11☆四捨五入
「吉岡せんせーい」
職員室を覗くと、バーコード禿げの吉岡先生がいた。離婚した夫もバーコード禿げだったから、なんか親近感わくのよねー。
「なんだ?卯月」
「数学のわからないところ教えてください」
「おいちょちょちょ。何があった?」
「だからー、わからないところの質問です」
「苦節40年。まともに勉強せんやつばっかり相手してきて、夢でも見とるんかな」
「早くしないと休み時間終わるう」
「わかったわかった」
一通り解説してもらう。
「で、こうなる。Xの値は不等号で示された範囲だから……」
「0、1、2?」
「正解!」
んーなんとなくわかったぞ。
「そーいえば、先生。金曜日の放課後に屋上に呼び出しくらったんですよ」
吉岡先生が眉をひそめる。
「他の娘が言うには、勧誘とかがあるっていうんですけど、ここの学校、宗教勧誘とかマルチ商法とか、大丈夫ですか?」
「そーゆーのは校則で禁じられとる。生徒手帳よく読め」
「じゃあ、何の勧誘?」
「……多分、四捨五入だろう」
「なんのこと?」
「部活をやるには部員が5名以上いないとだめなんだよ」
「部活の勧誘かあ!!」
「誰に誘われた?」
「1組の濱口くん」
「あー。あいつらバンドくみたいって言っとった」
バンド!
なーんだ