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第43話 アイテムで強化

「まずはこれ」


 我は用意していたアイテムを机の上におく。見た目は……イガ栗に似ているだろうか。黒色の球体に無数のトゲがついている。


「ゲルガーってやつから盗れたアイテムだね?」

「そうだね」


 クーリアの確認に肯定を返す。


 これはクラン員が例の幻魔から奪ったアイテムだ。7度の【盗む】で奪えたのは全てこのイガ栗もどき。【一か八か】を使ったあと盗んだというので、おそらくはレア枠だ。


「それで、これは何なんなのよ?」

「幻魔のコアだって」


 ミスルに急かされて端的に答えると、みな一斉に顔をしかめた。


「幻魔の名のつくアイテムですか……」

「やばいもんじゃないだろうね?」

「集めたらアイツが復活するとかじゃないでしょうね! そんなの嫌よ!」


 それは我も嫌だ。だが、それなら7つ集めた時点で復活してるだろう、きっと。


「大層な名前がついてるけど、単純なマナの結晶体みたいだよ。まぁ、魔石みたいなものだよ」

「ふぅん?」


 ミスルがぴょんと机に飛び乗って、コアをツンツン突く。そのあと、何を思ったか、いきなりコアを蹴飛ばした。


「うわ、ちょっと!?」

「痛いわ!?」

「そりゃ、そうでしょ」


 トゲがあるのだから、蹴れば痛いに決まっている。


「まったく、何やってるの」


 蹴られたコアは壁にぶつかって床に転がっている。拾って確認してみるが、特に壊れてはいないようだ。トゲにも折れた様子はない。


 ミスルは片足を抱えてぴょんぴょん跳びながら、言い訳した。


「確認よ、確認。もしかしたら、アイツの意思とか宿ってるかもしれないでしょ」

「だからって蹴ることないでしょ。床にでも落とせばいいのに」

「それだわ! 残りも試しましょう!」


 我が解析したのだ。そのような確認は不要である。しかし、ミスルが不安そうにしているので、とりあえず残り6つについても床に落としたみた。


 結果は変わらず。突然暴れ出したりはしなかった。


「ね。特におかしなところはないでしょ? 魔石と変わらないんだって」

「そうみたいね。それはそれで、がっかりだけど! 苦労に見合った価値がないわね」

「苦労したっけ?」

「そういえば、そんなことなかったわ!」


 状態異常攻撃を無効化されたりと、厄介な印象はある。だが、こちらはブレイブエレメントによる憑依強化で一蹴してしまったので、苦労したかと言われれば微妙だ。最後は我らではなくクラン員たちが仕留めたわけだしな。


「あの子たちはガッカリするかもね。すごいアイテムかもって喜んでたから」

「ゲルガーを倒しただけでも大手柄なんだから、アイテムの価値なんておまけみたいなものだよ」

「まぁ、そうだね。そう言っておくよ」


 うむ。さすがは実務部長。面倒見が良いな。


「結局、これはどうするんですか?」

「うーん。買い取ってもらうにしても、大した値段はつかないと思うし、クランで使えばいいんじゃないかな」


 魔道具職人が作った魔導具には魔石を燃料として使うものも多い。魔導コンロとかな。我がクランにもいくつかあるので、それに使えばよかろう。


「で、次はグレドから盗んだヤツ」


 青と緑。2種類のクリスタルだ。


「青いのがレベルクリスタルで、緑のが能力クリスタルだよ」

「そのままのネーミングね!」

「僕がつけたわけじゃないからね」


 レベルクリスタルを盗むとレベルが下がり、能力クリスタルを盗むと各能力のいずれかが下がった。ミスルが指摘しているのは、そのことであろう。


「使い道はあるのかい?」

「もちろん。レベルクリスタルを砕くと、レベルが1上がるよ。能力クリスタルはランダムな能力が1から3上がる」

「本当かい!? それを集めれば……って人から盗まなきゃ駄目だったね」


 クーリアが興奮した様子で立ち上がり、すぐに座り込んだ。魔物から盗めるのであれば取り放題だったのだが、人間相手にやるわけにはいかないからな。グレドのような外道ならばともかく。


 まぁ、実のところ、大量に集める意味はあまりない。


「強力だけど、無制限に使えるわけじゃないんだ。ある程度のところで上昇が制限されてるみたい」


 我の解析によればレベル、能力値ともにクリスタルで上げられるのは30までだ。レベルはともかく、能力に関しては我にとってほとんど意味がない。幸運以外は30を超えているからな。


「それでも十分すごいですよ!」

「そうだね。それ以上をねだるのは贅沢ってものさ」


 まぁそうだな。弱体化する前のグレドさえレベルは31。能力値も高いもので30を超えたくらいだった。幹部たちの能力はそこまで到達していないので、3人用と考えれば悪くない。


 クリスタルの数は青が23、緑が38ある。とりあえず、レベルクリスタルのほうは保留だ。能力クリスタルを使ってみるとしよう。



 まず、我が能力クリスタルを3つ使用した。最初の2回は幸運が上がり、3度目は何も上がらなかった。


 どうやら、30未満の能力がある場合、それらのみを候補として能力上昇の抽選が行われるようだ。全ての能力が30以上ならば、クリスタルが砕けるだけで効果は得られないらしい。


――――

レベル:3

生 命:70

マ ナ:33

腕 力:37

魔 力:32

体 力:35

精 神:32

敏 捷:34

幸 運:32 [↑ 5]


残りSP:2

――――


 30未満の能力があればクリスタルが無駄になることはなさそうだ。というわけで、残りは3人で均等に分けた。1つ足りない分はクーリアが引いたので、ミスル、メイベルが12個、クーリアが11個だ。


――――

ミスル

職業加護:首刈り戦士

レベル:3

生 命:35 [↑ 6] 

マ ナ:21 [↑ 8]

腕 力:24 [↑ 7]

魔 力:20 [↑ 7]

体 力:17 [↑ 3]

精 神:12 [↑ 2]

敏 捷:22 [↑ 3]

幸 運:20 [↑ 5]

――――

メイベル

職業加護:騎士

レベル:3

生 命:31 [↑ 8]

マ ナ:10 [↑ 3]

腕 力:28 [↑ 6]

魔 力:16 [↑ 6]  

体 力:20 [↑ 4]

精 神:15 [↑ 2]

敏 捷:23 [↑ 4]

幸 運:17 [↑ 5]

――――

クーリア

職業加護:復讐者

レベル:22

生 命:207 [↑35]

マ ナ:167 [↑34]

腕 力:31  [↑ 8]

魔 力:29  [↑ 6]  

体 力:18  [↑ 3]

精 神:19  [↑ 1]

敏 捷:25  [↑ 2]

幸 運:18  [↑ 7]

――――


 ふむ。3人ともそれなりに強くなったのではないか? まぁ、我にはまだまだ及ばんがな。

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