「……で、なんだっけ?ソロ討伐特典?」
加速度的に効果時間が増えていった『鳥継』も消え、ポーションによって減ってHPなどを回復した後に漸く私は流れたログの精査に取り掛かった。
と言っても大半はゲリ、フレキ戦と同じ内容のもの。
ボスのスキルを得られるアイテムが手に入る『無尽食 撃破報酬』に、攻略した証である記念称号、そして『ライオット草原』の先にあるであろう第二拠点『ヘロミア』の解放だ。
だが違う点が一つだけ存在している。
ソロ討伐特典。
その言葉の意味を理解していないわけでもはない。恐らくは言葉そのまま、特に深く考える必要もなく、ソロでボスを攻略できたから貰えたものだろう。
しかしながら、そんな特典が入手出来るなんて話はクリスから聞いたことがない。
ボス関係の話は基本的にゲリ、フレキと戦う前に聞いているし、そんな物があるならば彼女はそれとなく教えてくれるはずだからだ。
「……つまりこれも製品版からの追加要素って所かな」
そう考えるが妥当だろうし、私以外にもこの情報を得ているプレイヤーは絶対に居るだろう。
ということは、少し待てば出回る程度の情報だ。
私としては後でクリス辺りに伝える程度で良いだろう。
インベントリ内から取り出してみると、ゲリ達の撃破報酬と同じように木製の小さな箱が出現する。
軽く指先で触れてみれば、半透明のウィンドウが出現した。
複数の素材らしき名前とチェックマーク、そして獲得するという簡易的なボタンがつけられたそれに少し頰を緩めてしまう。
「成程、成程……良いねこれ。丁度いいしこの中から選んだ物を防具にでもしてみようか」
中には、私が龍状態のピアサに対して攻勢に出るきっかけとなった赤の羽根……『無尽食の赤羽根』という物もある。
それ以外にも、例えば私が持っているような『首狩兎の赤目』に似た『無尽食の鳥目』だったりとピアサの素材ならば何でも1種類は手に入るようだった。
その中でも私は、ピアサの羽毛を探す。
防具にするのであれば、羽根などではなく。皮膚の方が使い勝手も、使える面積も大きいからだ。
しかしながら、それらしいものはない。
一応『無尽食の鳥皮』という素材もあるものの、これは恐らく素材というよりは食材と言われる類のものだろう。
「というか、龍側の素材が目しか無いのは……うん、仕様かな」
今回、ピアサが龍化したのは頭のみ。
恐らく、真正面から私のような戦い方をしなければ、次第に全身が龍となり苦戦を強いられていたのだろうが、私はそれをせず。
背中に上がってその身を食らい続けHPを消費させたのだ。
だからこそ、変わったとしてもそれは内部の肉や内臓のみ。
それもそれで私が食らってしまったのだから、無いのは当然。
寧ろ、ここまで貰える素材が多い方を驚くべきなんだろうか。
兎に角。
仕方がなく『無尽食の鳥皮』を獲得し、インベントリの中に入ったそれを取り出してみると。
思っていたよりもしっかりとした皮が私の手の上に出現した。
サイズ的には中々に大きく、私が包まろうと思えば包まる事が出来る程度の大きさだ。
3色の羽根が生えていた時とは違い、白いその皮は少し引っ張った程度ではびくともしない。
戦闘中のあの柔さはなんだったのかと思うものの、これならば上手く加工されれば防具には使えそうだ。
「とりあえず、今回はこれで良し。足りなくなったらまた来ればいいし……よし。影狼おいで」
近くにあった骨の小山を興味深そうに嗅いでいた影狼を自身の近くへと呼び戻し、私は視線を『ライオット草原』の奥……第二拠点『ヘロミア』へと繋がるであろう道へと向けた。
『ダーギリ森林』の時とは違い、そこには既に次のエリアの様相が見えている。
枯れ野だ。
初期拠点側はピアサによって生態系が荒らされていたものの、植物は生育している世界があった。
しかしながら、今から私が向かおうとしている方向は草原というには生きている植物の姿を見つける事が出来なかった。
全てが全て枯れている。
茶色に変色してしまっているそれらは、恐らく既に生きてはおらず死の大地と言われても仕方ない光景が広がっていた。
「じゃあ行こうか。『ヘロミア』ってのがどんな場所かは分からないけど……まぁこんな枯れ野にある拠点さ。雰囲気くらいは良いだろうさ」
隣の影狼と共に枯れ野を進んでいくと、木造の建築物が見えてくる。
それは西部劇に出てくるような……ウェスタンスタイルとでも言えばいいのだろうか。
油断すればカウボーイが出てきそうな、映画の中で出てきそうなその街の前まで辿り着くと、街の方から2人の男が歩いてきた。
その姿は保安官のようでいて、しかしながら腰には直剣を下げたリアルとファンタジーの混合している様相を表している。
「お嬢さん。見ない顔だが、この全てが終わった街ヘロミアに何の用だ?」
「あぁ、一応言うなら観光かな?変なものは包丁くらいしか持ってないけど、調べるかい?」
「おう」
保安官の内、1人が私に近づいてきて身体に触れる。
恐らく私が許したから触れられているのだろうが、それ以外の場合は以前イロハでやったように見るだけでも問題は無いのだろう。
私の身体検査はすぐに終わり、保安官達は少し話した後に私が街に入る許可を出してくれる。
それに礼を言った後に、私は晴れてヘロミアへと侵入することが出来た。
感想としては、街に入る前と大差ない。
