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第23話 カラオケ①

 日が落ちる前に俺とリセは水原の家を後にした。


「ねぇ、ヒロ」


 エントランスを抜けると、リセが声をかけてきた。


「なんだ?」


「水原先輩のこと、気になってる?」


「それは……」


 答えに詰まる。


 確かに気になっている。けれど、それは単なる心配以上の感情なのか。自分でもよく分からない。


「私ね」


 リセは一度立ち止まり、空を見上げる。


「水原先輩のこと、少し分かった気がする」


「そうか」


「うん。でも」


 リセの声が少し震える。


「だからこそ、私……」


 その言葉は途中で途切れた。


 俺は何も言えず、ただリセの横顔を見つめる。


 彼女の瞳に、複雑な感情が揺れているのが見えた。


 日が落ちる前に俺とリセは水原の家を後にした。


「ねぇ、ヒロ」


 エントランスを抜けると、リセが声をかけてきた。


「なんだ?」


「水原先輩のこと、気になってる?」


「それは……」


 答えに詰まる。


 確かに気になっている。けれど、それは単なる心配以上の感情なのか。自分でもよく分からない。


「私ね」


 リセは一度立ち止まり、空を見上げる。


「水原先輩のこと、少し分かった気がする」


「そうか」


「うん。でも」


 リセの声が少し震える。


「だからこそ、私……」


 その言葉は途中で途切れた。


 俺は何も言えず、ただリセの横顔を見つめる。


 彼女の瞳に、複雑な感情が揺れているのが見えた。


 翌朝。


 いつも通りの時間に家を出ると、リセが待っていた。


「おはよう、ヒロ」


 いつもの明るい声。だが、昨日の帰り道でのあの言いかけた言葉が気になる。


「ああ」


 俺が返事をすると、後ろから別の声が聞こえた。


「おっはよー!」


 振り返ると、水原が手を振りながら近づいてくる。昨日の重苦しい空気が嘘のように、明るい表情だ。


「あ」


 リセが小さく声を上げる。三人で登校することになるとは思っていなかったのだろう。


「リセちゃんも、おはよ!」


 水原は自然な笑顔でリセに話しかける。昨日の家での会話以来、二人の間の空気は少し変わっていた。


「おはようございます」


 リセも柔らかく微笑み返す。


 三人で並んで歩き始めたものの、妙な緊張感が漂う。お互いの距離感を探り合っているような、そんな空気だ。


「あのさ」


「えっと」


 水原とリセが同時に口を開いて、気まずそうに視線を合わせる。


「リセちゃんから、どうぞ」


「い、いえ、水原先輩が」


「お前ら……」


 俺が呆れたように声を上げると、二人は顔を見合わせて、くすりと笑った。


「なんか、おかしいよね。こうやって三人で歩くの」


 水原が言う。


「でも、悪くないかも」


「そうですね」


 リセも頷く。


「ねぇ、放課後、カラオケでも行かない?」


 水原が突然提案する。


「カラオケ?」


「うん。みんなでいろんな話もしたいし。……いいでしょ?」


 少し不安げに俺とリセを見る水原。その表情には、昨日の弱さは見えない。本当に前を向こうとしているのが分かった。


「私は……」


 リセは一瞬迷ったような表情を見せたが、


「行きます。私も、ちゃんと話したいこと、ありますから」


 はっきりとした口調で答えた。


「じゃあ決まりね! 川崎くんも来るでしょ?」


「ああ」


 俺は軽く頷く。正直、この展開は想定外だった。けれど、三人でちゃんと向き合うには、こういう機会も必要なのかもしれない。

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