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第18話 ポーション作りとお菓子作り 


 海へ行った帰りに色々なものを購入した。

前から欲しかった色違いのマグカップやカトラリー、枕カバーにお揃いの寝間着。色は自分の好みがあるので、それぞれ好きな色の物を買った。


 私はもうすぐ無くなりそうなポーションの材料を追加して、ルルシアは調味料やお菓子の材料を大量買いした。それをキッチンの作業台へドン! と乗せた。 


 「すごいわね。ルルシアの作るお料理、お菓子どちらも美味しいから楽しみだわ」

 「作ったものはアルシュに試食してもらうから」

 ルルシアの作るお菓子やお料理は美味しい。何でも美味しい。


 「でもアルシュが作る、お料理の方が美味しいわよ」

 謙遜するが美味しい。とくにお菓子が美味しい。

 「ふふっ。たくさん作りましょうね」


 私は自分の部屋で、ポーション作りをすることにした。ルルシアはキッチンでお菓子を作る。出来たら見せあうことにしてそれぞれ作業にかかった。

 一度作業に集中すると私は時間を気にせず進めてしまうので、お昼前に声かけへ来てもらうことにした。


 パタンと自分に部屋へ来て、ドアを閉めた。ここからはお互い自分だけの時間だ。

本棚にはたくさんの資料がキチンと整理されて並び、薬草やハーブなどは乾燥させるためにあちこちへ吊るされている。作業机の上は、ポーション作りのための道具などがたくさん並んでいる。

 中には危険なものもあるので、それは厳重に鍵をかけて保管してある。


 「ええっと……。今日は回復ポーションと解毒ポーションを作って、それと」

 確認しながら一つ一つ準備する。間違わないように慎重に。


 町に『冒険ギルド』が今度出来ると、隣人から聞いた。この町も賑やかになって出来るのかと気楽に考えていたら、ポーションの依頼がきた。緊急用らしい。

 初級ポーション10本に、中級ポーションを5本。初めはそんな感じでと言われた。まあまあな値段で依頼をしてきたので受けることにした。


 往復で色々な町を巡ってポーションなどで生計を立ててきたので、ポーションの相場や自分のポーションの効き目はどのくらいか知っている。

 私のポーションや薬は効きすぎるようなので、効果を押さえて作っている。


 初級ポーションを、中級以上の効果のポーションなのに初級ポーションの値段で売ってしまったら、相場が崩れてしまう。気をつけなければならないし、目立って偉い人などに目をつけられたら逃げられなくなってしまう。とくに貴族は自分の有益になるものを抱え込みたくなるものだ。――私達は自由でいたい。


 コトコト、グツグツ……、カリカリ。色んな音を出して夢中になってポーション作りをしていた。


 「アルシュ」

 「わっ!」

 ルルシアが後ろから声をかけてきた。私は驚いて振り返った。ルルシアはエプロンをして立っていた。呆れた様子で私を見ていた。

 「何度もドアを叩いたけれど、返事がなかったから入ってきたわよ。もう! 昔から夢中になると時間を忘れるんだから!」

 そんなに時間が経ったかしら? と思って時計を見るともうすぐお昼の時間になる。


 「ごめん! すぐお昼ご飯を作るわね」

 慌てて立つとルルシアが私の肩を掴んだ。

 「もうお昼ご飯は作ってあるわ。……机の上を片付けてから来て」

 そう言って部屋を出て行った。振り返って見てみると、散乱した薬草やハーブが見えた。

 「片付けないと……」

 ルルシアに言われた通り、片付けてからキッチンへ向かった。


 焼きたてキッシュ、サラダにポトフ。野菜がたくさんで美味しそうだ。

 「ほうれん草とチーズのキッシュにサラダ。ポトフは野菜をたくさん入れたわ」

 ルルシアはテーブルへお昼ご飯の用意してくれていた。

 「ありがとう、ルルシア」


 私は新しく買ったお揃いのカトラリーを、手作りのランチョンマットの上へ並べた。お水を入れたピッチャーに、レモンやハーブを入れて作っておいたものをコップへ注ぐ。

 二人とも椅子へ座ってお祈りをしてからいただく。


 「ん! チーズがたくさん入っていて美味しいわ」

 ルルシアが作ったキッシュは初めて食べた。ほうれん草と玉ねぎも入っていて美味しかった。

 「良かった」

 お互いに微笑みあって、お昼ご飯をいただく。


 サラダはご近所さんから採れたてのものをいただいて、新鮮だ。ポトフは街で買った大き目のソーセージが美味しい。

 「美味しいから、お昼ご飯を食べすぎてしまいそう」

 私がニコニコと笑ってルルシアに言った。


 「あら、デザートもあるけど食べられないかしら?」

 ルルシアが目の前に、三色の層になったホールゼリーを置いた。手のひらくらいの大きさなので、試食用に作ったのだろう。

 「イチゴピンクブルーベリーのババロア二層と、一番上に透明なゼリーの中にイチゴを飾ってあるのね? 可愛いし、きれいね。食べたいわ!」


 「アルシュ、待ってて。切り分けるね」

 ルルシアが、ちょっとぎこちない手でお皿に切り分けてくれた。断面も三層に分かれていて見栄えもいい。


 「このゼリーはお店で出すのかしら? きれいだし、大きくても小さいサイズでも好まれそうね。いただきます」

 ルルシアはやっぱりセンスがある。美味しいし、見た目もいい。

 「ありがとう。サイズは悩んでいるの。一人用にするか、ホールサイズにするか。どっちがいいかな?」


 「全部作ったら? 一人用を定番にして、大は予約注文で。それならいいと思うわ」

 私はゼリーを美味しく味わいながら答えたら、ルルシアが背中に抱きついてきた。

 「そうするわ! ありがとう、アルシュ!」

 「わあ! こぼれちゃうから! ルルシア!」


 私は美味しい料理とゼリーを味わい、ルルシアとお話をして楽しかった。


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