しかしながら、イロハに比べるとやはり活気が無いとしか言いようがなかった。
まず表を歩いている人が少ないのだ。歩いていても普通とは言い難く、保安官やいかにもごろつきですと言った風体だったりと治安も良さそうには見えない。
では、他は?と言えば……案外普通であるのが少しだけ納得がいかない。
試しに入ってみた酒場は、入った瞬間だけ中に居る客に見られたものの。
それ以外の反応は特になく、そこで出された料理も普通に美味しいだけのハンバーガー。
悪食家の特性が発揮される事もなかったため、変なものが入ってるわけでもなく本当に普通の食事処だったのだ。
武器屋や、冒険者ギルド、神殿の代わりの教会にも寄ってみたものの、それらも全て普通の対応をされ呆気に取られてしまう。
「ううん……まぁ、良いか。さてさて、登録も出来た事だし……クリスを誘ってエリックスの店にでも行こう」
ある程度探索したのち、私は少しだけ感じる違和感を切り捨て初期拠点へと移動した。
こういうのは今しっかりと探索するのではなく、後で、じっくりと腰を据えてやるべき事柄なのだから。
連絡して少し。
待ち合わせの場所に訪れたクリスに討伐の報告をしてみれば、心底驚いてくれた。
というのも、彼女的にはもう一度負けて自身に助力を頼んでくると思っていたらしいのだ。
ソロでやるにしたって、今回で倒し切れるとは思っていなかったようで。
どうやって倒したのかを根掘り葉掘り、それこそストレチアに到着するまで聞かれる事となった。
「えぇ……また食べたんですか?」
「あぁうん、食べたよ。でも今回はラーニングしなかったから少しだけ残念かな。……あは、この後に期待さ」
「一応気にならないと言えば嘘にはなりますけど……どんな味なんだろう……」
ストレチアへと到着した私達は、快く、そして少し驚いた様子のエリックスに迎え入れられた。
彼も今回で私がピアサを討伐するとは思っていなかったらしく、インベントリ内からピアサの背中の肉を取り出した時は軽く目の端が痙攣していたほどだ。
デバフの解除用の薬と肉を渡し、少し待つと。
エリックスは白い半透明なゼリーのようなものを皿の上に乗せて持ってきた。
そのゼリーの中には、細かく賽の目状に切られた野菜が複数入っているのが見えている。
「これは?」
「アスピックと呼ばれるものです。今回頂いた肉が火を加えたら液状化してしまったので、それを味付けし、野菜などと共に冷やし固めた料理ですね」
「成程……所謂煮凝りか」
目の前に置かれたアスピックを、スプーンによって少しだけ触ってみる。
ゼラチンか何かで固められているのか、ぷるぷるとしたその感触は少しだけ面白い。
クリスは私が食べるまでは口を付けるまで食べるつもりはないのか、こちらの動きをじっと見つめていた。
意を決して、一口分掬って口に含む。
すると、だ。元々のピアサの肉と同じように口の中ですぐに溶けてしまうものの、戦闘中に感じたような苦味や甘味、辛味などは感じない。
玉ねぎ、人参などと言った野菜が鳥の旨味が強いスープと口の中で混ざり合い、生の状態からは考えられなかったほど美味しい料理となっていた。
【スキルをラーニングしました:【
「ほら、美味しいぜ?食べなよクリスちゃん」
「……は、はい」
恐る恐るアスピックを口にするクリスの姿を見ながら、私は次に何処へと行こうかを考える。
温泉街イロハに、終わった街ヘロミア。
2つの第二拠点に、その周辺の第二エリアとも言うべき場所。
まだまだやる事は多いだろう。
ゲームを進めれば進めるほどに美味しいものを食べる事が出来る。
そう考えれば、モチベーションは上がり続けるのだから。
「次は何を食べようかなぁ」
「でしたら、イロハ周辺に居るという巨大な猪なんてどうでしょうか?」
「猪?名前は?」
「【霊贄猪 カリュドーン】という、イロハ周辺に出現しては住人を困らせてきた雑食の猪ですよ」
「ふぅん……ボスか」
エリックスから伝えられた名前は、敵性モブとは違いきちんと命名された名前であり。
それがイロハ周辺のエリアに出現するボスであるらしい情報も得る事が出来た。
そしてそれが今エリックスから伝えられたという事は、ある種ゲーム内のストーリーが進んだ、という事だろうか。
「良いね、猪。食べた事はあるけれど、こっちじゃどんな味なのか気になるし行ってみようか」
次の方針は決まった。
そしてそれによって作ってもらえる料理を考えると、目の前にまだアスピックが残っているのにも関わらず口の中に涎が溢れてきてたまらない。
まだ私の食道楽は続いていく。
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マイヴェス レベル:7
Preference:悪食家
HP:170/170 MP:135/135
PoF:56/100
Equipment:【食人の服・上】、【食人の服・下】
Skill:【危機察知】、【背水の陣】、【包丁使い】、【第六感】、【首狩り】、【範囲拡張】
BossSkill:【飢餓の礎】、【眷属顕現】、【病鳥】
TreeSkill:【戦闘経験値微増】、【休息時HP回復微増】、【ラーニング確率微増】、【料理効果微増】
title:『森林の攻略者』、『草原の攻略者』
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