが降ってくるのが見えた。
高い所から落下し、拉げているその姿に
次々に目の前で起こっている尋常ではない光景に、
あの陣はいったいなんだ?
見たこともないその陣は、南斗六星をなぞる様に繋がっていきやがて陣となった。流派によって独自に考案される陣もあるが、あんな強力な陣は初めて見た。神仙が使う大掛かりな陣。あの精霊といい、彼女の師はまさか本当に神仙だとでも?
この辺り一帯の穢れが一瞬にして消えた。
どれだけの霊力を使えばあんなことができる?
桁外れの力を見せつけられ、
そんな笑みが消えたのはすぐ後。少女から少し離れた場所で横たわっていた女の骸が、ゆらりと立ち上がったのだ。少女はそれに気付いておらず、目を閉じたまま身体を休めているようだった。先に気付いたあの精霊が対峙しようとしたが、一瞬にして距離を縮めてきた骸に蹴飛ばされてしまう。
(まずい····!)
音が消えたかのように「しん」と静まりかえった、大通りの真ん中で。
腕の中の少女はぐったりとしていて、咄嗟に抱き上げたせいか違和感があった。落としてはいけないと思い、抱き直すように腕の位置をずらす。
そして少女に負担がかからないように肩をしっかり抱いて、壊れ物にでも触れるかのようにそっと自分の方へと寄せた。
✿〜おしらせ〜✿
憂炎視点では暁玲を『少女』と認識しているため、誤字ではありません。序盤のすれ違っているふたりの認識をお楽しみください♪
雪『ボクの相棒の暁玲は超絶可愛くて見た目美少女だけど、ちゃんと男の子だよ ʕ•̀ω•́ʔ✧きゅ!』
暁「誰と話しているんです、雪玉?」
雪『きゅ〜♡』
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