「ところで、光属性ってどうやって調べたら良いのでしょうか。魔界で光属性に詳しい人なんて、ほとんどいないと思うのですが」
このリナリスの疑問はシンプルだが深刻な問題だ。
他の属性なら、その属性に詳しい魔法使いが自分と比較して判断できるが、魔界には光属性を持つ人がいないのだ。
「簡易的な判定方法になりますが、瘴気を多く含む土に対し魔力をぶつけてみて、瘴気が減るかを見れば良さそうです。瘴気は闇属性なので打ち消し合うはずです」
「なるほど、スカーレット様の案で良さそうですね。瘴気の量が変わったかは私でも判断できます」
確認役にはリナリスが手を挙げた。
スカーレットは無属性なので、たしかに魔人族のリナリスが適任だろう。
リナリスは光以外の全属性を扱えるが、魔人族特有の性質として闇属性が最も得意のようだ。
「ベルモント殿、土が肥沃かどうかはどのように判断するのでしょうか。せっかくなので瘴気の変化が土にどのような影響を与えるのかも調べたいのです」
「それは良い案ですね。色、匂い、触った感覚も重要ですが、私の場合は味で確認していますね」
味覚で判断するとは意外だった。
人間界ではこんな方法で農業をしているのかしら。
お腹を壊すような気がするんだけど。
「具体的にはどのような特徴があるのでしょうか」
「一般的に肥沃な土は甘みがあります。農業に適していない場合はえぐ味が強いのです」
「では、陛下が魔法を使う前後で味の比較もお願いします。ところで、お腹を壊したりしないのでしょうか」
「味の比較、承知しました。食べるわけではありませんので、すぐに吐き出して口を濯ぎます。多分大丈夫です」
ベルモントはスカーレットの無茶な要求にも平然と対応している。
これは本当に凄いことだ。
女癖が悪いとか言われていたが、仕事はできるような気がする。
私たちは北門までやってきた。
リナリスが言うには、この門付近の瘴気が王都で一番強いのだそうだ。
「では、陛下。あの印を狙って魔力をぶつけてください」
「じゃあ、いくわよ」
スカーレットが地面に印を書いてくれたので、そこに向かって魔力を放出した。
キラキラ眩しい光と共に火花が飛び散った。
リナリスが印の箇所に向かい、瘴気の量を確認している。
「陛下!やはり瘴気が無くなっています。こんな事ってあるんですね……。私、光属性なんて初めてみました」
リナリスが興奮気味に話しかけてくる。
私、本当に光属性だったんだ……。
ずっと魔法には向いていないと思っていたのに。
「あとは味ですね。さあ、ベルモント殿」
スカーレットが嬉しそうに、事前に採取しておいた土と瘴気が抜けた土をベルモントに渡した。
ベルモントは躊躇わずに土を口に入れる。
「こ、これは……。元の土はえぐ味がひどいので農業には不向きですが、瘴気が抜けるだけでえぐ味が抜けています」
「農業に使えそうですか?」
「このままでは無理ですが、しっかり耕して肥料をまけば使えるようになります。これは凄い発見ですよ」
「陛下、やりましたね。これで農業改革に繋がる可能性がありますので、私の方で調べてみます」
魔界が農業に適さない理由と、解決方法がようやく見えてきた。
スカーレットの調査結果次第ではあるが、明るい未来が待っているのかもしれない。