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第7話 幼馴染と遊んでいる最中に・・・①

 土曜日。リセと映画に行く日がやってきた。

 天気は快晴、待ち合わせ場所の駅前には既にリセの姿があった。


「おはよう、ヒロ」


「悪い、待ったか?」


「ううん、今来たとこ」


 リセは微笑を湛えながら、俺の腕を軽く引っ張る。

 俺たちは予定通り映画館に向かった。映画館に到着し、リセがチケット売り場で上映スケジュールを確認する。


「これ観よ」


 リセが指さしたポスターを見て、俺の胸がざわついた。

 奇しくも昨日、水原と一緒に観た映画だったからだ。


「……この映画?」


「うん。評判いいって聞いたから」


 リセの顔を見て、昨日、水原と観たことを正直に話すべきか迷った。


「ヒロ?」


「いや、なんでもない。じゃあこれ観るか」


 俺は努めて平静を装いながら言った。


 映画が始まる。既に一度観たストーリーがスクリーンに映し出される中、俺は横目でリセの反応を窺う。

 リセは時折驚いたり、笑ったりしながら映画を楽しんでいるようだった。だが、俺の心は落ち着かない。


(この展開、もう知ってるな……)


 胸の奥に違和感が広がる。リセと共有すべき初めての時間が、実はもう水原と過ごしたものだという事実に、妙な罪悪感を覚える。


 そして物語がクライマックスを迎えたとき、リセがぽつりと呟いた。


「なんかヒロ、この結末知ってたみたいな顔してる……」


 俺は思わず息を呑む。


「……そんなことないだろ」


「ほんとに?」


「てか映画中で喋るなよ」


「ん」


 リセはいたずらっぽく俺を見つめた。


 映画が終わり、劇場を出るとリセが言った。


「楽しかった。でもヒロ、なんか様子が変だった」


 俺は観念して素直に白状することにした。


「悪い。実は……この映画、水原と先に観てたんだ」


 リセの表情が一瞬だけ曇る。だがすぐにいつもの表情に戻って。


「どうして観る前に言ってくれなかったの?」


「リセが楽しみにしてたから……言いだしにくくて」


「言ってくれれば別の映画でもよかったのに」


 その言葉に、俺は胸を締め付けられるような思いがした。リセの優しさと、自分の中途半端さが際立って嫌悪感に苛まれた。ったく、何してんだかな俺。



 映画館を出た俺たちは、近くのカフェに向かった。

 リセが「あそこのケーキが美味しいみたいだから」と言うので、俺は素直に彼女の提案に乗った。


 カフェは休日らしく混んでいたが、窓際の席が空いていてすぐに案内された。

 メニューを開き、ケーキとドリンクを頼む。と、ふと入り口の方で見覚えのある顔が目に入った。


(あれは……)


 俺が視線を止めた相手は、水原の元彼だった。確か名前は、白野晴人だったか。

 気づかれないことを祈ったが、彼は俺に気づき、驚いた顔で近づいてくる。


「お前……!」


 俺は内心、焦りを覚えながら平静を装う。


「久しぶりだな」


 リセが不思議そうに俺と白野を交互に見つめる。


「ヒロ、この人は?」


「まぁ、ちょっと……」と誤魔化そうとしたが、白野は俺の言葉を遮った。


「どういうことかな? 君はしおりと付き合ってるんじゃなかったの?」


 その言葉が空気を一変させた。

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