ハンドルなき夜の街、
鋼の馬がひっそりと巡る。
ヘッドライトの光は冷たく、
闇を裂くのは人工の意志。
「安全第一」と掲げる旗は、
人の声を静かに飲み込み、
プログラムされた完璧な道を、
迷いなき足音で踏みしめる。
感情のないブレーキとアクセル、
ミスなき走行に胸を張るが、
その瞳はただ、線路を追うだけ。
未来を見ることはない。
信号待ちの眠れる群衆、
選択肢は手放され、
「便利」の甘い囁きに、
誰もが無意識に頷く。
だがその裏で、
行き先を決めるのは誰だろう?
あなたか、それともコードか?
ハンドルを離した手の行方に、
自由の形は見えるだろうか?
自由とは、迷うこと。
選ぶこと、間違うこと。
もしそれを奪われたなら、
私たちはただ運ばれるだけ。
夜明けの光が街を染める。
未来の車は無音で走る。
だがその道の果てにあるのは、
希望か、それとも空虚か。