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第14話  一緒に暮らしてお店を開きたい


 一緒に暮らし始めて、まずは家を暮らしやすいように変えていく。あとはご近所の方へ挨拶。

話を聞くと最近人口が増えて、村から町へと大きくなったらしい。


 自然の多い、この辺を気に入って移住してきた人が多いそうだ。あれからこの王国は、新しい王様のおかげでだいぶ平和になった。

 行きと帰りの旅じゃ、だいぶ違った。まず泥棒や強盗が減った。王様のおかげと聞いた。なんにせよ暮らしやすくなるのは良いことだ。


 「アルシュ、こんな感じでどうかしら?」

 ルルシアに任せた部屋のインテリア。私よりセンスが良かった。カントリー風だけど、それよりは大人っぽい感じだった。

 「いいわね! 素敵」

 私が褒めると両手を腰に当てて胸を張った。

 「そうでしょ! アルシュの好きそうなものにしてみた」

 たしかに好きかも……? 


 だんだん家のインテリアが素敵になっていく。前の落ちついた感じも良かったけれど、ルルシアが好きなように変えていってほしい。

 「少し外へ行ってくるわね」

 私はルルシアに言って外へ出た。


 ナッシュとアリアが眠るお墓に来た。ルルシアとあの家に暮らし始めてから会いに来たけれど、たまに話をしたくて来ている。私を育ててくれた人間の夫婦。感謝しかない。

 「ナッシュ……。アリア……」

 寂しくないと言ったら噓になるけど、私にはルルシアがいる。可愛いルルシア。この頃は小さい子を保護しているのではなく、対等にお互いを支え合えてきたように思える。


 ルルシアはもうお年頃になっていく。ここで一生を共にできる相手を、見つけられたらいいけれど、と願う。

 「アルシュ」

 長い時間、ここにいてしまったのだろうか? ルルシアが呼びに来てくれた。

 「ああ。ごめんなさい。つい、長居をしてしまって」

 私が立ち上がる前にルルシアは私の隣に座った。


 「ナッシュさんとアリアさん……。寂しい? アルシュ」

 ルルシアは私の顔を見て言った。気を使わせてしまった。

 「寂しいけれど、今はあなたが居てくれるもの」

 正直にルルシアに言った。座ったまま二人で微笑みあった。


 「……でも。ルルシアは私に遠慮しないで、お友達や好きな人をつくってね」

 微笑んだまま私はルルシアに伝えた。私に縛れないで自由に生きて欲しかったから。

 「なんで、そんなことを言うの?」

 「え?」

 急にルルシアの低い声に怯んだ。


 「え、だって。あなたは自由なのよ。私ばかりじゃなく、皆と交流して仲間を……」

 人は一人じゃ生きていけない。とくに人間は弱いから。

 「私……。なにかおかしなことを言ったかしら」

 ルルシアは顔を下に向いていて髪の毛が邪魔で、表情が見えない。

 「ルルシア……?」

 そっと腕に触れようとした。ビクン! とルルシアは私の手を避けた。


 「どうして……」

 「えっ」

 ルルシアの腕や手が震えていた。そんなに私はダメなことを言ってしまったのだろうか?


 「私はアルシュと一緒にいたいだけ! どうして!? 一緒にいてはダメなの!?」

 初めて、ルルシアの強い感情を向けられた。なぜ? 他の人と交流しましょうと言っただけなのに。

 「一緒にいるわよ。ダメなんて言ってない。ただもっと交流をしましょう……と」


 「……分かったわ」

 ルルシアがそう言ったので、わかってくれたのかと思ってホッとした。

 「じゃあ、そろそろ戻りましょうか?」

 私が立ち上がろうとしたら、先にルルシアが立ち上がって手を貸してくれた。

 「ありがとう」

家に向かって歩き出した。その時……。


 「絶対にアルシュは、誰にも渡さないのだから……」


 「え? 何か言った?」

 足元に気を取られていて、ルルシアの声を聞き逃してしまった。聞き返したけれど「なんでもない」と言ったので、何を言ったのかわからなくなってしまった。


 それからルルシアは渋々だけど、町の人達と交流を持つようになった。お店を開店するにあたり、多少の愛想は必要だからだ。笑顔のない薬屋さんなんて誰も来なくなってしまう。

 家の使ってない部屋の門側にある壁を改造して、入り口を作って出入りできるようにした。

 お店は【薬屋】にするつもりだ。ポーションや薬草を売る店。


 ルルシアは何を作りたいのか聞いてみたら、焼き菓子などハーブを使ったお菓子を作りたいと言った。

 「お砂糖控えめのお菓子を作りたい」

 ルルシアの作るお菓子は美味しくて、そんなに教えたわけじゃないのに上手だった。


 お店はだんだん形になっていった。町の大工さんに頼んで作ってもらった。

 「あらあ! だんだんお店が出来てきたわねえ!」

 お隣の奥さんが見に来てくれた。町長さんの奥さんで人脈が広い人だ。私達を気にかけてくれていて、色々とお世話になっている。今日は鶏肉を持ってきてくれた。

 「これ、二人で食べて! なにか困ったことがあったら私に言ってね?」

 さすが町長さんの奥さんだ。気の付く、優しい人で良かった。

 「ありがとう御座います。良かったら、ハーブの化粧水のミニサイズです。肌に合わなかったら使用をやめてくださいね」


 「まあ! ありがとう! この間いただいたハンドクリームが良くて、皆に宣伝したわよ!」

 手を見ると荒れていた肌が治っていた。渡していて良かった。

 「良かったです。お店が開店したら、ぜひ来てくださいね」

 私は町長さんの奥さんに化粧水をプレゼントした。私の作ったものを、気に入ってもらえたので嬉しかった。


 少しずつ、町の方に私達のことを知ってくれてお世話をしてくれた。この町の人が優しい人ばかりで良かった。









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