日が落ちる前に俺とリセは水原の家を後にした。
「ねぇ、ヒロ」
エントランスを抜けると、リセが声をかけてきた。
「なんだ?」
「水原先輩のこと、気になってる?」
「それは……」
答えに詰まる。
確かに気になっている。けれど、それは単なる心配以上の感情なのか。自分でもよく分からない。
「私ね」
リセは一度立ち止まり、空を見上げる。
「水原先輩のこと、少し分かった気がする」
「そうか」
「うん。でも」
リセの声が少し震える。
「だからこそ、私……」
その言葉は途中で途切れた。
俺は何も言えず、ただリセの横顔を見つめる。
彼女の瞳に、複雑な感情が揺れているのが見えた。
日が落ちる前に俺とリセは水原の家を後にした。
「ねぇ、ヒロ」
エントランスを抜けると、リセが声をかけてきた。
「なんだ?」
「水原先輩のこと、気になってる?」
「それは……」
答えに詰まる。
確かに気になっている。けれど、それは単なる心配以上の感情なのか。自分でもよく分からない。
「私ね」
リセは一度立ち止まり、空を見上げる。
「水原先輩のこと、少し分かった気がする」
「そうか」
「うん。でも」
リセの声が少し震える。
「だからこそ、私……」
その言葉は途中で途切れた。
俺は何も言えず、ただリセの横顔を見つめる。
彼女の瞳に、複雑な感情が揺れているのが見えた。
翌朝。
いつも通りの時間に家を出ると、リセが待っていた。
「おはよう、ヒロ」
いつもの明るい声。だが、昨日の帰り道でのあの言いかけた言葉が気になる。
「ああ」
俺が返事をすると、後ろから別の声が聞こえた。
「おっはよー!」
振り返ると、水原が手を振りながら近づいてくる。昨日の重苦しい空気が嘘のように、明るい表情だ。
「あ」
リセが小さく声を上げる。三人で登校することになるとは思っていなかったのだろう。
「リセちゃんも、おはよ!」
水原は自然な笑顔でリセに話しかける。昨日の家での会話以来、二人の間の空気は少し変わっていた。
「おはようございます」
リセも柔らかく微笑み返す。
三人で並んで歩き始めたものの、妙な緊張感が漂う。お互いの距離感を探り合っているような、そんな空気だ。
「あのさ」
「えっと」
水原とリセが同時に口を開いて、気まずそうに視線を合わせる。
「リセちゃんから、どうぞ」
「い、いえ、水原先輩が」
「お前ら……」
俺が呆れたように声を上げると、二人は顔を見合わせて、くすりと笑った。
「なんか、おかしいよね。こうやって三人で歩くの」
水原が言う。
「でも、悪くないかも」
「そうですね」
リセも頷く。
「ねぇ、放課後、カラオケでも行かない?」
水原が突然提案する。
「カラオケ?」
「うん。みんなでいろんな話もしたいし。……いいでしょ?」
少し不安げに俺とリセを見る水原。その表情には、昨日の弱さは見えない。本当に前を向こうとしているのが分かった。
「私は……」
リセは一瞬迷ったような表情を見せたが、
「行きます。私も、ちゃんと話したいこと、ありますから」
はっきりとした口調で答えた。
「じゃあ決まりね! 川崎くんも来るでしょ?」
「ああ」
俺は軽く頷く。正直、この展開は想定外だった。けれど、三人でちゃんと向き合うには、こういう機会も必要なのかもしれない。