5☆こちらも挙動不審
「うーん」
「どうかしたのか、しずく」
「犯罪に手を染めてしまった」
「後悔、してんの?」
「うん」
「そっか。だがこういうあぶく銭はぱあっと使ってこそ浮かばれると、兄ちゃんは思う」
あんたも性格変わっとりゃせんかい?
お兄ちゃんはゲーセンでクレーンゲームがしたいと主張した。
2人で市街地のアーケード街をぶらぶら歩く。
「君たち、高校生だよね?学校は?」
わ。補導だ。大人が数人で私たちを囲い込む。
「いろいろあって今日はまだ行ってません」
「もうすぐお昼だけど、午後から行くの?」
「行ければ行きます」
「行けない理由があるの?」
「行こうとすると、今日に限って邪魔が入るんです」
「カバンの中見せてくれる?」
「はい」
私のカバンの中には英語の辞書と国語辞典が入っているので、大人は鼻白む。
お兄ちゃんのカバンはぺったんこ。
「最近の若い子は教科書みんな学校に置いていてろくに勉強しないんだよな」
そうか、それで家に教科書がなかったのか。
「なんで辞書持ち歩いてるの?」
「勉強しようと思って」
ボリボリボリ。おじさんが頭をかきむしる。
「こっちの男の子ふつーだから特になんてないんだけど、こっちの女の子、どうもひっかかる」
「なんで?!」
逆じゃないの?
「私……用事があるんです」
「逃げない逃げない」
「そうじゃなくて、そこの教会にお祈りに」
「星学ってカトリックだっけ?」
星学って高校の名前かな?
「そうじゃないです。でも、懺悔に行かないと、この胸が罪の意識でつぶれてしまいそう」
「はあ?」
「学校に行きたい!でも行けない!私の存在自体が罪」
おかしなこと言って逃れるつもりか?という意見とこの子やばいんじゃ?という意見でざわつく。
「まあ!あそこに黄色い小鳥がいる」
本物の不良集団に鉢合わせた。
脱色した髪が薄い黄色。集団で移動。改造制服。
どうする?あっちが優先!補導員たちはわらわらと向こうに走って行った。
ギャーギャー大騒ぎ。
その隙にお兄ちゃんとこそこそ逃げ出した。
「本当に教会に懺悔に行くの?」
「なんの話?」
「そりゃそーだよな」
「お腹すいた。なんか食べよう」
「そうだな。しずく、いつも1日500円玉一枚のお小遣いで食費もそこから工面してるから、たまには豪華にいくか」
「うん」
ビルの3階の焼肉屋さんに入った。