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第14話

13☆エリザベス・ピー


「あと1時間〜」

よりにもよって体育の授業。校舎の周囲を十周。脳に酸素が足りない……。とにかく陸に上がった魚みたいにぱくぱくしながら深呼吸。走ってるつもりでよたよた歩いてる。しずくちゃん、今度からパン2個は食べようか?背に腹は代えられないし。男子に何周も追い抜かれて悔しい。

お兄ちゃんも五百円でやりくりしてるって言うけど大丈夫かな?

「はあー、しんどい」

座り込んで汗びっしょり。

「!?」

なにか、体育教官室から嫌な視線を感じた。身体中ねめまわすような禍々しい視線。

ぶるるい。悪寒に汗が引く。

「卯月」

視線の主が姿を現す。若い教師。でもいやらしい目で私を見ているのがわかる。

「すいません、むこうで担当の先生呼んでるんで」

ざっと立ち上がり猛ダッシュ。どこに隠れていたこの底力?とにかく、逃げろ!

生徒の群れ。キャピキャピして平和そのもの。ほっとする。

ばさばさばさ。

なにか黄色いものが。

「セキセイインコだ!」

「かわいい」

私、転生するときにセキセイインコ飼ってた。あの子ほったらかしてなんてことだろう。私がいなくなったら死んじゃうかしら?

「卯月さんの方に行った!」

「ぴーちゃん」

右手の人差し指にとまらせて、話しかける。慣れているのかゴニョゴニョ喋りそうな気配。

「鳥かごがあったから取ってきます」

女の体育の先生が教官室まで走っていった。

エリザベス。

なんかそんなふうに聞こえた。

「いやいや、あんたはぴーちゃん」

エリザベス。エリザベス、ピー。

なんちゅう名前だ?!

あはははは!

私は腹から笑った。

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