私は目を疑った。
なぜなら、私の目の前にいるのは、死んだとされていた次兄のレオン兄様だったからだ。
しかも、その横には四天王次席のゾルガリスがいる。
ゾルガリスはゾルトの実兄だ。
「兄様、生きておられたのですか」
「グロリア、苦労をかけたな。父上の救援に向かったものの、勇者一行に敗れてな……。ゾルガリスに助けられたものの、生死の境を彷徨っていたのだ」
「グロリア陛下、レオン殿下は勇者一行に呪いをかけられまして、解呪に時間がかかってしまいました。現在も完調ではありませぬが、陛下を助けたい一心で馬を走らせて参りました」
ゾルガリスも父上の命令に従い、守り通したということらしい。
しかし、呪いとは……やはり勇者はバケモノなのだろうか。
「そうだったのですね。私はもう……亡くなられたと思っておりましたので、こうして再会できて嬉しく思います」
私の目には涙が溢れた。
自分の肉親はもう誰もいない、そう思っていたから……。
「それは俺もさ。これからは家臣として共にこの国を守らせてくれないか」
兄様はそう言ってひざまずき、臣下の礼をとった。
「兄様が生きておられたのなら、兄様が王位を継がれるのがよろしいのではないでしょうか」
「それは違うぞ。お前は先日即位をしたばかりではないか。ここで退位すればお前を信じてついてきた民や家臣はどう思うか考えてみよ」
「しかし、それでは兄様のお立場が……」
「俺の立場と国のどちらが大切か、言うまでもないだろう」
「魔王はお前で、再建の功労者はスカーレットとゾルトだ。これは紛れもない事実だ。俺は確かにお前の兄だが、父上の命令に従わず敗走したのだから、王の資格があるとは思えないな」
「そうは言いますが、私と兄様では王としての器が違います」
「果たしてそうかな。先ほどのカイリシャとの戦いでは大演説をしたそうじゃないか。あのカイリシャを論破するなんて、なかなかできることじゃない。お前の民を思う気持ちがそうさせたんだ」
兄様はどうあっても、王位に就く気はないらしい。
それならば、気持ちよく働ける地位についてもらうべきなのだろう。
「分かりました。兄様……いえ、レオン。あなたを騎士団長に任命します。ゾルガリスは副団長としてレオンを支えるように!」
「はっ、かしこまりました。王国のため、邁進してまいります」
「レオンに従っている兵士も騎士団に組み込むこととします。これまで通り、レオン指揮下で励んでもらいます」
兄様の兵士から歓喜の声が上がる。
やはり兄様には人徳がある。
カイリシャが現れたときはどうなるかと思ったが、こちらの被害はゼロに近い状態で、新たに精鋭の騎士団が加わった。
スカーレットが戻ったら、きっと驚くだろう。
そこへ、見回りを終えたゾルトが帰ってきた。
ゾルトはゾルガリスを見ると、思わず武器を落とした。
「あ……兄上、生きておられたのですか!」
「ゾルト、苦労をかけたな」
ゾルガリスが私と兄様の再会を再現してみせたので、一同は爆笑の渦に包まれた。