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生き残りエルフ アルシュは、名付け子とのんびり暮らしたい
生き残りエルフ アルシュは、名付け子とのんびり暮らしたい
厘/りん
異世界ファンタジースローライフ
2025年01月25日
公開日
1.5万字
連載中
北の森のエルフの村が、何者かに焼かれて滅びた。ただ一人生き残ったエルフの女の子アルシュ。
逃げのびて人間の夫婦に助けられた。その夫婦に人間の衣食住を教えてもらいながら、人間の暮しに馴染んでいった。ある日倒れていた子を助けて、昔の自分と同じような境遇の子と仲良く暮らしていく物語。

第1話 プロローグ

美しかった北のエルフの森は何者かによって焼かれた。エルフたちも抵抗したが多勢に無勢。あっという間に侵略されてされてしまった。


 「アルシュアーナ、あなたは逃げなさい」

母と私は家から小屋へ隠れていたけど、見つかるのは時間の問題だった。まだここは見つかってない。逃げるのは今だと、母は私に言った。


 「逃げるなら、お母さんと一緒がいい……!」

怖くて泣きそうな私をずっと、抱きしめていてくれた。だけど母は顔を左右に動かした。

 「だめよ。小さいあなたなら、一人で逃げ切れる」

きっと母は二人で逃げたら、二人とも捕まってしまうと思ったのだろう。残酷な仕打ちを、幼い我が子に見せまいとする母親の優しさだったのかもしれない。


 「でも……!」

 「早く行って!」

 きつい声で母は私を急かした。くちびるを嚙んで私は頷いた。


 「アルシュアーナ。私達があなたに教えたことを、忘れないで。……愛してるわ」

 そう言って母は、私を強く抱きしめてくれた。私も母を抱きしめて伝えた。

 「あとで会おうね? お母さん」

 母は私から離れて頷いた。


 「どんなときも、アルシュアーナ。みんなが見守っていますよ」

 長い銀の美しい長い髪、緑色の瞳。大好きな母。


 それが母を見た最後の姿だった。


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