ブラム様の城から真っ直ぐに北へと向かった筈だったのだが、数日歩いても一番近いミウ村にさえ辿り着けなんだわ。
昔はこんな事は無かった。
いや――初めて訪れる所は大抵、他の者の倍ほどの日数を要したのは確かだ。
しかし、二回目に訪れる際には迷う事なくその半分ほどで着けたものよ。
む?
倍の半分となると、二回目にしてようやく他の者と同じという事か。
もしかして我はアレか。
方向音痴というやつ……なのか。
そうか……、そうかも知れんな。
思い当たる節があり過ぎるわ。
八十七にもなって自分の事で知らん事があるとは思わなんだ。
今日は良い「気付き」を得た。
誠に佳き日であるな。
ところで
歩いた日数的に考えて、ブラム様の城から真北という事はもはやあるまい。
やや東か西、どちらかに
問題はどちらに逸れているかだな。
まさか南へ向いているという事もあるまい。
…………さすがに無いよな?
それにしても何度も訪れた師の下へも辿り着けん様になるとは……、やはり体はともかく頭は
よし、
この仮定が合っていれば、ここからやや右手に進めばミウ村、イロファスの町、ファネルの街、この三つを結ぶ街道にぶち当たる筈だ。
三日行ってぶち当たらなければ、倍の角度で左手へ折れて六日進もう。
ふふふ。
さすがは我、完璧な作戦だ。
たとえ万が一にも我が方向音痴であろうとも、ここまで入念な作戦であれば困る事もあるまいて。
――おかしい。
かれこれひと月ほども右へ左へと角度を変えては歩き続けておる。
森に岩場に少々の山登り、そんなはずはないんだが。
七月の中旬にヴァンらと別れてから、ぶっちゃけ前に進んでいるのかさえ
んむ?
街だ! 街が見える!
どこをどう歩いたかさっぱり分からんが、ミウ村でもイロファスの町でもない、
なんとか北には進んでたか……。
正直言ってホッとしたわ。
さすがはパンチョ、さすがは人族の勇者の一番弟子よ……。