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ロストキングダム〜死者の軍勢と共に王国を救う。
ロストキングダム〜死者の軍勢と共に王国を救う。
飯塚 ヒロアキ
異世界ファンタジー戦記
2025年01月25日
公開日
3.4万字
連載中
アルデシール王国ーーー緑の大地と豊富な資源を有する王国は四方より蛮族からの侵攻に晒され、100年もの間、憎き蛮族らと戦い、そして、今日まで生き抜いてこられた。金色に光るアルデシール軍はまさに太陽の如く燦然と輝き、その強さを誇った。アルデシールに太陽は沈まず、とまで言われていた。だが、その王国に影が潜む。影は徐々に広がり、やがて、王国の滅亡へと進む。国は燃え、王都は落ちた。帰る場所を無くしたホースウッド家伯爵の息子である主人公アベルたちは自らの領土を蛮族から守るだけで、精一杯だった。そんなとき、聞きなれない角笛が鳴らされる。

「丘の上、風になびく軍旗を見よ。あれぞ、死して尚も彷徨い続ける死者の軍旗! 死者の軍勢が助けに来たぞ」

第1話 嘆きの女騎士

  ――――暗闇の中、複数の灯りが揺れ動いていた。


闇はどこまでも深く、空は一面雲に覆われ、月も星も見えない中、足元を照らすオレンジ色の灯りだけが唯一の光源だった。


青白い霧状の闇がその灯りに照らたゆたっている。まるで海の底を歩いているかのようだったが、ここは違う。


水の代わりに満ちているのは冷たい空気であり、耳に届いてくるのは自分たちの足音。


虫や動物の鳴き声、風の音さえもない。


まるで、この世ではないような感覚に誰もが気が狂いそうになっていた。


そんな中で、物音がした瞬間、全員が一斉にその方向に視線と各々の武器を向ける。


武器を持つ手は震え、へっぴり腰だった。


「か、頭、もうこんなところ、出ましょうよ」


隣にいる男が泣きそうな声で頭と呼んだハゲ頭の男に縋り付いた。


それに頭と呼ばれた男はその男の手を振り払う。


「おい、離れろ、気持ちが悪い」


頭はそう言って、その男を突き飛ばした。男はバランスを崩してその場に尻餅をつく。


「いいか、てめーら、ここはな。膨大な財宝がわんさかと隠されているって話だ。そんな場所をみすみす放置するわけにはいかねぇーだろうが」


そう期待を膨らませて話す頭と呼ばれた男の手も震えていた。


背後にいる集団は犯罪を重ねてきた者たち。誰も盗賊団の頭に逆らわないのは、逆らうと命がないからだ。


「ですが兄貴。ここは呪われているって噂ですよ。なんでも滅んだ王国の騎士たちが未だに彷徨っているとか……」


恐怖に震える声は女の声だった。


言葉の内容と女の声の高さが合っていないことに、頭と呼ばれた男は気にした様子がない。


「そんな、おとぎ話、誰が信じる。ど、どうせ、誰かが財宝を奪われたくないからって、作った作り話だろうよ」


声は上ずり、時折詰まるが、頭と呼ばれた男は気にしない。


恐怖を紛らわすために大声で話し続ける。


「おい、ブラウス、地図をよこせ」


ブラウスと呼ばれた部下が腰に下げていた袋から四つ折りになった地図を取り出して、頭へと渡す。


頭は四つ折りの地図を広げると部下のランタンの灯りへと近づける。


地図にはライトメリッツ王国の王城アノスの城内の地図が描かれていた。


頭は指先で今いる場所をなぞりながらその指はある一角で止まり、何度もその上を往復する。


「間違いねぇ。あと少しだ。あと少しで、宝物庫だ」


頭の言葉にその場にいた盗賊たちの顔に笑みが浮かぶ。


彼は根っからの盗賊。「盗んで、奪って、殺して」が彼の行動理念だ。


危険な環境に常に身を投じてるからこそ、戦慄的な状況に興奮する。


その感覚が彼らの脳を麻痺させ、危険に対する恐怖心を忘れさせるのである。


さきほどまで、怖がっていた者たちも今では笑みすら浮かべていた。


重たかった足取りは小走りになり、やがて、駆け足となる。


暗い城内を走る彼らの姿はまるで獲物に襲い掛かろうとする獣だ。


だが、その獣たちは知らなかった。


眠ることを知らない哀れな亡者たちが彼らを静かに狙っていることに―――――

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